なぜこうなった。いつ道を踏み外したんだ。ああ。もう嫌だ。


僕はいじめられっ子で有名な山田優太だ。いつも嫌々で学校に通っている。でも僕は学校に行く唯一の楽しみがある。
いつも通り支度して着替えて、家を出て歩いていると
「おはよー!優太!」
「おはよう」
声を掛けてきたのは僕の幼馴染の山本紗季だ。僕の唯一の友達といっても過言ではない。
「もー、元気ないなぁ。」
「紗季が元気すぎるんだよ。」
紗季は驚いた顔をして少々戸惑っていた。そのせいなのか少し空気は重くなっていた。でも僕は今で言う陰キャなのでこの空気を変えることが出来なかった。それを察したのか彼女は
「今日、数学のテストだよね!?」
「あ、あー、うん。」
そういえばそうだったな。すごく忘れていた。
「私さ、お母さんにこのテストで赤点取ったらスマホ没収されちゃうんだよー!数学教えてー!」
「分かったよ。学校行ったらね」
「やったー!ありがと!」
紗季は勉強が苦手だ。だからいつもお母さんに勉強しろと怒られている。でも彼女はいつも元気で、追加で顔もいい。だからクラスの中でも人気だし、モテているだ。その真逆が僕だ。

学校に着き、僕は教室に入るといつもの最悪な一日が始まった。
「おー!優太くーん!今日も女と来たのかい?」
笑いながら川野徹が聞いてきた。いつもこの言葉が教室に入って最初に聞く言葉だ。
「当たりまえだろー!」とか「毎日、毎日!」とか野次が飛んでくる。
僕はもうこれにあきれているのか心が折れたのか、自然に無視するようになっていた。
今日は席に着いてからもこのいじりは続いた。
「紗季と登校なんて幸せもんだな!でも、紗季はこんな男と登校で最悪だろうな!」
紗季は本当にそう思っているのだろうか。思っているのなら申し訳ない。僕はただ紗季の優しさに甘えてしまっているのかもしれないな。
「確かにー!」
また野次が飛んだ。
こんな毎日が続いている。でもこれを紗季は知らない。違うクラスだからだ。もし知っていたら紗季は遠慮して僕と登校するのをやめるだろう。やめなかったとしても、僕に気を遣うことになるだろう。そうならないことが僕は安心する。
「おっ、噂をすれば」
「失礼しまーす!!山田優太くん居ますかー?」
紗季だ。数学を教えてもらいに来たのだろう。
個人的都合だと、今は不都合だ。
「紗季。数学ね」
「もー、頼むよー!このテスト大事なんだから!」
「分かってるよ。」
僕らは図書室に向かった。向かっているときも冷たい視線が飛んできた。でも紗季は全く気にしてなさそうだ。
「じゃあ、数学の…」
「よし!絵しりとりでもしよっか!」
「え?数学は大丈夫なの?」
「大丈夫!」
「お母さんの事は?」
「冗談だよ!騙されやすいなぁ」
僕には分かるこれは冗談ではないことを。
なにか隠したいことでもあるのだろうか。もし、あの事だったら。いや、これは考えたくない。
「あっ、友達と約束してたんだ、ごめん!また今度!」
なんの約束なんだろうか。おそらくこれも嘘だ。僕にそんなに隠したいことでもあるのだろうか。
ますます気になってくる。

今日もやっと最悪な学校が終わる。いつも通り支度して。学校を出る。するとそこには紗季が居た。長い髪を揺らしながらこちらに走ってきた。
「帰ろっか!」
「あ、うん」
またイジられてしまう。でも逆にここでやめとくとしたら紗季に疑われて、いじめられてることがバレてしまうだろう。
もう紗季に迷惑をかけたくない。
「ねぇ、夏祭り、、一緒に行きたいな。」
「えっ!あっ、いいよ」
「マジ!やったー!楽しみにしてるねっ!」
ルンルンに紗季はスキップしていた。僕も楽しみだ。その後、分かれ道で僕は一人で家へ帰った。