なんで、こんなことになったのか。なぜ、東京(都会)に来ることになったのか。時間は、3日前に遡る。
「陽音よお。みたか?あのプリント。」
昼休みの時間。食事中の僕の席に誰かが近付いてきて話しかけてきた。
「あのプリント?何の話だよ?」
全く持って、そんな驚くようなプリントが配られた覚えがなかったので、困惑して僕は聞き返した。
「いやぁ、結構チャックだよな。あ、やっぱりお前もそう思うか?だよな、ハッハッハ!」
「お前だれと話してんだよ!?」
「ん?あぁ。じゃあな。」
そう言って、話しかけてきた奴は、僕の席から去っていった。いや、誰だ?アイツ。知り合いじゃないし、知り合いたくもない。内のクラスにいた気がしない。都市伝説だな。そう言うことにしよう。間違っても類は友を呼ぶなよ。そんなことを思いながら、開いた口が塞がらなかった僕だけど、プリントの話が気になって机のなかにてを突っ込んでみた。
「確か、今日配られたのは三枚だったよな。どれどれ。」
机から引っ張り出した三枚のプリントを並べ、一枚ずつ読んでみることにした。
一枚目は学級だより。特にショックな内容は無し。二枚目は、ゲッ、数学の課題が増えてやがる。これか?ショックなプリントってのは。三枚目は、花火大会中止のお知らせ。ショックなのは二枚目っぽいな。ん?花火大会中止?ちゅうし?あれ?日本語か?これ。
一度目を離し、その現実から逃げようとした矢先、
「いや~、チャックだろ、花火大会中止。あ、お前もそう思う?ハッハッハ!」
僕の脳内に、イカれ野郎の声が響いた。
「ショックだーーー!!」
「ってことがあったんだよ。」
そうして、その日の放課後下校時のこと。
「なるほど。取り敢えず、類は友を呼ぶってことが分かったよ。」
「ハハ。喧嘩売ってんのか?」
「冗談、冗談。それで、もしかしてアレ?花火大会が中止されたから、私と別のとこでデートしたいと。」
う、全部読んでやがる。だが残念だったな。今日の僕はお前の思いどおりにはいかないぞ。
「ん?あぁ。忘れてた。そんな約束したな。律儀にまだ覚えてるだなんて、お前も、可愛いところあるじゃねぇか。」
決まった。完璧だ。お前の吐いた言葉でお前自身が負けるんだ。そして、更に畳み掛ける!
「まぁ、そこまで言うなら、付き合ってやらんでもないがな。デートとやらに。」
追撃も完璧。アイは言い返すことができないのか、うつむいて立ち止まった。フッ。他愛の無い奴よ。と、そう勝利を確信した瞬間、
「ぐすっ、ぐすっ。」
ん?何だ?まさか、これは、
「ぐすっ、ひどいよぅ。はるとくん。わたしだってぇ、たのしみにしてたんだよぅ。」
ひ、ひらがな、だとっ!いや、会話のなかで文字は使わないから、断定はできない。だがこれは、間違いない。ひらがなだ!ひらがなは、カタカナや漢字と違い、「柔らかさ」を出すことのできる唯一の文字。「柔らかさ」の効果は、可愛らしさを超え、使用対象をデフォルメや、もっとすごければ幼児化させることもできる。更にここに来て「涙」だとっ!涙は女の武器という言葉かあるように、女子の涙は常に、男子特効(効果大)を誇る。ひらがなによる「幼児化」と、最強の男子特効武器「涙」。この二つの相乗効果の結果、
秘技、「女児の涙(ロリ・ザ・ダスト)」!
