「僕がいじめを受け始めたのは小学校の3年生位からだった。」「3年生から?結構早めにあったんだね」「でも、その時のいじめはまだ優しかったよ」「いじめに優しいとかそんなのないと思うけど…」「だって、小学3年生の男子が考えるいじめなんてたかが知れてるだろ?まぁ、女子のいじめの方は中々だったがな。」「女子にもいじめられてたの!?」「そうだよ…水月と仲良くしてた…」「あ〜、魅蕾(みらい)?」「そう、そいつもいじめに加担してたんだぜ?」「え、そうだったの!?私、知らないで仲良くしてたよ…ごめん」「いや、良いんだ。君の人間関係を僕が原因で壊したく無かったからね」「でも、言ってほしかったな〜」「しょうがないだろ、言えなかったんだ。」「ま、たらればの話をしてもしょうがない、か」「そういう事。まぁ、それで俺が受けてたいじめってのが男女でレベルが違くてな」「レベル…?」「そ、レベル。男の方はさ、まぁ、ガキの考えることさ。肩にぶつかってきて」「それ、当たり屋じゃん」「それで、肩を怪我したから金払え、みたいな」「それ、レベルとかじゃなく無い?最早カツアゲじゃん」「ま、女子のいじめも凄くてさ」「う、うん」「精神的ないじめだったのよ、ありもしないデマを流されて、危うく社会的に抹消される所だったしな」「あ、あったね。盗み系とか多かったかも」「だろ?」「私はデマだって信じてたけどね〜」
――「ねぇ、何してんの?
私の物取らないでよね」「え、机に置いてあっ…」僕は言葉を最後まで言い切る前にぶたれた。「痛っ!?」「他にも取ってるんじゃないでしょうね?」「僕は何もやってないよ!」「じゃあ机の中見せてみなさいよ!」そう言うとそいつは机の中に手を突っ込んで何かを取りだした。「これ私の消しゴムじゃない!」「え、知らないよ!」今度は反論してから殴られた。「知らないわけないじゃないの、ドロボー
あんたは泥棒だから嘘もつくんだね。よくもそんな簡単に知らないなんて言えたもんだわ!」
「もうそろそろ授業だぞー」「今日はこんぐらいで勘弁しとくわ」先生が来ると"ふんっ"と聞こえるくらいの鼻息を立てながら自分の席に戻って行った。
「何かあったの?」魅蕾が席に戻るとほぼ同時に水月がトイレから戻ってきた。「特に何も無かったよ」「それなら良かったけど、ほっぺ赤いよ」
「ああ、さっき眠たかったから叩いた」
「そうなんだ」「うん」「なんかやること大胆だね」
「そ、そうかな」
…そうして、その授業…算数の授業を終わらせて三角形の面積の公式を頭の中で言いながら廊下を歩いていたときだ。「底辺×高さ÷…痛…」「おいおい、何肩にぶつかってるんだよ」「あ…ごめん」「ごめんじゃねえんだよ、金払え金」「あ、今持ってな…」「おいおい、嘘は良くないよ嘘は…300円で良いんだぜ?」「だから今は…」「持ってなくてもやりようはあるだろうよいくらでもさぁ」「な、やりよう?」「そうだよ、例えば親の財布から盗むとか、さぁ」「そ、そんなの駄目だよ!」「なら、先生に言ってもいいのかな?日向君が肩にぶつかってきて、すごく肩が痛いって、ね」「そ、それは…」「なら持ってこいよ、明日の朝、な」そう言って須春(すばる)君は通り過ぎて行った。これが、僕の日常。居場所なんて、無い。これを話せる人も…居ない。クラスが変わっても…きっと何も変わらない。いじめはずっと続く。最早それが、僕の存在証明と化しているのだから。いじめだけが、皆が僕を認識してくれる、唯一の出来事。まぁ、先生たちは最早、見て見ぬふりになっているし、相談した所で、意味なんてないのだろう。水月にだけ、これがバレなければいい。水月だけは、巻き込みたくない。そんなことを思いながら、その日を過ごすのだった。