「……おかしいな」
リザーセツがボソリと呟いた。
「何がですか?」
「キラービーは厄介な魔物だが、単体で見ればそれほど強いとも言えない。針も人にとっては致命的な威力があるけどあのミスリルリザードの体を貫けるほどのものじゃないんだ」
「キラービーではミスリルリザードに敵わないと?」
「……戦ってるのを見たことはないけどミスリルリザードも速さに優れた魔物だし、トカゲは虫を食う」
ミスリルリザードも数がいた。
棲家となれば必死に守るもので簡単に明け渡さない。
それがあっさりと明け渡して大移動をするなんてとても考えにくかった。
今改めてキラービーと戦ってもミスリルリザードの方がキラービーよりもそんなに劣っていると思えなかった。
「いや、ここで悩んでもしょうがないな」
リザーセツは頭を振って余計な考えを追い出す。
ここで今ミスリルリザードとのことを考えても仕方がない。
何が待ち受けているにしろ先に進む他確かめる手段はないし、今外に出ればキラービーに囲まれてしまう。
さらに進むリュードたち。
坑道の作りに特別なものなんてなく、他の鉱山と同じく長く奥へと道が続いている。
敵の出現パターンも鉱山の作りが同じようなもののためにバリエーションもなく、次から次へと奥からキラービーが押し寄せてくるだけであった。
何度も戦っていると冒険者たちも多少キラービーとの戦いに小慣れてくる。
体力の温存や回復のためにリュードやルフォンも交代で前に出て戦う。
リュードたちが戦うことに不安そうにしていたもう一つのパーティーもリュードとルフォンがそつなく戦いをこなし、ラストが矢でキラービーを仕留めていくと態度を改めた。
「ここは少し天井が高いな」
元々この鉱山の内部にはいくつか空洞となっている部分がある。
ドワーフもそうした空間を休憩所として利用していたのだけど、キラービーもそこでリュードたちを待ち受けていた。
「無理をせず針に気をつけて戦うんだ!」
空洞部分は坑道よりもはるかに広く、キラービーの機動力も多少は活かせる。
機動力を十分に活かせるほどの広さはないけどこれまでよりも速さを生かした戦いを繰り広げてきた。
キラービーとの戦いで優先すべきは針の毒を受けないこと。
時間がかかる戦い方にはなるけど回避や防御を確実に行い、針を受けないように気をつけて戦う。
「これだから毒持ちと戦うのはイヤなんだ」
冒険者の一人が舌打ちする。
時間はかかったけどケガ人もなく空洞に待ち受けていたキラービーを倒した。
道を魔法で一旦塞いで休憩所で休む。
キラービーの毒は強力で短い時間に死に至る。
危険であるのだが、生息域が限定されてメジャーな魔物じゃないので研究もされていない。
どれほどの量で危険でどれほどの時間で死に至るのかも不明。
解毒薬も現在はなく聖職者のダリルやユリディカに頼るしかない。
そうなると治療の間聖職者は無防備になり他の人の回復や強化が出来なくなる。
一人毒にやられると一気に崩れることも考えられる。
だからこそ完全に針を回避していくことが大切なのである。
けど常に気を張り完全にかわし続けるのは精神的にも疲れてしまう。
「しかしやるな、リュード!」
「ルフォンちゃんとラストちゃんもすごいじゃない!」
明るい会話をして気分でも上げるのは大事なことである。
疾風の剣とは別のパーティーの男性冒険者がリュードを褒め、女性冒険者がルフォンとラストのことを褒めた。
最初は不安だった三人の実力を目の当たりにしては認めざるを得ない。
自分たち、あるいはゴールド相当の実力がある疾風の剣と比べても何の遜色もない活躍をしている。
十分すぎるぐらいの戦力になっている。
戦いが楽になっていたし今後も期待できるので気分が少し軽くなる。
「ありがとうございます」
「この分ならキラービーの討伐もできるだろうな」
「リュード君たちの力は心強いな。このまま頼むよ」
