「よく来たね、可愛い妹よ」
プジャンに会ってみてリュードが抱いた第一印象は胡散臭そうな奴というものだった。
会う前から良くない印象を持っていたから実際に会ったとしても良い印象を抱くことがない。
血人族に特有の真っ白な髪に開いているのかもわからないほど細い目をしていて、ウソっぽい薄い笑顔を浮かべている。
体を使うというよりは権謀術数に長けて頭を使う方が得意そうに見える信用ならなそうな男がサキュロプジャンであった。
「中々試練大変そうじゃないか。可愛い妹が試練を攻略できないんじゃないかと日々心配しているよ」
モノランを利用した暗殺計画は失敗に終わった。
おそらく首謀者であるはずなのに、プジャンは動揺した様子もなく挨拶に来たラスト一行を受け入れた。
「ご心配をありがとうございます、プジャンお兄様」
ラストたちはプジャンに会いに来ていた。
特に会いたい相手ではないどころか、会いたくなくてぶん殴りたいぐらいの相手であるけれど会いに来なきゃいけない理由がある。
ラストもプジャンも大領主という立場であるがために形式上挨拶をしに来たのだ。
顔を見なくて済むならその方が良いのであるが、どんな些細なことでも無理を言って批判してくる可能性もあるので無難に挨拶だけでも交わしておく必要があった。
モノランのこともあったしラストの中でもプジャンに対する印象は最悪だったけれどそこはここまでうまく世渡りしてきた経験がある。
普通に笑顔を浮かべて軽く挨拶を交わし、大人の試練のために領内に立ち寄ったことをラストが報告した。
プジャンはそれを許可して終わる、全くもって無駄な表面上だけの会話。
けれどこの会話で批判の種を潰しておけるのなら安いものである。
「どうだい、泊まるところが決まっていないなら僕のところに泊まっていくかい?」
「お気遣いどうもありがとうございます。泊まるところならもうありますので今回は遠慮しておきます」
口ではこう言うが泊まらせるつもりもない提案だった。
ラストも泊まるつもりなんてなく、断ってもプジャンは不快にすら思わない。
泊まると言った方がプジャンにとっては驚きで不快に感じるだろう。
宿泊の提案も礼儀みたいなものであるだけで正面から受け取ってはいけないのである。
泊まれば何をされるか分かったものでないので泊まったことなど一度もなかった。
「そうかい、残念だ。またあの人のところに立ち寄るのかな? 会ったらよろしく伝えておいてくれ」
「分かりました。それでは失礼します」
玄関先で少し言葉を交わす程度がラストとプジャンの仲である。
さっさとこんなところ出て行きたいとラストは内心でため息をついた。
「いかにも、な奴だったな」
プジャンの屋敷の門を出てリュードがポツリとつぶやく。
事前に聞いていた話の影響もあるのだけど、実際に会ってみても詐欺師みたいな雰囲気をまとっているリュードがあまり好きではないタイプの人間だった。
非常に信用できない感じの強い男で仮にラストのことがなくても友達にはなれそうになかった。
「それで次にどこに?」
宿は決まっていないが宿を探しに行くのではないことは分かっている。
どこへ行くかも大体分かっている。
泊まっているところが決まっているというのは単に角の立たない断り方をしただけ。
プジャンのところに泊まるのは嫌ですなんてのはマナーとして口に出せない。
「……ずっと話に出ていました、クゼナのところに行こう」
「クゼナはプジャンの屋敷に幽閉されているわけでもないんだな?」
「流石に年頃の若い女性を自分の屋敷にとどめおくことはプジャン兄さんでもできなかったんだ。今でも隙あらば手元に置こうとは狙っているようだけどね」
「なるほどな」
「一応クゼナの屋敷に泊まらせてもらおうとは考えてるよ」
「俺たちも泊まっていいのか?」
「もちろん、といいたいけど一応屋敷の主人はクゼナだから聞いてからだね」
プジャンの屋敷の程近く、そんなに歩かなくてもいい距離にクゼナの屋敷はあった。
直接同じ屋根の下には置くことができなかったが、何かあれば飛んで来れるぐらいの距離には置いておくことが出来た。
クゼナはプジャンの病気の進行を遅らせる薬が必要になるし、プジャンはクゼナを監視下に置いておきたい。
結果としてそれなりに近い距離にクゼナも留まることになった。
監禁したり雑に扱っているわけではない。
他から何か非難されるようなことはプジャンはせず、クゼナがいる屋敷もプジャンが用意したものだけど古い感じはしているが綺麗にされていた。
近づくラストに気づいて、門の前に立っている若い兵が中に入っていく。
声をかけられるほど近づいた時には門は開いていて、若い兵は嬉しそうな顔をしてラストを出迎えてくれた。
非常にウェルカムな雰囲気でプジャンの屋敷の時は全然違う。
「お久しぶりです、お嬢様!」
「久しぶりね、ケイド」
声をかけるまでもなく、かなり遠目からの顔パス。
プジャンの時はリュードとラストの関係を怪しまれて問いただされた。
こちらはラストと一緒なだけで信頼があるのか何も聞かれることなく深いお辞儀で通してくれる。
