「リューちゃん!」
「リュード!」
「……えっ、何?」
「何じゃない!」
「そうだよ、いきなりボーッとしてさ!」
神の世界から戻ってみると、ルフォンとラストが心配そうにリュードの顔を覗き込んでいた。
「あ、あぁ……ごめん」
リュードは神物を持ったままの体勢であった。
持った瞬間に神の世界に連れていたのだから当然と言えば当然。
周りからすると、急にリュードがぼんやりと突っ立ったままになったのだから心配もする。
そこは全く時間が経っていないわけじゃないということも少し悪い。
そんなに長い時間じゃなかったけど、リュードが手にしたものがものだけにみな不安そうにしていた。
でもケーフィスに会ってたなんて言えないので笑ってごまかす。
「まさか神様に呼ばれてた、なんてことはないよな」
「えっ? いや、そんなわけ」
「ほぉーう?」
ほんの冗談のつもりのウィドウの言葉がドンピシャすぎて、一瞬動揺を隠しきれなかった。
他の人はごまかせてもウィドウはごまかせない。
「神様に呼ばれました……」
じーっと見つめられてリュードは折れて、渋々頷いた。
ここは変にごまかすよりも素直に認めた方が早い。
もうここにいるみんなは共に死線を乗り越えた戦友だ。
多少のことはバレても平気なはず。
「なんてことにゃ! それは……羨ましいにゃ!」
聖職者の面々もケフィズサンのみんなも驚いている。
ウィドウもである。
リュードが言いにくいなら追及もしないつもりだったのに、あっさりと認めてしまった。
信用してくれていると考えると嬉しいが、本当に神様に呼ばれていたなんて驚きの話である。
「神様のお声を聞くことができるやつは世界広しと言えどそうはいない。貴重な経験をしたな、リュード」
先に神物に触れておけばよかったかな、なんて軽く冗談を言いながらウィドウはリュードの肩に手を回す。
その際にちょっと神物に触ってみるけど、神様に呼ばれることはない。
「お……おっ?」
その時、地面が揺れ出した。
最初は小さな揺れだったのが大きくなっていき、立ってもいられなくなる。
さらに揺れは激しくなっていき、神殿の一部が崩れ出す。
「このままじゃ危ないな」
ウィドウは魔法を使ってダリルの側に移動する。
ダリルを引きずって地面を這うように移動してみんなのところに連れてくる。
分かりやすい目印として神物を持つリュードのところにみんな少しずつ移動して集まる。
「くっ……ニャロ、ハルヴァイ!」
「りょりょ、了解にゃ!」
「分かった!」
「聖壁展開!」
ニャロ、アルフォンス、ハルヴァイで聖壁を張る。
神殿の柱が崩れ天井が崩落し始めている。
誰も気づいていなかったが、入ってきた大きな扉はいつの間にか無くなっていたので出られる場所もなかったのである。
「天井が!」
「うわああああ!」
とうとう大きく天井が崩壊して振ってきた。
みんなが体を寄せて、なぜなのか視界が真っ白になった。
ーーーーー
「うわああああ!」
浮遊感が襲いかかってきた。
ギュンと体が長い距離をぶっ飛んだような気がして、気づいたら視界一面に真っ白な雪の世界が広がっていた。
極寒のダンジョンの扉が勢いよく開いて、その中からリュードたちが飛び出してきた。
空中に無防備に投げ出されたリュードたちは天地も分からないままに落下を始める。
「うぎゃっ!」
「にゃにゃ!」
それぞれ雪に埋まるようにリュードたちは落下した。
相当な勢いで扉から放り出されたけれど、下が分厚い雪だったために体は無傷であった。
「いでで……」
傷はないけど雪に埋まるほどの勢いだと多少の痛みというか、痛いような感じはある。
「おーい! みんな無事かー?」
ウィドウの声が聞こえる。
「無事でーす!」
「無事にゃー」
それぞれの返事も聞こえる。
どうやらみんないるみたいだ。