休憩はするけど体を冷やしすぎてもまた戦いモードにするのが大変になる。
ほどほどの休憩で切り上げて先に進むために魔法で作った壁を壊すことにした。
「なっ、避けろ!」
一時的に作り出した壁なので崩すことも難しくはない。
壁を作った本人である魔法使いが魔法を解除して壁を崩した。
壁が崩れると同時にキラービーが飛び込んできた。
魔法使いは体をねじって回避しようとしたが、かわしきれなくてキラービーの針に腹部を貫かれた。
「ジョルジュ!」
「ダリル、治療を!」
リュードとリザーセツが走り出す。
リザーセツが大きく剣を振ってキラービーを追い払い、リュードがジョルジュを抱えて大きく後退する。
開いた道からキラービーが続々と入ってくる。
これは危険だとリュードはすぐさま坑道にまで下がってダリルの前にジョルジュを横たわらせる。
キラービーもわざわざ狭い坑道の方にまで追いかけてくるとはしないで休憩所の中に広がる。
リュードは力一杯ジョルジュの服を破く。
腹の傷口周辺はすでに黒ずんでいる。
ジョルジュはキラービーの毒に冒されていた。
「二人とも頼むぞ!」
ダリルとユリディカがジョルジュの治療を始めてリュードはキラービーとの戦いに走り出す。
ジョルジュを突き刺したキラービーは他のキラービーよりも一回りほど大きい個体だった。
威圧感があり、全体を俯瞰するように高い位置から見下ろしてくるその姿にリザーセツはこいつがキラービーのリーダーなのでないかと思った。
「僕がアイツを引きつける! みんなでキラービーを減らしてくれ!」
リザーセツが単体で大きなキラービーと戦って、その間に周りのキラービーの数を減らしていく。
俯瞰していた大キラービーはリザーセツが指示を出していることを見ていた。
知恵が少しあるキラービーはまず指示を出しているリザーセツを倒すべきだと考えた。
リザーセツは大キラービーを引きつけようと思い、大キラービーはリザーセツを倒そうと思った。
両者の思惑は一致した。
リザーセツがボソリと呟いた。
「何がですか?」
「キラービーは厄介な魔物だが、単体で見ればそれほど強いとも言えない。針も人にとっては致命的な威力があるけどあのミスリルリザードの体を貫けるほどのものじゃないんだ」
「キラービーではミスリルリザードに敵わないと?」
「……戦ってるのを見たことはないけどミスリルリザードも速さに優れた魔物だし、トカゲは虫を食う」
ミスリルリザードも数がいた。
棲家となれば必死に守るもので簡単に明け渡さない。
それがあっさりと明け渡して大移動をするなんてとても考えにくかった。
今改めてキラービーと戦ってもミスリルリザードの方がキラービーよりもそんなに劣っていると思えなかった。
「いや、ここで悩んでもしょうがないな」
リザーセツは頭を振って余計な考えを追い出す。
ここで今ミスリルリザードとのことを考えても仕方がない。
何が待ち受けているにしろ先に進む他確かめる手段はないし、今外に出ればキラービーに囲まれてしまう。
さらに進むリュードたち。
坑道の作りに特別なものなんてなく、他の鉱山と同じく長く奥へと道が続いている。
敵の出現パターンも鉱山の作りが同じようなもののためにバリエーションもなく、次から次へと奥からキラービーが押し寄せてくるだけであった。
何度も戦っていると冒険者たちも多少キラービーとの戦いに小慣れてくる。
体力の温存や回復のためにリュードやルフォンも交代で前に出て戦う。
リュードたちが戦うことに不安そうにしていたもう一つのパーティーもリュードとルフォンがそつなく戦いをこなし、ラストが矢でキラービーを仕留めていくと態度を改めた。
「ここは少し天井が高いな」
元々この鉱山の内部にはいくつか空洞となっている部分がある。
ドワーフもそうした空間を休憩所として利用していたのだけど、キラービーもそこでリュードたちを待ち受けていた。
「無理をせず針に気をつけて戦うんだ!」
