……――翌日。いよいよ今日は、ハルリアが受ける実技試験の日だ。

 「フゥ~、実技って何をするんだ?」

 そう言いながらハルリアは、騎士養成学園の門を潜る。

 ★☆★☆★☆

 ここは騎士養成学園の受付。ハルリアは、順番を待っていた。

 (受付? なんで、わざわざする。ただの確認……だとしても、する必要ねぇよな)

 そう考えているとハルリアの順番がまわってくる。

 「おはようございます。この書類に、お名前、受験番号、受ける実技試験、各種の記載をしてください」
 「あ、おはようございます。分かりました……」

 そう言われハルリアは挨拶したあと書類に記載していく。

 (……なるほどな。種目別で審査する訳か。剣術系以外は、魔術系、格闘術系、弓術系、槍術系……この中から選ぶ。さて、どうする?
 どれでも大丈夫だが……そうだな。この中で、最も苦手なものにするか)

 そう考えがまとまると剣術系以外は、魔術系を選んで書き込み受付の女性に渡した。
 受付の女性は、書類を確認すると順番の札をハルリアに渡す。その札には、剣術五番で魔術七番と記載されている。
 因みに剣術の実技の順番は、既に決められていた。

 (どっちも、奇数か。五と七……ごな……こなごな……粉々。あー……いや、何を考えてるんだ。オレは……)

 そう考えながらハルリオンは、二枚の札を受け取り指定された場所へ向かう。

 ★☆★☆★☆

 ここは剣術系の実技試験を行うために用意された敷地である。
 ハルリアはここにくるなり、使用する木の剣を選んでいた。

 (まぁ……安全のためなんだろうな)

 そう思いながら木の剣を握り使いやすいものを探している。
 他の受験生も自分の使う武器を選んでいた。

 剣術系の実技試験は、対戦と対物の両方をやる。
 対戦の武器は、木の剣を使用。対物戦は、自分が所持している武器を使う。持っていない場合は借りることが可能だ。
 因みに対戦で負けても実力がある場合は合格である。

 選んでいたハルリアは一本の木の剣を握った瞬間、ニヤリと笑みを浮かべた。

 (これがいい。大きさ……重さも、それにグリップも手に馴染む)

 そう思いハルリアは剣を一振りしてみる。
 するとそれをみていた金色に青が混ざったミディアムヘアの男性は、ハルリアに声をかけた。

 「女性にしては、中々いい剣さばきですね。ですが、実戦ではどうでしょうか?」

 その声を聞きハルリアは振り返る。

 「それは、ワタシに言っているの?」
 「ええ、そうですよ。ですが、これは……なんて可愛らしい。これほどの可愛い女性に逢ったことがありません」
 「はあ? そうなのですね。それで、それだけでしょうか」

 そうハルリアが言うとその男性は首を横に振った。

 「これは、失礼。僕は、マルルゼノファ・ヴィクトノスと申します。それとバドルフ・ヴィクトノスは、父ですよ。あー、勿論……知っていますよね?」
 「え、ええ……勿論ですわ。ヴィクトノス伯爵家と云えば、有名ですもの……」

 そう言いハルリアは、作り笑いをする。

 (まさかバドルフ様の……それもバカ息子が、なぁ。伯爵も、呆れるほどだと聞いてたが)

 そう思いハルリアは、マルルゼノファから目を逸らした。
 因みにマルルゼノファは三男であるためか、余り期待されていないらしい。

 「あーそうでした。ワタシは、ハルリア・アルパスです。よろしくお願いしますね」

 ハルリアはそう言い軽く会釈する。

 「名前も素敵ですね。そうそう、もし良ければ試験が終わったら……お茶でもしませんか。美味しいカフェを知っているのですが」
 「そうなのですね。ですが、知り合いとこの町に来ていますので。申し訳ありません……今日は、お断りします」
 「分かりました。では、時間があるときで構わないですので」

 そう言いマルルゼノファは顔赤らめハルリアをみた。

 「そうですね。その時は……」

 そう心にもないことを言いハルリアは、心の中で吐き気を模様している。
 その後ハルリアとマルルゼノファは、他者の対戦が始まるためここを離れた。
 そして二人は、用意された観覧席で対戦をみる。

 (……なんで、オレのそばから離れねぇ。野郎がそばに寄って来ても、なぁ)

 そう思いながらハルリアは溜息をつき、チラッとマルルゼノファをみた。