「意外と明るいな」

 言われるがままに階段を降りてきた。
 階段にはところどころしか明かりがなくて薄暗く、足元がギリギリ見えるぐらいだったのだけど、下まで行くとそこそこの部屋があって思いの外明るくされていた。

 魔力で光る天然石の魔光石が天井に嵌め込まれていて明かりが確保されていたのである。

「おっと……俺が閉所恐怖症だったらどうするつもりだったんだ」

 ゴウンと音がして今降りてきた階段の出入り口が上から落ちてきた岩で塞がれる。
 どうやら逃すつもりのないことは分かった。

 帰り道は無くなった。
 しょうがないので部屋の中に目を向ける。

「ふーん……」

 見渡しても何かを見るほどの物も置いてはいない。
 小さなテーブルがあってその上に封筒があるのを見つけた。

 とりあえずすることもないし封筒を開いてみると中には手紙が入っていた。
 達筆な文字でツラツラと今後についてのことが書かれている。

 1つ前までは文字の読めない人にも配慮していたのに、と思ったら下の方にイラストも書いてあった。
 それで伝わるのか分からないが相手を倒して石を集めることは分かるぐらいのイラストである。

「なになに……そこ次のステージが始まるまでの控え室である……」

『そこは次のステージが始まるまでの控え室である。食料や寝具は置いてある物を好きに使ってくれてよい。次のステージが開始となったら扉が開く。次のステージでは各個人の腕輪につけられた石を10個集めることが次に進む条件である。または各場所に魔物を配置してあるのでそれを倒してもクリアとする。
 武器は1人につき1つ、こちらで用意させてもらった。なお、赤い宝石は石3つ分の価値がある。最後に、部屋の隅にある魔道具は破壊しないように。故意に壊した場合は失格とする。』

「なーんか情報量が多いな」

 整理するとまた殺し合いだとため息しか出てこない。
 腕輪についている石がそこらへんに落ちているはずがない。

 なので相手を倒して奪えというのだ。
 気絶させてもいいだろうけどきっと相手は殺すつもりでかかってくる。

 その上リュードが自分の手首につけられた腕輪見ると赤い宝石がつけられている。
 三人分の価値があるこの石が他の人に見つかれば標的になる。

「それで、武器は……これか。俺に与えられたのは槍ってことか」

 一人に一つ武器が与えられる。
 部屋の隅に立てかけられていたのは一本の長槍であった。
 
 希望も聞かれていないので各スタート地点にランダムで置いてあるのだろう。

「まあ悪くはないな」

 部屋の真ん中で槍を振り回してみる。
 安物だろうけど先もちゃんと切れるようになっていて、金属で柄も補強してあるやや重めな槍だ。
 
 基礎的な武器として槍の扱いも村では習っていた。
 得意武器とまではいかなかったが扱えない物じゃなく変な武器なんか渡されるよりはよっぽど良かったと言える。

 何回か槍を振るって感触を確かめ忘れていた槍の動作を思い出そうと体を動かしてみる。
 天井もそれなりに高いので地下の閉鎖空間にしてはちゃんと槍を振り回すスペースがあって助かった。
 
 それっぽくは動かすことはできるがやはりぎこちなさは抜けない。
 槍の動きに関して頭に思い浮かぶのはテユノの姿だった。
 
 テユノは短槍を扱うのでリュードの持つ普通サイズの長槍ではやや扱いが違うが、パッと思い出せるのがそれなのでテユノの闘う姿を参考にして槍を動かす。

「ふぅ……こんなもんか。あとはこれが例の魔道具か?」

 いつ次のステージが始まるのか分からないので体力は残しておかねばならない。
 食料があるのですぐに始まるとは思えないが程々のところで切り上げておく。

 槍を置いて部屋の別の隅に目を向ける。
 そこには変な物が置いてあった。

 これが手紙に書いてあった魔道具なことは一目して分かるがなんの魔道具なのかはよくわからない。
 第一印象で言えば亀のようだった。

 ラクダのコブを切り取ったかのような小さい小山に四つ足が生えているみたいな形をしている。
 子供ぐらいの大きさがあって中々存在感がある。

 コブの真ん中らへんには水晶みたいな物が嵌め込まれていて、変な魔道具である。
 不思議な魔道具もう発動していてリュードが動くと水晶が常にリュードの方を向くように動いていた。
 
 なんとなく見られているような気がして嫌な気分になる。
 落ち着かないリュードだったがまさしくこの魔道具はリュードを見ているのであり、この水晶を通した映像が映し出されることになるのだがリュードはそんなこと知る由もない。

 ただ今は第二ステージも始まっていないのでまだスクリーンも出ていない。
 どこに映し出されているのかと言うと、第一ステージでリュードのことを気に入った一部の方々がお金を払って個人的にリュードの姿を見ているのであった。

 見られているとも知らず槍を振っているリュードの姿はマダムたちに人気であった。
 割と人気が高くてリュードの姿をもっと見たいと要望があって亀のような魔道具は少し前に出る。

 しかし前に出てきたことをリュードが怪しんで食料が入っていた袋を魔道具に被せてしまった。
 壊したわけでもなく、注意もしに行けないのでマダムたちのリュード観覧はそこで終わった。

 噂を聞きつけたマダムがリュードを見ようとしていたのだがもう見れなくてガッカリとしていた。
 見れなくなる前にリュードを見ていたマダムはどんなだったのかを得意げに語っていたとかいないとか。