まっ、負けた。ロリコン故の敗北ならば本望だっ。
「え?あれ?どしたの陽音くん。あれ、オーイ。完全にオーバーヒートしてる。」
「ハッ。僕は何を?うっ。思い出せない。」
「いや、おーい、デートの話はどこ行ったのさ?」
「してくれるの!?」
「いや、うん。何か怖いし良いよ。ば、場所考えといてね~!」
アイは、飛ぶように帰ってしまった。頭が痛い。僕は何をしていたのだろう。確かアイが泣いてから、うっ、思い出せない。
こうして、僕は何故か手に入れた敗北感と一緒に、アイからデートの話を持ちかけさせることに成功したのだった。でも、何故か僕は、人生でもっとも試合に勝って、勝負に負けた気分になったのだった。
と、まぁこれが3日前のことだ。今日は花火大会があったはずの日。つまり、どしゃ降りの雨だ。これは中止にもなるわけだ。
「陽音くん。それで?どこに行く事になったのかな?」
どしゃ降りの雨の中、駅のホームでアイは僕に問い掛ける。
「うん。秋葉原に行こうと思う。」
これは、愚策中の愚策だ。初デートで、しかも付き合ってない、趣味まで分からない女子との初デートなのに、オタク関係を選ぶのはバカのやることだ。下手すれば引かれ、下手すれば帰られ、下手すれば二度と会えなくなる。悲しいことだが、これも現実。オタクに優しい社会は、オタクの頭の中にしかない。だけど、アイがオタク関係の知識があるという確証があった。いや、嘘だ。確証はない。あるのは根拠の無い自信。でも、僕には分かる。なぜならアイは、
「え~、秋葉?私そういうのはちょっと、」
「有名な、プラモデル店があってな。」
「よし。しゅっぱーつ!」
なぜならアイは、
「ほらほら、早く行くよ。早く案内してよ。3倍のスピードぐらいの勢いで!」
なぜならアイは、ガ○ダムファンだからだ!
よかった。めっちゃ前の話覚えといて。僕は初めて、僕の記憶力のよさに感謝したのだった。
それから、アイとのオタクデートとやらが始まった。どこかで聞いた話だが、オタクと一般人で行く買い物ほど面白くないものはないが、オタクとオタクで行く買い物は、一般人同士の買い物よりも格段に面白いらしい。つまり、ちょっと頭のネジが外れてる奴ら同士が組んだほうが、本人達も、見ている周りも面白いと言うことらしい。
まぁ、僕らの場合は、一方的にアイの買い物に付き合う形となったのだけど。金は全部僕が出さなくては行けないし。しかし僕も無類のガ○ダムファンなので、楽しめるぶんには楽しめたのだった。そして、時間が二時を回った時のことだった。
「次行くよー!」
アイの呼ぶ声に急かされて、僕がまた次の店舗へと足を進めようとしたときだった。
「どうしたの?早くおいでってば。」
「ちょっと待ってくれ。あれって、」
怪訝そうな顔をするアイをいなして、僕は前を歩く人影に目を止めた。こんな偶然はあり得ないと知って。だって、そこにいたのは、
「真、だよな?」
「え?どこ?」
アイも僕の言葉に興味を持ったのか、辺りを見渡した。
「あの、前のほうを歩いてる、チェックの柄のシャツ着た奴。」
「あ~、あれ?確かにありゃ真ちゃんだわ。でも別におかしくなくない?偶然でしょ?」
「いや、おかしい。アイツ日曜日、塾なんだよ。つまり、熟すっぽかしてでも来なきゃ行けない理由があったってことだろ。そんな日に偶然俺たちが来てることなんてあるか?普通ねぇよ。」
「じゃあさ、付いてきたとか?尾行されてた感じ?ちょっと隠れてみよっか。」
アイに言われるがまま、近くの路地に身を潜めると、真は後ろを振り向き、キョロキョロしながら歩いてきた。
「怪しいな。」
「ね。めっちゃ焦ってるっぽいし。声かけてみようよ。」
「それで慌てたらビンゴってことか。」
その考えはアリだと感じた僕は、僕たちがいる路地をと降りすぎた直後、
「よぉ、真。」
「へ!?」
突然後ろから声をかけられた真は、驚いて後ろを振り向いた。
