ここは女子の控室。
 ハルリアはセリアーナと話をしていた。

 (……なんだ……この鋭く突き刺さるような視線は?)

 そう思いハルリアは周囲をみないよう探る。

 (一人だけだな……でも、どういう事だ?)

 そうこうハルリアは考えている。

 「ハルリア、そういえば五番よね。終わったら待ってて」

 そう言われハルリアは頷いた。

 「ねぇ、貴女……ちょっと目立ちすぎじゃない?」

 濃いめの青で編み込みをしている女性が、そう言い二人のそばに近づいてくる。

 「あのぉ、それって失礼じゃないかしら」

 そう言いセリアーナはその青い髪の女性を睨んだ。

 「あーえっと……喧嘩ならやめましょう」
 「喧嘩? そんな訳ないでしょ。と、いうかぁ……私は貴女に言っているのよ」

 青い髪の女性はそう言うとハルリアを指差した。

 「ワタシ? それってどういう事でしょうか」
 「さっきの対戦試験のことよ。どんな卑怯な方法で勝ったのか分からないけど……そんなに、目立ちたいのかしら」
 「ちょっと待って……ハルリアが不正をしたって云うの?」

 そうセリアーナが問うと青い髪の女性は、ジト目で二人をみる。

 「そうじゃないとでも云いたそうね。でも……女性が男性に勝つなど……それも、あんな簡単に倒せる訳ありませんわ」
 「それって……」

 そうセリアーナが言いかけた。

 「待って、セリアーナ」

 そう言いハルリアはセリアーナの発言を遮る。

 「ハルリア……」

 セリアーナは心配に思いそう言いハルリアをみた。
 それに気づきハルリアは、軽く頷く。そして青い髪の女性を、キッと睨む。

 「そうね……そう思われても仕方ないわ。ですが、女性は男に勝てない……それって偏見でしかありません」
 「偏見? 何を馬鹿げたことを言っているの。腕力の差で、明らかに男の方が強いに決まってますわ」

 そう青い髪の女性が言うとハルリアは、呆れた顔になる。

 「そうですね……腕力なら男性の方があります。ですが、女性でも男性に勝つ方法はありますわよ」
 「男性に勝つ方法? 本当にあるのですか」

 青い髪の女性はハルリアのその言葉に興味を示した。

 「ええ、それは剣技よ」
 「剣技……剣の技で、勝てる。じゃあ、貴女は剣技で勝ったという訳なの?」

 そう青い髪の女性に問われハルリアは頷く。

 「剣技……って云うほどではありませんが。日頃から対人戦での練習を重ねていれば、自ずと相手の動きが分かってくるの」
 「では私も、多少なりと強くなれるでしょうか?」

 さっきとは態度を変え青い髪の女性はそう問いかける。

 「ええ、貴女次第では多少どころか強くなれますわ」

 そうハルリアに言われ青い髪の女性は涙を流し喜んだ。

 「ああ、それが本当なら……兄を見返すことができる」

 そう言い青い髪の女性はハルリアの手を握る。
 ハルリアは手を握られデレている。

 「お兄様に勝ちたいのですね。普通に、ピーを蹴ればいいと思いますが」

 そうハルリアが言うとセリアーナと青い髪の女性は、目を点にして顔を赤らめた。

 「あ、そうでしたわ。申し遅れましたが……私は、シャルルカーナ・ヴィクトノス。……よろしくですわね」
 「あ、私はセリアーナ・サフランよ……よろしくね」

 そう二人が挨拶していたがハルリアは、一瞬言葉に詰まる。

 「あ……ワタシは、ハルリア・アルパスですわ。……よろしくお願いします」

 そう言い頭を下げた。

 「えーっとシャルルカーナは、もしかしてマルルゼノファの……」
 「ハルリア、ええ……そうよ。マルルは、私の双子の兄なの」

 それを聞きセリアーナは、驚き仰け反る。

 「じゃあ、今まで……私たちが一緒に居たことも知ってましたよね?」
 「そうね……セリアーナと話している所もみてたわ」
 「もしかして、勝ちたいお兄様ってマルルゼノファですか?」

 そうハルリアが聞くとシャルルカーナは首を横に振った。

 「二番目の兄、アイノスベゼルですわ。いつもマルルに、酷いことを言うのよ」

 そう言いシャルルカーナは、ムッとした表情になる。
 そしてハルリアとセリアーナは、その後もシャルルカーナの話を聞いていたのだった。

 (まさか……マルルゼノファに双子の妹が。バドルフ様は、シャルルカーナのことを一度も話したことがない……どういう事だ?)