ハルリアはセリアーナとシャルルカーナと話をしていた。
 その後、控室にいる女子がハルリア達の周囲に集まってくる。そして、しばらく話をしていた。
 するとノックされ扉が開く。その後、女性教師が中を覗きながら五番と言う。

 「あ、呼ばれたわ。それでは、失礼しますね」

 そう言いハルリアは席を立った。

 「ハルリア、頑張ってね」
 「頑張らなくても大丈夫よ、セリアーナ。ハルリアなら余裕ですわ」

 そうシャルルカーナが言うと周囲に居る女子たちは、ウンウンと頷く。

 「あーそうね……ハハハ……」

 ハルリアは苦笑する。そして、部屋を出ていった。

 それを確認するとセリアーナとシャルルカーナは、再び女子たちと話を続ける。

 ★☆★☆★☆

 ここは対物試験をする場所。
 ハルリアは呼びに来た女性教師とここにきた。
 現在ハルリアは、スタート地点に立っている。

 (どんな仕掛けがされているんだ。恐らく仕掛けは、トラップ魔法の類だろう。そうなると……地面に仕掛けてあるとは限らない)

 そう思考を巡らせながらハルリアは、コースの先を見据えた。
 するとスタート地点に居る教師が「スタートっ!!」と言い放った。
 それを聞いたハルリアは、その合図と共にスタートする。それと同時に剣を抜いた。

 (どこからくる?)

 そう思いハルリアは、走りながら辺りを警戒する。

 「……!?」

 すると背後に無数の針が現れ、それは物凄い勢いでハルリアを襲った。
 それに気づきハルリアは、避けながら振り返り剣で叩き落す。
 しかし休む暇なく、両脇から炎の塊が無数に現れハルリアへと向かっていく。

 (クッ……オレを殺す気か?)

 そう思いながらハルリアは、その炎の塊も難なく避ける。

 (……オレならなんとか避けられるが……まさか、他の受験生も同じ試験内容なのか? だったら死ぬぞ……)

 そう思考を巡らせハルリアは、あらゆる攻撃に対処しながら走り抜けていった。

 ★☆★☆★☆

 ここはコースの内側。その中央には、ダギル学園長とロイノビがいる。

 「……す、凄い……最初はこの内容でクリアできるのかと思いましたが」
 「ロイノビ、ある確信を得たくてな。ハルリアのみ、他の受験生とは違うメニューにした。だが、やはり似すぎておる」
 「それは、ハルリオン様にでしょうか?」

 そうロイノビに聞かれダギル学園長は頷いた。

 「ここまで似るものだろうか? もし、ハルリアがハルリオンの子供だとしてもだ」
 「それなら書いてある通り、弟子だからなのではないでしょうか」
 「いや、それでもだ。癖性分まで、似るとも思えん」

 それを聞きロイノビは考える。

 「そうなると……学園長からみて、そこまでも似ているという訳なのですね」
 「ああ、ハルリオンは……ほぼ自己流だからな」
 「自己流? それは、どういう事なのですか」

 ロイノビは言っている意味が分からず困惑した。
 そう騎士や兵士になる者は、殆どがどこかの学園か養成所を出ているからだ。
 ただ、傭兵や誰かの弟子だったりでなる者もいるが希である。

 「ハルリオンは、傭兵から成り上がった」
 「傭兵……まさか……じゃあ、誰からも剣を習っていないのですか?」
 「さあな、そこまでは分からん。…………ハルリオンは……英雄と云われたあの黒龍族との戦いの時に、傭兵として雇われた者だ」

 そう言いダギル学園長は、その時のことを思い出していた。

 「じゃあ、その時に学園長の隊に入ったのですね。ですが、なぜ聖剣士と言われているのでしょう?」
 「そのことか……それは簡単だ。ハルリオンの使う剣技や魔法から、その称号が付いたからな」
 「なるほど……それ程に、凄いという事ですね」

 それを聞きダギル学園長は頷く。

 「ハルリアは、千メートル……簡単にクリアしそうだな」

 そう言いダギル学園長は、再びハルリアを見据える。

 「ええ、そうですね。学園長、先程のハルリアに対して気にしていることとは……まさか本人という訳じゃないですよね?」
 「うむ、それはあり得ん……だから困惑しているのだ」
 「なるほど……」

 そしてダギル学園長とロイノビは、その後もハルリアが千メートルを走り切るまで話していたのだった。