「陽音くん!?な、何でここに、」
「お前のほうこそな。偶然にしちゃ、できすぎてないか?」
「ちゃうちゃう!陽音くんに用があってんや無いよ!」
「ほぉ、じゃあ何でこんなとこにいるんだ?確か、今日は塾だったよな?」
「いや、それがな、」
そこまで言って真は急に血相を変えて、
「あ、マズイ。見失ってまう。陽音くんも付いて来てや!」
突然走り出した。
「え?ちょっ、おい!」
どんどん遠退いてく真に、置いていかれるまいと、僕はかけだした。
「アイ!行こう!」
アイも状況を理解したのか僕にくっついて真を追いかける。かくして、なにかを追う真と、その真を追う僕らという、謎の構成ができたのであった。
「陽音よお。みたか?あのプリント。」
昼休みの時間。食事中の僕の席に誰かが近付いてきて話しかけてきた。
「あのプリント?何の話だよ?」
全く持って、そんな驚くようなプリントが配られた覚えがなかったので、困惑して僕は聞き返した。
「いやぁ、結構チャックだよな。あ、やっぱりお前もそう思うか?だよな、ハッハッハ!」
「お前だれと話してんだよ!?」
「ん?あぁ。じゃあな。」
そう言って、話しかけてきた奴は、僕の席から去っていった。いや、誰だ?アイツ。知り合いじゃないし、知り合いたくもない。内のクラスにいた気がしない。都市伝説だな。そう言うことにしよう。間違っても類は友を呼ぶなよ。そんなことを思いながら、開いた口が塞がらなかった僕だけど、プリントの話が気になって机のなかにてを突っ込んでみた。
「確か、今日配られたのは三枚だったよな。どれどれ。」
机から引っ張り出した三枚のプリントを並べ、一枚ずつ読んでみることにした。
一枚目は学級だより。特にショックな内容は無し。二枚目は、ゲッ、数学の課題が増えてやがる。これか?ショックなプリントってのは。三枚目は、花火大会中止のお知らせ。ショックなのは二枚目っぽいな。ん?花火大会中止?ちゅうし?あれ?日本語か?これ。
一度目を離し、その現実から逃げようとした矢先、
「いや~、チャックだろ、花火大会中止。あ、お前もそう思う?ハッハッハ!」
僕の脳内に、イカれ野郎の声が響いた。
「ショックだーーー!!」
「ってことがあったんだよ。」
そうして、その日の放課後下校時のこと。
「なるほど。取り敢えず、類は友を呼ぶってことが分かったよ。」
「ハハ。喧嘩売ってんのか?」
「冗談、冗談。それで、もしかしてアレ?花火大会が中止されたから、私と別のとこでデートしたいと。」
う、全部読んでやがる。だが残念だったな。今日の僕はお前の思いどおりにはいかないぞ。
「ん?あぁ。忘れてた。そんな約束したな。律儀にまだ覚えてるだなんて、お前も、可愛いところあるじゃねぇか。」
決まった。完璧だ。お前の吐いた言葉でお前自身が負けるんだ。そして、更に畳み掛ける!
「まぁ、そこまで言うなら、付き合ってやらんでもないがな。デートとやらに。」
追撃も完璧。アイは言い返すことができないのか、うつむいて立ち止まった。フッ。他愛の無い奴よ。と、そう勝利を確信した瞬間、
「ぐすっ、ぐすっ。」
ん?何だ?まさか、これは、
「ぐすっ、ひどいよぅ。はるとくん。わたしだってぇ、たのしみにしてたんだよぅ。」
ひ、ひらがな、だとっ!いや、会話のなかで文字は使わないから、断定はできない。だがこれは、間違いない。ひらがなだ!ひらがなは、カタカナや漢字と違い、「柔らかさ」を出すことのできる唯一の文字。「柔らかさ」の効果は、可愛らしさを超え、使用対象をデフォルメや、もっとすごければ幼児化させることもできる。更にここに来て「涙」だとっ!涙は女の武器という言葉かあるように、女子の涙は常に、男子特効(効果大)を誇る。ひらがなによる「幼児化」と、最強の男子特効武器「涙」。この二つの相乗効果の結果、
秘技、「女児の涙(ロリ・ザ・ダスト)」!
