「どうにもあなたの差し金ではないようですが、あれが何か知っていますか?」
山賊のリーダーが見上げると洞窟の天井に巨大なクモがいた。
ヴィッツが山賊のリーダーを蹴り飛ばさなかったら地面のように溶けてしまっていただろう。
サッと山賊のリーダーの顔から血の気がひく。
「も、もうこんな時期だったか……」
「ほら、おじさん立って!」
地面にへたったままではいい的になってしまう。
死んだところで構いはしないけれど気分はよろしくない。
ルフォンが引っ張るようにして山賊のリーダーを立たせる。
「それであれはなんですか?」
「ここにあるイェミェンを時々食いに来ていた奴だ。いつもは外に刈り取ったイェミェン置いとけばそれ食って満足して帰っていくんだけど……来る時期なのを忘れていた。いや、いつもよりちょっと来るのが早いかもしれないな」
「なるほど。こんな強力な溶解液を放つ魔物何かと思いましたがこれがイェミェンの効果なのでしょう」
地面が溶けるほど強力な溶解液を持つ魔物の種類は多くない。
どうやらこのクモは元々溶解液を持つタイプの魔物であるが、イェミェンを摂取して溶解液を強化しているのだろうとヴィッツは推測した。
これまではとりあえずイェミェンがあったからそれでよかったけれど自分の領域であるところに人間がいるとクモは怒っていた。
「ひとまずここから出て戦いたいですね」
低い鳴き声で威嚇するようなクモとヴィッツは睨み合う。
それなりの広さがあるとはいえ洞窟の中ではやはり行動が制限される。
地面一面はイェミェンであるし洞窟の中で戦うことは危険が伴う。
外に出て広い場所で戦う方が戦いやすくリスクも少ない。
「ヴィッツさん先に出て! 私の方がすぐに出られるから」
入り口は狭くてヴィッツでも素早く抜けるのは難しい。
出るのをもたつけば危ない。
ルフォンは細いのでヴィッツよりはスムーズに洞窟を抜け出すことが出来るので、ルフォンがクモと対峙してその間にヴィッツに先に出てもらう。
「分かりました」
この短い時間でもルフォンが非常に優秀な強い人であることはヴィッツも分かっている。
ここは一度ルフォンに任せてみることにした。
「降りてこーい!」
ルフォンの言葉が通じたわけではないがクモが降りてくる。
もうイェミェンは取ったから見逃してくれるならその方がいいけれど、どうにもクモにそのつもりはないようだ。
降りてきて間近で見るとクモは結構デカかった。
人ほどの大きさがあり、威嚇するような音を出している。
クモはまずルフォンを狙った。
3人の中で1番小柄ですぐに倒せそうだと思ったからである。
一瞬でルフォンに接近してみせると1番前の足2本を使ってルフォンに攻撃を繰り出す。
ルフォンがナイフで防ぐと金属がぶつかり合うにも近い音がした。
見たよりも足の硬さと鋭さが高く、生身で受けるには危険だとルフォンは察した。
力も強く正面から受け切ることはルフォンには難しかった。
力が入りにくく短いナイフで力強い相手の攻撃をしっかりと受けることはやってはいけない。
素早く繰り出される2本足の攻撃をルフォンは受け流し、そして回避する。
その間にヴィッツが洞窟を抜け出し、続いて山賊のリーダーも逃げる。
「近くで隠れていなさい。勝手に逃げたら追いかけて私があなたにとどめを刺しますから」
「わ、分かりました……」
「ルフォン様、こちらは脱出しました!」
「分かった!」
そう返事はしても中々難しい。
クモの攻撃は激しく、移動速度はクモのほうが速い。
入り口に引っかかりでもしたらルフォンは一転ピンチに陥ってしまう。
焦らないことが大事だとルフォンは相手の攻撃を観察する。。
ルフォンは冷静にクモの攻撃をかわしながらそこに一定のリズムを見出していた。
(上、下、下、横……)
基本的には左右の足を交互で上や下、横から足を振ってくるのだけど、同じく繰り返される攻撃があることに気づいた。
「はっ!」
リズムの隙を縫ってルフォンがナイフで反撃する。
「浅い……けど十分」
浅く切り付けられてクモがのけぞる。
クモなどの虫系の柔らかい魔物は攻撃を受けるとほとんどの場合死に直結するので攻撃そのものをくらう経験が少ない。
なので痛みに弱く、浅い切り傷でも大きく怯む。
ルフォンはその隙に後退して洞窟の入り口に走る。
「ルフォン様!」
クモはすぐに立ち直ると走るルフォンの背中に向かって溶解液を吐きかける。
「ヴィッツさん、どいて!」
ルフォンは飛び込むように入り口に突入してそのまま抜けてくる。
溶解液のかかった洞窟の入り口が溶けていき、当たれば危なかったとルフォンはホッとする。
ルフォンを追いかけてクモも洞窟から出てくる。
「私もボーッと見ているだけではありませんぞ」
ヴィッツが剣に魔力をまとい、魔力が赤い炎へと変わる。
得意属性が炎であるヴィッツが魔法剣を発動させた。
洞窟と違って天井に行くことはできないので出てくるとなれば地面に行くしかない。
クモの着地に合わせて距離を詰めたヴィッツが剣を振り抜く。
足で剣を防ごうとするけれど所詮は虫の足。
硬さにも限度というものがあり、生身の肉体には火属性はよく効く。
ヴィッツの剣はスッパリとクモの足を切断した。