「雪に埋まって動けそうにない。誰か動けるか?」
「無理でーす」
「ちょっと厳しい」
みんなも同じく雪に埋まっていた。
リュードも体を動かそうとしてみるが、雪が密着して身動きが取れない。
「ちょーとまってろ!」
この声はブレアだ。
「ヒャッ! 背中に雪入っちまった! ツメテェ!」
なんだかガサゴソ音が聞こえる。
雪から脱出しようとしているみたいだ。
魔法で雪を溶かして体を動かすスペースを作っていたブレアは一人で奮闘していた。
程なくしてザクザクと雪の上を歩く音が聞こえてくる。
「えーと近いのは……おい、なんだか快適そうだな?」
ブレアの近くに埋まっていたのはリュードだった。
ふっと暗くなりブレアが上から埋まったリュードを覗き込む。
雪の中にいると思いの外暖かい。
することもないし神物を抱えたまま青い空を見ているとなんだか眠気が襲ってくるのだ。
「ほら、掴まれ」
「悪いな」
ブレアの手を取って雪から脱出するリュード。
その後、他のみんなも穴から救出する。
「全員いるな……ブレア?」
サッと見た限り全員いる。
みんな大丈夫そうだと思っていると、ブレアが雪に空いた他の穴に近づく。
全員助けたと気づいていないブレアは、まだ埋まっている人がいるかもと穴を覗き込んだ。
「えっ? ……お、おいっ! みんな、ちょっと来てくれよ!」
すでにみんないるのに何を見つけたというのか。
ひどく慌てるブレアのところにみんな集まる。
「どうした?」
「こ、これは……」
「なになになににゃ?」
「ええっ!?」
穴を覗き込んだみんなが一人残らず驚いた。
「ん」
ブレアが覗き込んだ穴には人が埋まっていた。
白い髪をした頭にフワフワの白い毛のケモミミ、それに腰の辺りに見えるのはこれまたフワフワした尻尾が見えている。
しかも尻尾の数は五本。
「わぁ……でもかわいいにゃあ〜」
ただ助けてくれと手を伸ばすそれは、少女だった。
「リュード!」
「……えっ、何?」
「何じゃない!」
「そうだよ、いきなりボーッとしてさ!」
神の世界から戻ってみると、ルフォンとラストが心配そうにリュードの顔を覗き込んでいた。
「あ、あぁ……ごめん」
リュードは神物を持ったままの体勢であった。
持った瞬間に神の世界に連れていたのだから当然と言えば当然。
周りからすると、急にリュードがぼんやりと突っ立ったままになったのだから心配もする。
そこは全く時間が経っていないわけじゃないということも少し悪い。
そんなに長い時間じゃなかったけど、リュードが手にしたものがものだけにみな不安そうにしていた。
でもケーフィスに会ってたなんて言えないので笑ってごまかす。
「まさか神様に呼ばれてた、なんてことはないよな」
「えっ? いや、そんなわけ」
「ほぉーう?」
ほんの冗談のつもりのウィドウの言葉がドンピシャすぎて、一瞬動揺を隠しきれなかった。
他の人はごまかせてもウィドウはごまかせない。
「神様に呼ばれました……」
じーっと見つめられてリュードは折れて、渋々頷いた。
ここは変にごまかすよりも素直に認めた方が早い。
もうここにいるみんなは共に死線を乗り越えた戦友だ。
多少のことはバレても平気なはず。
「なんてことにゃ! それは……羨ましいにゃ!」
聖職者の面々もケフィズサンのみんなも驚いている。
ウィドウもである。
リュードが言いにくいなら追及もしないつもりだったのに、あっさりと認めてしまった。
信用してくれていると考えると嬉しいが、本当に神様に呼ばれていたなんて驚きの話である。
「神様のお声を聞くことができるやつは世界広しと言えどそうはいない。貴重な経験をしたな、リュード」
先に神物に触れておけばよかったかな、なんて軽く冗談を言いながらウィドウはリュードの肩に手を回す。
その際にちょっと神物に触ってみるけど、神様に呼ばれることはない。
