これはリュードが以前に甘いものが食べたくてチャンピオンのお願いで砂糖などを頼んだことがあった。
けれどリュードは特に前世でもあまりものを作ったりする人でもなければこの世界にはレシピもとりあえず混ぜて焼けばオッケー的なお手軽品もない。
うろ覚えの知識では甘い物の再現が上手くいかなかったところ、ルフォンに渡してみたらリュードのなんとなくの知識とルフォンの料理勘で作り上げてくれたのがパウンドケーキだった。
無論多少の失敗はあったけどリュードがやっていたら材料はかなり無駄になっていたかもしれないことを考えると失敗なんてないようなものだった。
リュードは勝手にシフォンケーキみたいな発音でルフォンケーキって呼んでいる。
以来材料も渡しちゃっているけどルフォンは決して好き勝手に使うこともない。
今回のケーキはベリー系の果物もふんだんに使ってあっていつものものより贅沢なものになっている。
ただしパウンドケーキもリュードは運ばれるままに口に入れて、ただただ口を動かして食べるだけだった。
非常に美味なので全く問題はないのだけどウォーケックがこのままだとフォークに刺殺されてしまいそうだ。
一通り食べ終えると最後に紅茶を持ってきてくれる。
こちらは村で作っているものではなく行商で手に入れたものだ。
しかし渡した砂糖が入れてあるのでほんのりと甘い。
ここら辺もリュード好みにしてある。
「すごく美味しかったよ」
「えへへぇ〜」
嬉しそうに笑うルフォンの頭を撫でてやるのはもはや習慣と言ってもいい。
ルフォンは撫でられて気持ちよく、リュードも実はルフォンの柔らかな髪と時折触れるふわふわとした耳が気持ちいい。
「また作って欲しかったら言ってね? 私リューちゃんのためならいつでも作るから」
リュードにしなだれるルフォンとの間に甘い空気が流れる。
ルフォンもいいお年頃なのだしリュードも正直そういうことを意識したりもする。
一つ言いたいのはご両親の目の前でこういうことはちょっと抑えてほしいかな、特にフォークを片手でひん曲げるような父親の前ではと思わざるをえない。
でもルフォンやテユノのような娘がいたらと考えると分からないでもない。
子を持ったことはないが変な男に騙されたらとか心配する気持ちは理解できる。
「……そうだな。ぜひまたお願いするよ」
もう食べられないだろうな、そうした思いは自分の胸の中にだけしまっておけばよいとリュードは目を細めた。
少しルフォンの家でのんびりとしたリュードは引き留めようとするルフォンをなだめて自分の家に帰る。
来たるべき時に備えて準備は必要なのだ。
でもその前に最優先にやらなきゃいけないことがある。
ルフォンの誕生日プレゼントの用意だ。
たまたま家にはメーリエッヒもヴェルデガーもいなかった。
さっさと自室に行って読みかけの本と石とかもらってきた失敗作のネックレスや工芸品なんかが入った箱を部屋にある小さいテーブルの上に置く。
今までは石を使っていたけど今度からは1つレベルを上げて魔物の牙を使ったネックレスにやってみようと思い、小さい魔物の牙を箱から取り出す。
日々鍛錬をしているリュードは魔力のコントロールだけならヴェルデガーにも負けないぐらい上手くなった。
「…………よし」
箱の中から一冊の本を取り出してテーブルの上に開く。
魔法というのは大雑把で雑でも使えるがちゃんと使おうと思うとしっかりとしたイメージが大事になる。
ただ火を出したいだけなら特にイメージしなくても火は出せる。
けれど燃え盛る火とか熱、魔法で作りたい形なんかイメージをしっかり持って魔法を使うことで威力が高まる。
「強化」
まずは魔法を使うための下準備。
左手に厚い皮の手袋をつけて牙を持ち、細工用の小さい刃が付いたナイフを持つ。
魔法でナイフを強化して魔物の牙に当てる。
少し力を込めると強化を施した刃が牙に食い込む。
皮の手袋していても力加減を間違えれば簡単にスパッと切ってしまいかねないので慎重に力を込める。
本を見ながら少しずつ牙を削っていく。
小さい牙だし複雑なことはできない。
リュード自身も本を見てようやくまねしているぐらいなので難しいことをするつもりはない。
集中して作業を進めて牙の表面に模様が刻まれる。
「ふう……こんなところかな」
まだ完ぺきとはいかないけれど何回もやっていれば慣れてくるものでかなり上達してきたとリュードは自分で思う。
結構うまくできていると内心自画自賛しながら窓から差し込む光に当てて最終確認をする。
「ここからが本番だ。集中集中……付与魔法・防御」
テーブルに置いた牙に手をかざして魔法を発動させる。
半透明の魔力が牙を包み、フワリと宙に浮く。
ネックレスが魔力を吸収するように周りの魔力が無くなっていき、やがて全ての魔力が牙に吸収されるとカタンと音を立てて牙がテーブルに落ちる。
見た目上は何か変わったようには見えない。
魔法の効果を確かめるために箱の中からハンマーを取り出して牙をハンマーで叩きつける。
「よしっ!」
ガインと何かにぶつかったように牙の寸前でハンマーが弾き返される。
