少し時を遡る……――

 ここはカンロギの町の商店街を抜けた辺りだ。この辺には、そんなに人がいない。
 そしてここにはハンナベルが居てタールベを探している。

 (やっぱり……見当たらない。……他の町に行ったのなら、その前になんらかの連絡をしてくるはずだし)

 そうこう考えながら宿屋の方へ向かい歩いていた。

 「……!?」

 ハンナベルは慌てて建物の陰に隠れる。そう、そこにはハルリアとカールディグスが居たからだ。

 (あの男は……確かハルリオンと一緒に居た者。もう一人は……ハルリオンの髪色に似ているわ。でも少女だし……似ているだけよね)

 そう思いハルリアとカールディグスの様子を伺っていた。

 (あの子……こっちにくるわ。どこに行くのかしら……もう一人は宿屋に入っていった。この場合は、少女の方を追うが正解ね。宿屋の方は仲間たちに任せればいいし)

 そう考えがまとまるとハンナベルは、魔道具を使い仲間へ連絡をしながらハルリアを追いかける。

 ★☆★☆★☆

 ここは宿屋のティオルが泊まっている部屋。
 あれからティオルは、タールベが起きたため話を聞かせていた。
 それをタールベは涙目で聞いている。

 「それでですね。私の上司は年下なのですが、まだ女性経験ないらしいんですよ。これって信じられます? 二十三で、まだ経験がないって……」

 そう話をティオルはしていた。

 「誰が女経験がないって?」

 そう言いカールディグスが部屋に入ってくる。
 その声を聞きティオルは、カールディグスの方を向いた。

 「やっと来ましたね」
 「ええ、それよりも……余計なことを話さないでください!」
 「フフッ……中々こないので暇だったのですよ」

 ティオルはそう言うと、ニコッと笑みを浮かべる。

 「まあ、いいですけど。それで、コイツが?」
 「ええ、そうですが……そういえばハルリアは?」
 「ハルリア嬢は、急に買い物を思い出したらしい」

 それを聞きティオルは真剣な顔になり考え始めた。

 「……ハルリアは一人で向かったのですか?」
 「そうだけど、それがどうしたんですか?」
 「他に何か言っていませんでしたか?」

 そう言われカールディグスは思い返してみる。

 「そうだな……心配だから早くティオルの所に行けと言われただけだけど」
 「……カール、まだ援軍は来ていないのですね?」
 「恐らく早くて明日だと思う」

 ティオルはそれを聞き周囲を警戒した。

 「カール……貴方は副隊長ですよね?」
 「そうだけど……さっきからなんなんだ! 質問ばかりで言いたいことがあるなら、ハッキリ言え!!」
 「なるほど……それでは言いますよ。敵につけられましたね」

 そう言いティオルはカールディグスを睨んだ。

 「……じゃあハルリア嬢は……」

 カールディグスは警戒し周囲を見回した。

 「そういう事でしょう……」
 「ティオル……すまない」
 「今は……反省をしている暇なんてないですよ」

 そう言われカールディグスは、コクッと頷きティオルを見据える。
 その後、ティオルはタールベを眠らせた。

 「ハルリアは、恐らく気づいて……自分が囮になったのでしょうね」
 「ああ……そうだな。クソッ……」

 そうこうしていると、どこからともなく二人に目掛け無数のナイフが飛んでくる。
 カールディグスとティオルは、それに気づき咄嗟にナイフを避けていった。
 すると四人の男女が部屋に入ってくる。

 「カール……分散した方が良さそうです。私が、この者たちを引きつけていますので……この者をどこかに」
 「僕がですか?」
 「ええ、その方が私は自由に動けますので」

 そう言いティオルは向かいくる敵の攻撃を避けた。

 「なるほど……邪魔だから僕に押し付ける訳か。まぁいいですが、無理はしないでくださいね」

 カールディグスはそう言うと、タールべを抱きかかえる。
 その後カールディグスは、敵の攻撃をかわしながら部屋を出ていった。
 すると敵は全てカールディグスを追いかける。

 「やはり、そういう事か……」

 そう言うとティオルは敵を追いかけたのだった。