お手伝いができるとルフォンはやる気を見せていたのだけど、残念なことに好戦的な魔物はいなかった。
頭に小さなツノの生えたウサギとか飛べるのかも分からないサイズの羽があるシカとかそんなのはいた。
けれど人の気配を感じるとさっさと逃げてしまって戦いにはならなかったのである。
若干見た目に違いはあっても動物レベルの魔物も存在するのだ。
戦わなくていいのはいいことなのだが、せっかくルフォンが出したやる気も発揮される場面がないので少しつまらなそうにしていた。
「そろそろだな」
歩いていると段々と水音が聞こえてきて目的地が近づいてきていた。
結局ルフォンの出番は訪れないまま湖に到着してしまった。
「ここからはより慎重に行くぞ」
村の人々の話によるとミノタウロスは湖周辺での目撃情報が多かった。
村で軽く地図を見せてもらった湖は半分が森、もう半分が草原に囲まれるような形になっていた。
リュードたちは森側の方から湖に接近している。
「あっ、いた……」
ばったり出くわすことだけは避けたいと思って森から隠れるように湖を見渡すとすぐにミノタウロスを見つけられた。
タイミングが良く、ミノタウロスは湖に顔をつけて水を飲んでいるところだった。
森に溶け込む見た目でもないので見れば簡単にミノタウロスだと分かる。
下級と聞いていたミノタウロスは体格的にはリュードより一回りほど大きいぐらいであった。
下手するとリュードがいた村の村長の方が大きかったかもしれない。
下級だけあってデカいはデカいのだがミノタウロスにしては小さい方である。
「うーん、なんかおかしいな」
「そだね、あの子腕がないね」
「あ、なるほど……」
ミノタウロスに違和感を感じたリュード。
その正体が分からないでいたけれどラストの言葉を受けて違和感の正体に気づいた。
ミノタウロスの片腕がない。
湖の縁に手をかけて顔を水に突っ込んでいるのだけれどよくよく見ると右手しかついていない。
左腕の肩から先が綺麗になくなっているのだ。
「なんかツノの先もなくない?」
「足も引きずってるね」
水を飲み終えて移動を始めるミノタウロスは頭に生えた2本のツノのうち、左側のツノの先が欠けている。
さらにミノタウロスは歩く時に足を引きずっていて、動きもどこかをかばっているように見えた。
異様なミノタウロスの状態にリュードは目を細める。
なぜこんなところにミノタウロスが現れたのかが分かった。
あのミノタウロスは負けたのだと考えた。
相手が何であるのかまでは知らないけれどミノタウロスは何かに負けて、そしてここまで逃げてきた。
腕を切り落とされたりツノを欠けされられたりしてどこからか流れてきたのだろう。
「ナワバリか? それとも冒険者に見つかったのかもしれないな」
ナワバリ争いが起きて戦ったとも考えられるけどミノタウロスなら冒険者に追われたとも考えられる。
家庭はどうであれ、ミノタウロスはこんなところにいる理由は納得ができた。
「……手負いの獣か」
ミノタウロスがケガを負っている。
このことはリュードたちに取って幸運と言える。
片腕もなく足も引きずるぐらいのダメージを負っているミノタウロスは本来の強さに遠く及ばない。
当初考えていた難しさよりもずっと戦うことが楽になった。
けれどミノタウロスはリュードの言った通り手負いの状態である。
追い詰められた相手はなりふり構わず激しい抵抗を見せることがある。
油断するとミノタウロスの命がけの反撃に危険な目にあうかもしれない。
「どうする?」
「やるなら今が1番いいだろうな。……だけど正面から行くしかないか」
ケガを負っている今がチャンス。
こうなると逃げられることが最も面倒なので、湖の近くで逃げるところが制限されているこの場所で戦うことも望ましい。
ただ今は湖に背を向けてミノタウロスが立っている。
森は湖から少し離れたところまでしかないので湖周りは視界が開けている。
ミノタウロスの両目が潰れでもしていない限りは接近するまでに見つかってしまう。
「いける?」
「やってみようか。片腕ならミノタウロスにも力負けしないかもしれないしな。俺がどうにか隙を作るから1発頼むぞ」
「任せて」
でもやるしかない。
足を引きずっているなら機動力はないはずなので危なそうなら逃げればいいと考えて戦ってみることにした。
ミノタウロスはケガのために体を動かすのが辛いのか湖近くでボーッとしている。
リュードたちはミノタウロスにバレないように出来る限り接近する。
「それじゃ行くぞ」
剣を抜いたリュードが大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
「ケガしないでね」
「ああ、さっさと終わらせて無事に帰るぞ!」
両足に力を込めて一気に走り出す。
かけてくるリュードに気づいて力無い目をしていたミノタウロスに生気が戻ってくる。
腕はないけれどミノタウロスは武器まで持っていた。
戦闘用のバトルアックス。
ところどころ錆び付いていて、刃は鋭さを失って丸みを帯びている。
それを見るにおそらく過去に冒険者から奪ったものでだいぶ使い込んでいる武器だろうとリュードは思った。
切れ味なんてものがなさそうなバトルアックスは切るというよりも押し潰してちぎるような感じなので当たったらとんでもなく痛い。
接近したリュードが剣を下から思いっきり振り上げる。
ミノタウロスはリュードに向かってバトルアックスを振り下ろす。