牙は粉々にはならずリュードの手に反動の痺れが残っている。
けれどリュードは特に前世でもあまりものを作ったりする人でもなければこの世界にはレシピもとりあえず混ぜて焼けばオッケー的なお手軽品もない。
うろ覚えの知識では甘い物の再現が上手くいかなかったところ、ルフォンに渡してみたらリュードのなんとなくの知識とルフォンの料理勘で作り上げてくれたのがパウンドケーキだった。
無論多少の失敗はあったけどリュードがやっていたら材料はかなり無駄になっていたかもしれないことを考えると失敗なんてないようなものだった。
リュードは勝手にシフォンケーキみたいな発音でルフォンケーキって呼んでいる。
以来材料も渡しちゃっているけどルフォンは決して好き勝手に使うこともない。
今回のケーキはベリー系の果物もふんだんに使ってあっていつものものより贅沢なものになっている。
ただしパウンドケーキもリュードは運ばれるままに口に入れて、ただただ口を動かして食べるだけだった。
非常に美味なので全く問題はないのだけどウォーケックがこのままだとフォークに刺殺されてしまいそうだ。
一通り食べ終えると最後に紅茶を持ってきてくれる。
こちらは村で作っているものではなく行商で手に入れたものだ。
しかし渡した砂糖が入れてあるのでほんのりと甘い。
ここら辺もリュード好みにしてある。
「すごく美味しかったよ」
「えへへぇ〜」
嬉しそうに笑うルフォンの頭を撫でてやるのはもはや習慣と言ってもいい。
ルフォンは撫でられて気持ちよく、リュードも実はルフォンの柔らかな髪と時折触れるふわふわとした耳が気持ちいい。
「また作って欲しかったら言ってね? 私リューちゃんのためならいつでも作るから」
リュードにしなだれるルフォンとの間に甘い空気が流れる。
ルフォンもいいお年頃なのだしリュードも正直そういうことを意識したりもする。
一つ言いたいのはご両親の目の前でこういうことはちょっと抑えてほしいかな、特にフォークを片手でひん曲げるような父親の前ではと思わざるをえない。
でもルフォンやテユノのような娘がいたらと考えると分からないでもない。
子を持ったことはないが変な男に騙されたらとか心配する気持ちは理解できる。
「……そうだな。ぜひまたお願いするよ」
もう食べられないだろうな、そうした思いは自分の胸の中にだけしまっておけばよいとリュードは目を細めた。
少しルフォンの家でのんびりとしたリュードは引き留めようとするルフォンをなだめて自分の家に帰る。
来たるべき時に備えて準備は必要なのだ。
でもその前に最優先にやらなきゃいけないことがある。
ルフォンの誕生日プレゼントの用意だ。
たまたま家にはメーリエッヒもヴェルデガーもいなかった。
さっさと自室に行って読みかけの本と石とかもらってきた失敗作のネックレスや工芸品なんかが入った箱を部屋にある小さいテーブルの上に置く。
今までは石を使っていたけど今度からは1つレベルを上げて魔物の牙を使ったネックレスにやってみようと思い、小さい魔物の牙を箱から取り出す。
日々鍛錬をしているリュードは魔力のコントロールだけならヴェルデガーにも負けないぐらい上手くなった。
「…………よし」
箱の中から一冊の本を取り出してテーブルの上に開く。
魔法というのは大雑把で雑でも使えるがちゃんと使おうと思うとしっかりとしたイメージが大事になる。
ただ火を出したいだけなら特にイメージしなくても火は出せる。
けれど燃え盛る火とか熱、魔法で作りたい形なんかイメージをしっかり持って魔法を使うことで威力が高まる。
「強化」
まずは魔法を使うための下準備。
左手に厚い皮の手袋をつけて牙を持ち、細工用の小さい刃が付いたナイフを持つ。
魔法でナイフを強化して魔物の牙に当てる。
少し力を込めると強化を施した刃が牙に食い込む。
皮の手袋していても力加減を間違えれば簡単にスパッと切ってしまいかねないので慎重に力を込める。
本を見ながら少しずつ牙を削っていく。
小さい牙だし複雑なことはできない。
リュード自身も本を見てようやくまねしているぐらいなので難しいことをするつもりはない。
集中して作業を進めて牙の表面に模様が刻まれる。
「ふう……こんなところかな」
まだ完ぺきとはいかないけれど何回もやっていれば慣れてくるものでかなり上達してきたとリュードは自分で思う。
結構うまくできていると内心自画自賛しながら窓から差し込む光に当てて最終確認をする。
「ここからが本番だ。集中集中……付与魔法・防御」
テーブルに置いた牙に手をかざして魔法を発動させる。
半透明の魔力が牙を包み、フワリと宙に浮く。
ネックレスが魔力を吸収するように周りの魔力が無くなっていき、やがて全ての魔力が牙に吸収されるとカタンと音を立てて牙がテーブルに落ちる。
見た目上は何か変わったようには見えない。
魔法の効果を確かめるために箱の中からハンマーを取り出して牙をハンマーで叩きつける。
「よしっ!」
ガインと何かにぶつかったように牙の寸前でハンマーが弾き返される。
牙は粉々にはならずリュードの手に反動の痺れが残っている。