「授業の一環だからな。中には魔物のコントロールするために何人か人もいるし私も後ろから付いていく。
 実戦訓練は危険を伴うので危険だと思えばいつでもリタイアできる。危ないと判断したらこちらから介入して強制的に終了することもあり得るからな」

 キスズが簡単に実戦訓練の説明をする。
 エミナを加えた3人のパーティーで実戦訓練に申し込んだ。

 エミナの合格数や優秀点もおおく、予想通りリュードたちが1番に挑戦できることになった。
 リュードは当然だと思っていたがエミナは最初の挑戦と聞いて驚いていた。

「き、気持ち悪くなってきました」

 ちゃんと準備もしてきたので余裕の面持ちのリュードとルフォンに対して、エミナは自分の武器である杖を抱きしめるようにして青い顔をしている。

「だいじょーぶだいじょーぶ」

 ルフォンが笑ってエミナの背中をさすってあげる。

「そんな緊張するなって」

「うう、2人はどうしてそんな余裕何ですか?」

 そりゃあ魔物よりももっと強いの知ってるからさ、とは言わない。

「経験の差かな?」

「何ですか、それ?」

 多少気がほぐれればと冗談めかしてリュードが言うとエミナが弱々しく微笑む。
 リュードやルフォンは魔物との戦いの経験がすでにある。

 リュードやルフォンも最初は緊張したものだが今では緊張はさほどない。

「それじゃあ時間だ。準備はいいか?」

「はい」

「実戦訓練、開始だ」

「それじゃあ行こうか」

 ダンジョンの入り口は草原のど真ん中にあった。
 何もないようなただ広い草原の中にポツンとある小さな岩山があり、大きく口を開けている。

 それがダンジョンなのである。
 不自然な岩山は草原に元々あったものではない。
 
 ダンジョンの入り口として現れたもので気づいたら草原に岩山があったのだ。
 早速リュードを先頭にしてダンジョンに入っていく。
 
 最初に見つけた人の名前を付けてオイチャのダンジョンと呼ばれているこのダンジョンは、ダンジョンの中の至る所に光を放つ魔光石という鉱石があって灯りの必要がない。
 リュードを先頭にエミナ、ルフォンと続いて、そのはるか後ろからキスズがついていく。
 
 リュードが前を、ルフォンが後方の警戒を担当する。
 ダンジョン内部の道は簡易的に看板で塞がれているところもあって、ルートが決まっている。
 
 これは何回かに分けて実戦訓練をできるようにするためで別のルートは通ってはいけない。
 ダンジョンの中は洞窟型でデコボコした道が続いていて、下に潜っていく形になる。
 
 平坦な部分と緩やかに下っていく部分があって階段などがあるダンジョンとは違い明確な階層分けされてはいない。
 それでもなんとなく階層は区別されていて上に近い順に上層、中層、下層と大きく分けられていて、下にいくほど魔物も強くなる。

「可愛いですね、アレ」

「うん」

 まず初めにあったのはホーンラビット。
 簡単に言えば角の生えたウサギである。

 かなり大人しい魔物で狩りの対象になるぐらいで積極的に魔物として討伐されるものでもない。
 この世界では魔力を持たない生物はいないので魔物ではない動物はいない。

 けれどホーンラビットはほとんどただの動物と言ってよい弱い魔物である。
 危険度だけでみるとなんでことはなく怪我をする可能性もほとんどない相手になる。
 
 しかしちょっとばかり厄介な相手だとリュードは思った。
 ホーンラビットのつぶらな瞳がリュードを見る。

 可愛さのあまりに攻撃がためらわれる。
 そんなことも若干はあるかもしれないがそんなことではない。

 もちろん冒険者を目指している身で相手の見た目に惑わされて手心を加えることなんてない。

「これぐらい任せてください。えいっ! あれっ? えいっ!」

 エミナが自信満々に前に出て火の魔法でホーンラビットを攻撃する。
 しかしホーンラビットはピョンピョンと飛び跳ねて魔法をかわしていく。

「えいっ、えいっ! くぅ……すばしっこい」

 敵意がなく追い詰められた時以外に反撃してくれることもない。
 逃げの一手を取る小さい魔物がホーンラビット。

 森の中で静かに狩りをするにはよい相手でも開けた洞窟で、すでに見つかっている状態で倒さなきゃいけないなら厄介な相手と化す。
 ひたすら逃げまくるホーンラビットのすばしっこさは侮れない。
 
 エミナの魔法は軽く避けられてしまって全然かすりもしない。

「くっ、見ててください。今やっつけますので……あっ」

 もう一度魔法を放ったエミナ。
 ブスリとナイフが刺さってホーンラビットが絶命する。

 リュードの投げたナイフでエミナの魔法に合わせてホーンラビットの逃げ先を予想して投げたのである。

「もう落ち込むなって」

 攻撃を当てられなかった挙句、囮に使われたエミナは落ち込んでしまった。
 簡単だと思っていたのに魔法が当たらなかったのが1番ショックだった。

 ああいった時は追いかけて剣を振り回すよりも遠距離武器でしっかり狙って倒すのがスマートなやり方になる。
 今回は狩りをするつもりはなく弓矢なんて持ってきていないのでルフォンがナイフを投げて仕留めた。

 最初はルフォンにでも追いかけてもらおうと思っていたけど、エミナがやる気満々で魔法を放ったので利用させてもらった。
 当てて倒してくれるなら当然それが1番だったのは言うまでもないがこれは試験である。

 当たる気配がちょっと感じられず、魔力をここであまり消耗もさせられない。
 致し方なくルフォンにやってもらった。

 見られている以上評価にも関わるのだからここで何回もトライさせてあげるわけにもいかない。

「もういいです」

 拗ねたように言うエミナ。
 悔しいけれどリュードの言うことも正しいので納得するしかない。