空洞部分は坑道よりもはるかに広く、キラービーの機動力も多少は活かせる。
機動力を十分に活かせるほどの広さはないけどこれまでよりも速さを生かした戦いを繰り広げてきた。
キラービーとの戦いで優先すべきは針の毒を受けないこと。
時間がかかる戦い方にはなるけど回避や防御を確実に行い、針を受けないように気をつけて戦う。
「これだから毒持ちと戦うのはイヤなんだ」
冒険者の一人が舌打ちする。
時間はかかったけどケガ人もなく空洞に待ち受けていたキラービーを倒した。
道を魔法で一旦塞いで休憩所で休む。
キラービーの毒は強力で短い時間に死に至る。
危険であるのだが、生息域が限定されてメジャーな魔物じゃないので研究もされていない。
どれほどの量で危険でどれほどの時間で死に至るのかも不明。
解毒薬も現在はなく聖職者のダリルやユリディカに頼るしかない。
そうなると治療の間聖職者は無防備になり他の人の回復や強化が出来なくなる。
一人毒にやられると一気に崩れることも考えられる。
だからこそ完全に針を回避していくことが大切なのである。
けど常に気を張り完全にかわし続けるのは精神的にも疲れてしまう。
「しかしやるな、リュード!」
「ルフォンちゃんとラストちゃんもすごいじゃない!」
明るい会話をして気分でも上げるのは大事なことである。
疾風の剣とは別のパーティーの男性冒険者がリュードを褒め、女性冒険者がルフォンとラストのことを褒めた。
最初は不安だった三人の実力を目の当たりにしては認めざるを得ない。
自分たち、あるいはゴールド相当の実力がある疾風の剣と比べても何の遜色もない活躍をしている。
十分すぎるぐらいの戦力になっている。
戦いが楽になっていたし今後も期待できるので気分が少し軽くなる。
「ありがとうございます」
「この分ならキラービーの討伐もできるだろうな」
「リュード君たちの力は心強いな。このまま頼むよ」
休憩はするけど体を冷やしすぎてもまた戦いモードにするのが大変になる。
ほどほどの休憩で切り上げて先に進むために魔法で作った壁を壊すことにした。
「なっ、避けろ!」
一時的に作り出した壁なので崩すことも難しくはない。
壁を作った本人である魔法使いが魔法を解除して壁を崩した。
壁が崩れると同時にキラービーが飛び込んできた。
魔法使いは体をねじって回避しようとしたが、かわしきれなくてキラービーの針に腹部を貫かれた。
「ジョルジュ!」
「ダリル、治療を!」
リュードとリザーセツが走り出す。
リザーセツが大きく剣を振ってキラービーを追い払い、リュードがジョルジュを抱えて大きく後退する。
開いた道からキラービーが続々と入ってくる。
これは危険だとリュードはすぐさま坑道にまで下がってダリルの前にジョルジュを横たわらせる。
キラービーもわざわざ狭い坑道の方にまで追いかけてくるとはしないで休憩所の中に広がる。
リュードは力一杯ジョルジュの服を破く。
腹の傷口周辺はすでに黒ずんでいる。
ジョルジュはキラービーの毒に冒されていた。
「二人とも頼むぞ!」
ダリルとユリディカがジョルジュの治療を始めてリュードはキラービーとの戦いに走り出す。
ジョルジュを突き刺したキラービーは他のキラービーよりも一回りほど大きい個体だった。
威圧感があり、全体を俯瞰するように高い位置から見下ろしてくるその姿にリザーセツはこいつがキラービーのリーダーなのでないかと思った。
「僕がアイツを引きつける! みんなでキラービーを減らしてくれ!」
リザーセツが単体で大きなキラービーと戦って、その間に周りのキラービーの数を減らしていく。
俯瞰していた大キラービーはリザーセツが指示を出していることを見ていた。
知恵が少しあるキラービーはまず指示を出しているリザーセツを倒すべきだと考えた。
リザーセツは大キラービーを引きつけようと思い、大キラービーはリザーセツを倒そうと思った。
両者の思惑は一致した。


