目覚めると、朝の6時半だった。学校の用意も着替えもしていない。私はいつも、7時にには家を出ているので、ちょっとやばい。
 私は、ぼさぼさしている髪や服、身だしなみ、学校の用意を急いで着て、整えて、買ってある菓子パンを口にくわえて家を出た。
 天気は快晴で曇り一つもなく温かい、よい日だ。
 私は、お日様の匂いがするシャッキとした服を着て自転車に乗る。
 春の陽気が差し込み、髪に気持ちよくそよぐ風が花々の匂いを連れてきてくれる、そうして、駅へとたどり着く。
 駅では1人の女友達が待っていた。「遅いよ。遅刻しちゃうかもって心配したんだから!」と安心したような元気な声が聞こえる。
 私は「ごめーん」といいながら、自転車を止めその子と電車にのった。
 私たち2人は、宿題がーとかバスケ部の先輩がかっこいい!とか、他愛もない話を笑いながら学校へ向かう。
 学校に着いたら、クラスの子の輪に入り楽しく話す
 授業は最低限ノートは取って、後は適当に過ごす。その時に斜め前の席に目が自然に行ってしまう。その子は、幼馴染で私の彼氏だ。
 彼と一緒にいるのは、楽しい。
 彼は聞き上手で優しくて、それで何かあったら一緒に悩んでくれて、そして私が笑ったら、一緒に笑ってくれる。そんな、朗らかな彼が好きでたまらない。
 だから彼が嬉しいと私も嬉しいし、彼が悲しむと私も悲しい。
 昼休みになると、彼とお昼を桜が舞う中庭で食べる。
 お互いに欲しいおかずを交換したり、時には食べさせてもらったり、そんなことをするたび赤くなる彼が可愛いくてしょうがない。
「そんなに赤くならなくてもいいのに。」とニヤッと言うと、これまた「気のせいだし、からかわないでよ。」と男性らしくもま少年時代の名残がする声を聴かせてくれる。
 話をそらしたかったのか「今日は、クラスで打ち上げをする日だけど忘れない?」と彼に優しく聞かれた。
 私は目を泳がせながら、「覚えてたよー、忘れてないよー。」とわざとらしく言って見せる。
「ほら、絶対忘れてるじゃん!」と彼が笑う。
 そんな、お互い終始笑いぱなっしで幸せなお昼の時間を過ごした。
 午後の授業は、眠くて、寝ちゃって社会の先生に注意された、だってつまらないんだもん。
 放課後、皆が待ち望んでいたかのように嬉々として動き出し、机が教室の真ん中の方に、縦長に移され、残りは教室の端へと移す。
 私もクラスの友達とお喋りながら机を動かす。
 それが出来ると、一人の子がホットケーキプレートをどこからか持ってくる。ほかの子たちは、ホットケーキミックス、牛乳、ボウル紙皿、コップなどを取り出したり、種類の違うジャムを交換したりしていた。
 私は、ボウルにホットケーキミックス牛乳を入れて、ぐーるぐーる混ぜていた、なんでもない作業だけどワイワイやったら楽しい。
 温まってきたプレートに生地を垂らして、ふちがぼこぼこしたらひっくり返す。
 そうしてホットケーキが出来ると、我先に!と食べる子が集まって戦争になった。そんなじゃれあいも見ていて楽しい。
 お腹がいっぱいになってくると、どれだけ薄い生地を作ってクレープを作るかというトーナメントが始まった。
私は並みいる強豪をうち倒し決勝までたどり着いた。決勝の相手は、まさかの彼氏だった。
 私は、乙女代表として戦い…そして敗れた。
 「なんで、そんな上手いんだよー!!」私は彼をポコポコ叩いた。乙女の屈辱である。
 後片付けの後、私は彼と夕焼けの帰り道を歩いた。
  今日のパンケーキパーティーの話題が尽きずに笑っていると、急に彼は、しんみりした、切ない表情になって私に言った。
「ねぇ、パンケーキパーティー楽しかった?」
 私は、迷うことなく「楽しかった!」と自信満々に言った。
「このクラスは好き?」彼は続けて私に問う。
 どうして、こんなことをいうのだろう?私は不安になりながら答えた。
「そりゃ、そうだもん、皆、いい子で、一緒だと楽しくて、何より君がいて、私は最高に幸せだよ。」
最後は恥ずかしかったが本音だ、自分を良いところも悪いところも理解していてくれて、それでなお、私と一緒にいて笑ってくれる。
 そんな彼と居て幸せじゃないはずがない。
彼は嬉しそうな、けど今にも泣きだしそうな顔で言った。
「僕もそんな風に考えて一緒にいてくれる君が素敵でたまらなく大好きでたまらない。けど、それでも、君のそんないい所のせいで君が苦しんでいるのは苦しい、けどそのままでいて欲しいと思う僕を君は許せるかい?」
 私は苦しんでいないし、幸せなのに、どうしてこんなこと言うんだろう。私は問い詰めたかったが、彼が泣きそうなのを見て、
「もちろん」と言い切った。
 彼は「きっといつか、本当に君を理解して一緒にいてくれる人が現れるよ。」
 そういうと、夕焼けがはじけて、虫の音は吸い込まれ最後には彼の笑顔も泡沫の様にはじけて消えてしまった