まっ、負けた。ロリコン故の敗北ならば本望だっ。
「え?あれ?どしたの陽音くん。あれ、オーイ。完全にオーバーヒートしてる。」
「ハッ。僕は何を?うっ。思い出せない。」
「いや、おーい、デートの話はどこ行ったのさ?」
「してくれるの!?」
「いや、うん。何か怖いし良いよ。ば、場所考えといてね~!」
アイは、飛ぶように帰ってしまった。頭が痛い。僕は何をしていたのだろう。確かアイが泣いてから、うっ、思い出せない。
こうして、僕は何故か手に入れた敗北感と一緒に、アイからデートの話を持ちかけさせることに成功したのだった。でも、何故か僕は、人生でもっとも試合に勝って、勝負に負けた気分になったのだった。
と、まぁこれが3日前のことだ。今日は花火大会があったはずの日。つまり、どしゃ降りの雨だ。これは中止にもなるわけだ。
「陽音くん。それで?どこに行く事になったのかな?」
どしゃ降りの雨の中、駅のホームでアイは僕に問い掛ける。
「うん。秋葉原に行こうと思う。」
これは、愚策中の愚策だ。初デートで、しかも付き合ってない、趣味まで分からない女子との初デートなのに、オタク関係を選ぶのはバカのやることだ。下手すれば引かれ、下手すれば帰られ、下手すれば二度と会えなくなる。悲しいことだが、これも現実。オタクに優しい社会は、オタクの頭の中にしかない。だけど、アイがオタク関係の知識があるという確証があった。いや、嘘だ。確証はない。あるのは根拠の無い自信。でも、僕には分かる。なぜならアイは、
「え~、秋葉?私そういうのはちょっと、」
「有名な、プラモデル店があってな。」
「よし。しゅっぱーつ!」
なぜならアイは、
「ほらほら、早く行くよ。早く案内してよ。3倍のスピードぐらいの勢いで!」
なぜならアイは、ガ○ダムファンだからだ!
よかった。めっちゃ前の話覚えといて。僕は初めて、僕の記憶力のよさに感謝したのだった。
それから、アイとのオタクデートとやらが始まった。どこかで聞いた話だが、オタクと一般人で行く買い物ほど面白くないものはないが、オタクとオタクで行く買い物は、一般人同士の買い物よりも格段に面白いらしい。つまり、ちょっと頭のネジが外れてる奴ら同士が組んだほうが、本人達も、見ている周りも面白いと言うことらしい。
まぁ、僕らの場合は、一方的にアイの買い物に付き合う形となったのだけど。金は全部僕が出さなくては行けないし。しかし僕も無類のガ○ダムファンなので、楽しめるぶんには楽しめたのだった。そして、時間が二時を回った時のことだった。
「次行くよー!」
アイの呼ぶ声に急かされて、僕がまた次の店舗へと足を進めようとしたときだった。
「どうしたの?早くおいでってば。」
「ちょっと待ってくれ。あれって、」
怪訝そうな顔をするアイをいなして、僕は前を歩く人影に目を止めた。こんな偶然はあり得ないと知って。だって、そこにいたのは、
「真、だよな?」
「え?どこ?」
アイも僕の言葉に興味を持ったのか、辺りを見渡した。
「あの、前のほうを歩いてる、チェックの柄のシャツ着た奴。」
「あ~、あれ?確かにありゃ真ちゃんだわ。でも別におかしくなくない?偶然でしょ?」
「いや、おかしい。アイツ日曜日、塾なんだよ。つまり、熟すっぽかしてでも来なきゃ行けない理由があったってことだろ。そんな日に偶然俺たちが来てることなんてあるか?普通ねぇよ。」
「じゃあさ、付いてきたとか?尾行されてた感じ?ちょっと隠れてみよっか。」
アイに言われるがまま、近くの路地に身を潜めると、真は後ろを振り向き、キョロキョロしながら歩いてきた。
「怪しいな。」
「ね。めっちゃ焦ってるっぽいし。声かけてみようよ。」
「それで慌てたらビンゴってことか。」
その考えはアリだと感じた僕は、僕たちがいる路地をと降りすぎた直後、
「よぉ、真。」
「へ!?」
突然後ろから声をかけられた真は、驚いて後ろを振り向いた。
「陽音くん!?な、何でここに、」
「お前のほうこそな。偶然にしちゃ、できすぎてないか?」
「ちゃうちゃう!陽音くんに用があってんや無いよ!」
「ほぉ、じゃあ何でこんなとこにいるんだ?確か、今日は塾だったよな?」
「いや、それがな、」
そこまで言って真は急に血相を変えて、
「あ、マズイ。見失ってまう。陽音くんも付いて来てや!」
突然走り出した。
「え?ちょっ、おい!」
どんどん遠退いてく真に、置いていかれるまいと、僕はかけだした。
「アイ!行こう!」
アイも状況を理解したのか僕にくっついて真を追いかける。かくして、なにかを追う真と、その真を追う僕らという、謎の構成ができたのであった。