プジャンに会ってみてリュードが抱いた第一印象は胡散臭そうな奴というものだった。
会う前から良くない印象を持っていたから実際に会ったとしても良い印象を抱くことがない。
血人族に特有の真っ白な髪に開いているのかもわからないほど細い目をしていて、ウソっぽい薄い笑顔を浮かべている。
体を使うというよりは権謀術数に長けて頭を使う方が得意そうに見える信用ならなそうな男がサキュロプジャンであった。
「中々試練大変そうじゃないか。可愛い妹が試練を攻略できないんじゃないかと日々心配しているよ」
モノランを利用した暗殺計画は失敗に終わった。
おそらく首謀者であるはずなのに、プジャンは動揺した様子もなく挨拶に来たラスト一行を受け入れた。
「ご心配をありがとうございます、プジャンお兄様」
ラストたちはプジャンに会いに来ていた。
特に会いたい相手ではないどころか、会いたくなくてぶん殴りたいぐらいの相手であるけれど会いに来なきゃいけない理由がある。
ラストもプジャンも大領主という立場であるがために形式上挨拶をしに来たのだ。
顔を見なくて済むならその方が良いのであるが、どんな些細なことでも無理を言って批判してくる可能性もあるので無難に挨拶だけでも交わしておく必要があった。
モノランのこともあったしラストの中でもプジャンに対する印象は最悪だったけれどそこはここまでうまく世渡りしてきた経験がある。
普通に笑顔を浮かべて軽く挨拶を交わし、大人の試練のために領内に立ち寄ったことをラストが報告した。
プジャンはそれを許可して終わる、全くもって無駄な表面上だけの会話。
けれどこの会話で批判の種を潰しておけるのなら安いものである。
「どうだい、泊まるところが決まっていないなら僕のところに泊まっていくかい?」
「お気遣いどうもありがとうございます。泊まるところならもうありますので今回は遠慮しておきます」
口ではこう言うが泊まらせるつもりもない提案だった。
ラストも泊まるつもりなんてなく、断ってもプジャンは不快にすら思わない。
泊まると言った方がプジャンにとっては驚きで不快に感じるだろう。
宿泊の提案も礼儀みたいなものであるだけで正面から受け取ってはいけないのである。
泊まれば何をされるか分かったものでないので泊まったことなど一度もなかった。
「そうかい、残念だ。またあの人のところに立ち寄るのかな? 会ったらよろしく伝えておいてくれ」
「分かりました。それでは失礼します」
玄関先で少し言葉を交わす程度がラストとプジャンの仲である。
さっさとこんなところ出て行きたいとラストは内心でため息をついた。
「いかにも、な奴だったな」
プジャンの屋敷の門を出てリュードがポツリとつぶやく。
事前に聞いていた話の影響もあるのだけど、実際に会ってみても詐欺師みたいな雰囲気をまとっているリュードがあまり好きではないタイプの人間だった。
非常に信用できない感じの強い男で仮にラストのことがなくても友達にはなれそうになかった。
「それで次にどこに?」
宿は決まっていないが宿を探しに行くのではないことは分かっている。
どこへ行くかも大体分かっている。
泊まっているところが決まっているというのは単に角の立たない断り方をしただけ。
プジャンのところに泊まるのは嫌ですなんてのはマナーとして口に出せない。
「……ずっと話に出ていました、クゼナのところに行こう」
「クゼナはプジャンの屋敷に幽閉されているわけでもないんだな?」
「流石に年頃の若い女性を自分の屋敷にとどめおくことはプジャン兄さんでもできなかったんだ。今でも隙あらば手元に置こうとは狙っているようだけどね」
「なるほどな」
「一応クゼナの屋敷に泊まらせてもらおうとは考えてるよ」
「俺たちも泊まっていいのか?」
「もちろん、といいたいけど一応屋敷の主人はクゼナだから聞いてからだね」
プジャンの屋敷の程近く、そんなに歩かなくてもいい距離にクゼナの屋敷はあった。
直接同じ屋根の下には置くことができなかったが、何かあれば飛んで来れるぐらいの距離には置いておくことが出来た。
クゼナはプジャンの病気の進行を遅らせる薬が必要になるし、プジャンはクゼナを監視下に置いておきたい。
結果としてそれなりに近い距離にクゼナも留まることになった。
監禁したり雑に扱っているわけではない。
他から何か非難されるようなことはプジャンはせず、クゼナがいる屋敷もプジャンが用意したものだけど古い感じはしているが綺麗にされていた。
近づくラストに気づいて、門の前に立っている若い兵が中に入っていく。
声をかけられるほど近づいた時には門は開いていて、若い兵は嬉しそうな顔をしてラストを出迎えてくれた。
非常にウェルカムな雰囲気でプジャンの屋敷の時は全然違う。
「お久しぶりです、お嬢様!」
「久しぶりね、ケイド」
声をかけるまでもなく、かなり遠目からの顔パス。
プジャンの時はリュードとラストの関係を怪しまれて問いただされた。
こちらはラストと一緒なだけで信頼があるのか何も聞かれることなく深いお辞儀で通してくれる。