入道雲が、天色の空をそこだけ白く切り取っている。
「愛空お兄ちゃん」
凛音に呼ばれて振り返ると、凛音が少し寂しそうに笑った。
「もう8月だね」
「そうだね。暑いなぁ」
蝉時雨が、僕の耳の奥に反響している。
「...寂しくないの?お兄ちゃんは」
「寂しくない、わけないよ」
僕が笑うと、凛音は心配そうに眉を下げた。
「でも、毎日生きてるって思いながら生きるのって、思いの外悪くない」
「...そうだね」
目の前の入道雲が鰯雲に変わって、いつかの紅葉が真っ赤に色付くのを、僕はもう見ることは出来ないのだろう。
「そうだ、凛音」
「なに?」
「凛音はさ、どうやって僕の魂を狩るの?」
「...頭をごっつんこする」
「え?」
「あたしの額と、お兄ちゃんの額で、熱を測る時みたいに」
凛音は自分の額に手の甲を当てて、その動きをなぞって見せた。
「...また随分と風変わりな」
「しょうがないじゃん、自分で決められる訳じゃないんだから」
頬を膨らませる凛音を見て、思わず笑ってしまった。
「まぁ、良いんじゃない。...最期まで、あったかくて」
僕がそう言うと、凛音が此方をちらりと見て、ふふっと笑った。
「愛空お兄ちゃんは、これからどうするの?」
「...そうだね。僕は...うん、日常を限界まで輝かせてみるよ」
「お兄ちゃん、簡単そうで難しいこと言ってるよ」
「うん、知ってる」
僕は額の汗を拭って、真っ白な入道雲に向かって手を伸ばした。
「でも、やるだけやってみるよ。天音が向こうで待ってるらしいから」
そう、と呟いた凛音の表情は、先程よりも晴れやかに見えた。
僕と凛音が佇む木陰に、ざぁと風が吹き抜ける。何処からか、涼やかな風鈴の音色が聞こえた。
いつの日だったか、向日葵を抱えて笑っていた彼女の姿が、風の隙間に見えたような気がした。
「愛空お兄ちゃん」
凛音に呼ばれて振り返ると、凛音が少し寂しそうに笑った。
「もう8月だね」
「そうだね。暑いなぁ」
蝉時雨が、僕の耳の奥に反響している。
「...寂しくないの?お兄ちゃんは」
「寂しくない、わけないよ」
僕が笑うと、凛音は心配そうに眉を下げた。
「でも、毎日生きてるって思いながら生きるのって、思いの外悪くない」
「...そうだね」
目の前の入道雲が鰯雲に変わって、いつかの紅葉が真っ赤に色付くのを、僕はもう見ることは出来ないのだろう。
「そうだ、凛音」
「なに?」
「凛音はさ、どうやって僕の魂を狩るの?」
「...頭をごっつんこする」
「え?」
「あたしの額と、お兄ちゃんの額で、熱を測る時みたいに」
凛音は自分の額に手の甲を当てて、その動きをなぞって見せた。
「...また随分と風変わりな」
「しょうがないじゃん、自分で決められる訳じゃないんだから」
頬を膨らませる凛音を見て、思わず笑ってしまった。
「まぁ、良いんじゃない。...最期まで、あったかくて」
僕がそう言うと、凛音が此方をちらりと見て、ふふっと笑った。
「愛空お兄ちゃんは、これからどうするの?」
「...そうだね。僕は...うん、日常を限界まで輝かせてみるよ」
「お兄ちゃん、簡単そうで難しいこと言ってるよ」
「うん、知ってる」
僕は額の汗を拭って、真っ白な入道雲に向かって手を伸ばした。
「でも、やるだけやってみるよ。天音が向こうで待ってるらしいから」
そう、と呟いた凛音の表情は、先程よりも晴れやかに見えた。
僕と凛音が佇む木陰に、ざぁと風が吹き抜ける。何処からか、涼やかな風鈴の音色が聞こえた。
いつの日だったか、向日葵を抱えて笑っていた彼女の姿が、風の隙間に見えたような気がした。