「お……おっ?」
その時、地面が揺れ出した。
最初は小さな揺れだったのが大きくなっていき、立ってもいられなくなる。
さらに揺れは激しくなっていき、神殿の一部が崩れ出す。
「このままじゃ危ないな」
ウィドウは魔法を使ってダリルの側に移動する。
ダリルを引きずって地面を這うように移動してみんなのところに連れてくる。
分かりやすい目印として神物を持つリュードのところにみんな少しずつ移動して集まる。
「くっ……ニャロ、ハルヴァイ!」
「りょりょ、了解にゃ!」
「分かった!」
「聖壁展開!」
ニャロ、アルフォンス、ハルヴァイで聖壁を張る。
神殿の柱が崩れ天井が崩落し始めている。
誰も気づいていなかったが、入ってきた大きな扉はいつの間にか無くなっていたので出られる場所もなかったのである。
「天井が!」
「うわああああ!」
とうとう大きく天井が崩壊して振ってきた。
みんなが体を寄せて、なぜなのか視界が真っ白になった。
ーーーーー
「うわああああ!」
浮遊感が襲いかかってきた。
ギュンと体が長い距離をぶっ飛んだような気がして、気づいたら視界一面に真っ白な雪の世界が広がっていた。
極寒のダンジョンの扉が勢いよく開いて、その中からリュードたちが飛び出してきた。
空中に無防備に投げ出されたリュードたちは天地も分からないままに落下を始める。
「うぎゃっ!」
「にゃにゃ!」
それぞれ雪に埋まるようにリュードたちは落下した。
相当な勢いで扉から放り出されたけれど、下が分厚い雪だったために体は無傷であった。
「いでで……」
傷はないけど雪に埋まるほどの勢いだと多少の痛みというか、痛いような感じはある。
「おーい! みんな無事かー?」
ウィドウの声が聞こえる。
「無事でーす!」
「無事にゃー」
それぞれの返事も聞こえる。
どうやらみんないるみたいだ。
「雪に埋まって動けそうにない。誰か動けるか?」
「無理でーす」
「ちょっと厳しい」
みんなも同じく雪に埋まっていた。
リュードも体を動かそうとしてみるが、雪が密着して身動きが取れない。
「ちょーとまってろ!」
この声はブレアだ。
「ヒャッ! 背中に雪入っちまった! ツメテェ!」
なんだかガサゴソ音が聞こえる。
雪から脱出しようとしているみたいだ。
魔法で雪を溶かして体を動かすスペースを作っていたブレアは一人で奮闘していた。
程なくしてザクザクと雪の上を歩く音が聞こえてくる。
「えーと近いのは……おい、なんだか快適そうだな?」
ブレアの近くに埋まっていたのはリュードだった。
ふっと暗くなりブレアが上から埋まったリュードを覗き込む。
雪の中にいると思いの外暖かい。
することもないし神物を抱えたまま青い空を見ているとなんだか眠気が襲ってくるのだ。
「ほら、掴まれ」
「悪いな」
ブレアの手を取って雪から脱出するリュード。
その後、他のみんなも穴から救出する。
「全員いるな……ブレア?」
サッと見た限り全員いる。
みんな大丈夫そうだと思っていると、ブレアが雪に空いた他の穴に近づく。
全員助けたと気づいていないブレアは、まだ埋まっている人がいるかもと穴を覗き込んだ。
「えっ? ……お、おいっ! みんな、ちょっと来てくれよ!」
すでにみんないるのに何を見つけたというのか。
ひどく慌てるブレアのところにみんな集まる。
「どうした?」
「こ、これは……」
「なになになににゃ?」
「ええっ!?」
穴を覗き込んだみんなが一人残らず驚いた。
「ん」
ブレアが覗き込んだ穴には人が埋まっていた。
白い髪をした頭にフワフワの白い毛のケモミミ、それに腰の辺りに見えるのはこれまたフワフワした尻尾が見えている。
しかも尻尾の数は五本。
「わぁ……でもかわいいにゃあ〜」
ただ助けてくれと手を伸ばすそれは、少女だった。


