――……翌日。ここは王立騎士養成学園。
 今日から早速、授業が始まっていた。

 そして、ここは学園にある馬小屋だ。
 ここにはハルリアとカールディグスがいる。

 「ハルリア……嬢、まさか乗馬ができないとは……」

 そう言いカールディグスは、痛くなり頭を抱えた。

 「ハハハ……乗れないんじゃなくて、機会がなかっただけですわ」
 「本当ですか? 確かに兵団だと、それほど必要ありませんが」
 「そうそう……だけど、本当に練習するの?」

 ハルリアは馬をみて顔を強張らせている。……なんか嫌な顔をしているようにもみえないでもない。

 「あたりまえです! 隊長だけが乗れないって、学園長に言われたんですからね」
 「なるほど……じゃあ、聞いてるよな?」
 「ええ、落馬してから乗れなくなったって言ってましたよ」

 そう言われハルリアは、ハァーっと溜息をついた。

 「ハハ……それ以来、乗れなくなった」
 「違いますよね……学園長の話では、元々乗ったこともない。それなのに、馬に乗って落馬した。そう言っていましたけど」
 「そ、それは……」

 ハルリアは誤魔化しきれず言葉に詰まる。

 「ハァー……仕方ありません。学園長は、なんで僕が適任だと思ったか分かりませんけれども……やりますか」

 そう言いカールディグスは、馬小屋をみた。
 ハルリアも馬小屋へ視線を向ける。

 「……なんか大きくないか?」
 「そう思うのは、ハルリア嬢の背が低くなったからでしょうね」
 「あーそう言う事か。そうなると……前よりも、跨るの大変だな」

 そう言いながらハルリアは、脱力感の目で馬をみた。

 「でしょうね。だからといって、乗馬の授業は中止しませんよ!」

 そう言われハルリアは、ガッカリする。

 「じゃあ、馬を選びましょうか」
 「馬か……どれも同じにみえる」
 「そうみえますか? それは違いますよ。人間のように馬にも性格がありますので」

 それを聞きハルリアは、なるほどと納得した。
 その後ハルリアは、カールディグスと馬を選び始める。

 「……どうせなら、馬じゃなくて女に跨りたいんだが」
 「ハルリア嬢、その体でその発言は……変態と思われますよ。いえ、その前に……思ってても口に出さないでください!」
 「ハハハ……そうだな。んー……この白いヤツにするか」

 そう言いハルリアは、大人しそうな芦毛を指差した。
 だがその直後、青毛の馬がハルリアの頭を軽く噛んだ。

 「ウワアァァアアア―……」

 そう叫ぶと青毛の馬は、驚きハルリアの頭を噛むのをやめる。

 「ヒヒィーンー……」

 そう嘶き暴れ出そうとした。
 それをみたカールディグスは、どうしたらいいかと迷っている。
 だがハルリアは、至って冷静だった。……いや、目が据わっている。
 ハルリアの体は、条件反射かのように素早く動き青毛馬の首に抱きついていた。と同時に、青毛馬の首にぶら下がるように手と足で締めている。

 「グゲッ!?」

 青毛の馬はハルリアに首を絞められているため、余りにも苦しくて意識を失いそうになっていた。そのためか、暴れる気力もなくなっている。

 「ハルリア嬢っ! それ以上やったら馬が死んでしまいます!!」

 慌ててカールディグスは、ハルリアを青毛の馬から引き剥がした。
 ハルリアは青毛の馬から引き剥がされ不満そうだ。
 因みに青毛の馬は、フラフラだがなんとか立っている。
 そしてその後ハルリアは、カールディグスに怒られたのだった。