ここはマールエメスへ抜ける国境付近の山間。ここは人が通るのに適さないほど荒れ地になっている。
 ハルリアはこの荒れた道を警戒しながら歩いていた。

 (流石に、この道を通るヤツはいねぇな。それにこの裏街道には魔物が住みついてる……まぁ、そんな道を好んで通らないだろう)

 そう考えながら草を掻き分けながら先へ進んだ。
 先へ先え進むハルリア、すると草木が――ガサッ、ガサガサ――そう音を立て揺れる。

 「……!?」

 それに気づき立ちどまった。そして腰にある剣の鞘の柄に手を添え周囲に警戒をする。

 (魔物か? それとも……魔獣)

 そう思っているとピンク色の一角兎が茂みから出てきた。
 ハルリアはそれに反応し剣を抜こうとする。だが、手を止めた。
 そう一角兎の後ろからゴーレム系の魔物【ストーンドール】が現れたからである。

 「倒すべきは……こっちか」

 そう言い放つとハルリアは剣を抜いた。それと同時に、ストーンドールへ剣先を向け足を一歩前に踏み込んだ。
 すると素早く動きストンドールへ駆けだした。そしてストーンドールの胸にある赤く光る魔石へ剣先を突き刺す。その後、魔石は破壊される。

 ――グガガガガァー……――

 そう叫ぶとストーンドールの目から光が消え停止する。すると体が崩れ岩石が地面に落下していった。
 それを確認するとハルリアは剣を持ったまま一角兎の方へ向きみる。
 一角兎はハルリアをみて、ビクビクし怯えていた。

 「攻撃してくる様子はねぇな」

 そう言いハルリアは剣を鞘におさめる。そのあと一角兎へ歩み寄った。
 ハルリアが近づいてくるのに対し一角兎は逃げないで怯え蹲っている。

 「怯えてるのか?」

 身を屈めハルリアは一角兎を覗き込んだ。

 「……イジメ、ナイ?」

 そう言い一角兎は、ちょこんと首を傾げる。

 「お前が攻撃しなきゃな……って、喋るのか?」

 そうハルリアが問うと一角兎は、コクッと頷いた。
 すると一角兎の体が徐々に人型へ変化していく。

 「なるほど……獣人か」
 「ウン、ボクハ……ピュアル・ゼア。コレデモ、メスダヨ」
 「いや、そのまま女だろ……まあいいか。オレはハル……ハルリア・アルパスだ。それよりも……ピュアルは、なんで追われてたんだ?」

 そう問いかけるとピュアルは何があったのか説明する。

 「……軍の連中に捕まりそうになって逃げてたって訳か。じゃあ、さっきのは軍で造られたものだな」
 「ソウダヨ。ムラノ、ミンナ……ツカマッタカモシレナイ」
 「今の話を聞く限り、そうなるだろう。だが、なんで村は襲われた?」

 不思議に思いハルリアは、そう問いかけた。

 「ナンカ、グンヲキョウカスル……ッテ……イッテタ」
 「そういう事か……コリャ、予想が当たってたな。だが、まだ表立っては攻撃してこないだろう」
 「……?? モシカシテ……ハルリアハ、リュコノグルノヒト?」

 そう問いかけられハルリアは頷く。

 「ソウナノカ。デモ、ナンデココニイルノ?」
 「隣のことが気になってな」
 「……ソウカ。ハルリアハ……コノクニヲシラベニキタンダネ」

 そうハッキリ言われハルリアは困った表情になる。

 「そ、それは……」
 「ダイジョウブ……ハルリアハ、ワルイヒトニミエナイシ……ソレニツヨイ。ダカラ、ムラノミンナヲタスケテ……」
 「……もしかして黙っているから助けろってことか?」

 そう聞かれピュアルは、コクリと頷いた。

 「ソレト、ケンジュツヲ……オシエテホシイ」
 「それだけでいいのか?」
 「ウン、ボクモツヨクナッテ……タタカイタインダ」

 そう言いピュアルは真剣な目でハルリアをみる。

 「分かった。そうだな……この国の案内や色々聞きたいんだが」
 「ソレナラマカセテ」

 ピュアルはそう言うと、ニパッと満面の笑みを浮かべた。
 その後ハルリアはピュアルに色々と聞きながら歩き始める。
 そしてハルリアはピュアルの案内で草木生い茂る道を通り、ここから近いべマルギの町へ向かったのだった。