クモは悲鳴のような鳴き声を上げる。
山賊のリーダーが見上げると洞窟の天井に巨大なクモがいた。
ヴィッツが山賊のリーダーを蹴り飛ばさなかったら地面のように溶けてしまっていただろう。
サッと山賊のリーダーの顔から血の気がひく。
「も、もうこんな時期だったか……」
「ほら、おじさん立って!」
地面にへたったままではいい的になってしまう。
死んだところで構いはしないけれど気分はよろしくない。
ルフォンが引っ張るようにして山賊のリーダーを立たせる。
「それであれはなんですか?」
「ここにあるイェミェンを時々食いに来ていた奴だ。いつもは外に刈り取ったイェミェン置いとけばそれ食って満足して帰っていくんだけど……来る時期なのを忘れていた。いや、いつもよりちょっと来るのが早いかもしれないな」
「なるほど。こんな強力な溶解液を放つ魔物何かと思いましたがこれがイェミェンの効果なのでしょう」
地面が溶けるほど強力な溶解液を持つ魔物の種類は多くない。
どうやらこのクモは元々溶解液を持つタイプの魔物であるが、イェミェンを摂取して溶解液を強化しているのだろうとヴィッツは推測した。
これまではとりあえずイェミェンがあったからそれでよかったけれど自分の領域であるところに人間がいるとクモは怒っていた。
「ひとまずここから出て戦いたいですね」
低い鳴き声で威嚇するようなクモとヴィッツは睨み合う。
それなりの広さがあるとはいえ洞窟の中ではやはり行動が制限される。
地面一面はイェミェンであるし洞窟の中で戦うことは危険が伴う。
外に出て広い場所で戦う方が戦いやすくリスクも少ない。
「ヴィッツさん先に出て! 私の方がすぐに出られるから」
入り口は狭くてヴィッツでも素早く抜けるのは難しい。
出るのをもたつけば危ない。
ルフォンは細いのでヴィッツよりはスムーズに洞窟を抜け出すことが出来るので、ルフォンがクモと対峙してその間にヴィッツに先に出てもらう。
「分かりました」
この短い時間でもルフォンが非常に優秀な強い人であることはヴィッツも分かっている。
ここは一度ルフォンに任せてみることにした。
「降りてこーい!」
ルフォンの言葉が通じたわけではないがクモが降りてくる。
もうイェミェンは取ったから見逃してくれるならその方がいいけれど、どうにもクモにそのつもりはないようだ。
降りてきて間近で見るとクモは結構デカかった。
人ほどの大きさがあり、威嚇するような音を出している。
クモはまずルフォンを狙った。
3人の中で1番小柄ですぐに倒せそうだと思ったからである。
一瞬でルフォンに接近してみせると1番前の足2本を使ってルフォンに攻撃を繰り出す。
ルフォンがナイフで防ぐと金属がぶつかり合うにも近い音がした。
見たよりも足の硬さと鋭さが高く、生身で受けるには危険だとルフォンは察した。
力も強く正面から受け切ることはルフォンには難しかった。
力が入りにくく短いナイフで力強い相手の攻撃をしっかりと受けることはやってはいけない。
素早く繰り出される2本足の攻撃をルフォンは受け流し、そして回避する。
その間にヴィッツが洞窟を抜け出し、続いて山賊のリーダーも逃げる。
「近くで隠れていなさい。勝手に逃げたら追いかけて私があなたにとどめを刺しますから」
「わ、分かりました……」
「ルフォン様、こちらは脱出しました!」
「分かった!」
そう返事はしても中々難しい。
クモの攻撃は激しく、移動速度はクモのほうが速い。
入り口に引っかかりでもしたらルフォンは一転ピンチに陥ってしまう。
焦らないことが大事だとルフォンは相手の攻撃を観察する。。
ルフォンは冷静にクモの攻撃をかわしながらそこに一定のリズムを見出していた。
(上、下、下、横……)
基本的には左右の足を交互で上や下、横から足を振ってくるのだけど、同じく繰り返される攻撃があることに気づいた。
「はっ!」
リズムの隙を縫ってルフォンがナイフで反撃する。
「浅い……けど十分」
浅く切り付けられてクモがのけぞる。
クモなどの虫系の柔らかい魔物は攻撃を受けるとほとんどの場合死に直結するので攻撃そのものをくらう経験が少ない。
なので痛みに弱く、浅い切り傷でも大きく怯む。
ルフォンはその隙に後退して洞窟の入り口に走る。
「ルフォン様!」
クモはすぐに立ち直ると走るルフォンの背中に向かって溶解液を吐きかける。
「ヴィッツさん、どいて!」
ルフォンは飛び込むように入り口に突入してそのまま抜けてくる。
溶解液のかかった洞窟の入り口が溶けていき、当たれば危なかったとルフォンはホッとする。
ルフォンを追いかけてクモも洞窟から出てくる。
「私もボーッと見ているだけではありませんぞ」
ヴィッツが剣に魔力をまとい、魔力が赤い炎へと変わる。
得意属性が炎であるヴィッツが魔法剣を発動させた。
洞窟と違って天井に行くことはできないので出てくるとなれば地面に行くしかない。
クモの着地に合わせて距離を詰めたヴィッツが剣を振り抜く。
足で剣を防ごうとするけれど所詮は虫の足。
硬さにも限度というものがあり、生身の肉体には火属性はよく効く。
ヴィッツの剣はスッパリとクモの足を切断した。
クモは悲鳴のような鳴き声を上げる。