リュードの剣とミノタウロスのバトルアックスがぶつかり合う。
頭に小さなツノの生えたウサギとか飛べるのかも分からないサイズの羽があるシカとかそんなのはいた。
けれど人の気配を感じるとさっさと逃げてしまって戦いにはならなかったのである。
若干見た目に違いはあっても動物レベルの魔物も存在するのだ。
戦わなくていいのはいいことなのだが、せっかくルフォンが出したやる気も発揮される場面がないので少しつまらなそうにしていた。
「そろそろだな」
歩いていると段々と水音が聞こえてきて目的地が近づいてきていた。
結局ルフォンの出番は訪れないまま湖に到着してしまった。
「ここからはより慎重に行くぞ」
村の人々の話によるとミノタウロスは湖周辺での目撃情報が多かった。
村で軽く地図を見せてもらった湖は半分が森、もう半分が草原に囲まれるような形になっていた。
リュードたちは森側の方から湖に接近している。
「あっ、いた……」
ばったり出くわすことだけは避けたいと思って森から隠れるように湖を見渡すとすぐにミノタウロスを見つけられた。
タイミングが良く、ミノタウロスは湖に顔をつけて水を飲んでいるところだった。
森に溶け込む見た目でもないので見れば簡単にミノタウロスだと分かる。
下級と聞いていたミノタウロスは体格的にはリュードより一回りほど大きいぐらいであった。
下手するとリュードがいた村の村長の方が大きかったかもしれない。
下級だけあってデカいはデカいのだがミノタウロスにしては小さい方である。
「うーん、なんかおかしいな」
「そだね、あの子腕がないね」
「あ、なるほど……」
ミノタウロスに違和感を感じたリュード。
その正体が分からないでいたけれどラストの言葉を受けて違和感の正体に気づいた。
ミノタウロスの片腕がない。
湖の縁に手をかけて顔を水に突っ込んでいるのだけれどよくよく見ると右手しかついていない。
左腕の肩から先が綺麗になくなっているのだ。
「なんかツノの先もなくない?」
「足も引きずってるね」
水を飲み終えて移動を始めるミノタウロスは頭に生えた2本のツノのうち、左側のツノの先が欠けている。
さらにミノタウロスは歩く時に足を引きずっていて、動きもどこかをかばっているように見えた。
異様なミノタウロスの状態にリュードは目を細める。
なぜこんなところにミノタウロスが現れたのかが分かった。
あのミノタウロスは負けたのだと考えた。
相手が何であるのかまでは知らないけれどミノタウロスは何かに負けて、そしてここまで逃げてきた。
腕を切り落とされたりツノを欠けされられたりしてどこからか流れてきたのだろう。
「ナワバリか? それとも冒険者に見つかったのかもしれないな」
ナワバリ争いが起きて戦ったとも考えられるけどミノタウロスなら冒険者に追われたとも考えられる。
家庭はどうであれ、ミノタウロスはこんなところにいる理由は納得ができた。
「……手負いの獣か」
ミノタウロスがケガを負っている。
このことはリュードたちに取って幸運と言える。
片腕もなく足も引きずるぐらいのダメージを負っているミノタウロスは本来の強さに遠く及ばない。
当初考えていた難しさよりもずっと戦うことが楽になった。
けれどミノタウロスはリュードの言った通り手負いの状態である。
追い詰められた相手はなりふり構わず激しい抵抗を見せることがある。
油断するとミノタウロスの命がけの反撃に危険な目にあうかもしれない。
「どうする?」
「やるなら今が1番いいだろうな。……だけど正面から行くしかないか」
ケガを負っている今がチャンス。
こうなると逃げられることが最も面倒なので、湖の近くで逃げるところが制限されているこの場所で戦うことも望ましい。
ただ今は湖に背を向けてミノタウロスが立っている。
森は湖から少し離れたところまでしかないので湖周りは視界が開けている。
ミノタウロスの両目が潰れでもしていない限りは接近するまでに見つかってしまう。
「いける?」
「やってみようか。片腕ならミノタウロスにも力負けしないかもしれないしな。俺がどうにか隙を作るから1発頼むぞ」
「任せて」
でもやるしかない。
足を引きずっているなら機動力はないはずなので危なそうなら逃げればいいと考えて戦ってみることにした。
ミノタウロスはケガのために体を動かすのが辛いのか湖近くでボーッとしている。
リュードたちはミノタウロスにバレないように出来る限り接近する。
「それじゃ行くぞ」
剣を抜いたリュードが大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
「ケガしないでね」
「ああ、さっさと終わらせて無事に帰るぞ!」
両足に力を込めて一気に走り出す。
かけてくるリュードに気づいて力無い目をしていたミノタウロスに生気が戻ってくる。
腕はないけれどミノタウロスは武器まで持っていた。
戦闘用のバトルアックス。
ところどころ錆び付いていて、刃は鋭さを失って丸みを帯びている。
それを見るにおそらく過去に冒険者から奪ったものでだいぶ使い込んでいる武器だろうとリュードは思った。
切れ味なんてものがなさそうなバトルアックスは切るというよりも押し潰してちぎるような感じなので当たったらとんでもなく痛い。
接近したリュードが剣を下から思いっきり振り上げる。
ミノタウロスはリュードに向かってバトルアックスを振り下ろす。
リュードの剣とミノタウロスのバトルアックスがぶつかり合う。