「お口に合いましたようで何よりでございます。よければおかわりもお作り致すことできますのでお申し付けください」
「これ、すっごく美味しいです! おじいさんが作ったの?」
「はい。私料理が趣味でございまして。宿にある食材ではありますが作ったのは私でございます」
てっきり宿が作ってくれたものを持ってきてくれただけと思っていたが、この目の前の料理はサキュルラストの執事が作ってくれたものだった。
ルフォンに褒められて執事が嬉しそうに目を細める。
食べながら話でも聞こうと思っていたのに食事が美味しすぎる。
お腹も空いていたしまずは食べることを優先する。
「これどうやって作るの?」
堪えきれずにルフォンが出された料理の作り方を聞く。
「そちらはですね……」
執事は嫌な顔もせずにルフォンの質問に答えて作り方を教えてくれる。
次々とルフォンから質問が飛ぶが執事は1つ1つ丁寧に答える。
最終的にはほとんどの料理について質問していた。
ルフォンは目を輝かせて執事の説明に耳を傾けている。
「こちらは……」
「ふんふん」
ルフォンの料理の腕前が執事に劣っているとは思わないけれどこの執事の料理はかなり美味しく、また趣味というだけあって知識もすごかった。
スラスラと答える執事の説明にルフォンは目から鱗な気分だった。
食べ終わった後はさっと片付けまでしてくれる。
こんなできた執事ならリュードも欲しいぐらいの人である。
寝起きの気分の悪さを帳消しにしてくれるような朝食タイムだった。
ルフォンはルフォンで片付け終わった後も執事を捕まえて質問をしていた。
スナハマバトルで貰った香辛料の中にはルフォンの知識の中にないものあった。
道中書店などによって調べたりするけれどマニアックな香辛料を扱う本はあまり多くなくて使い道がわからない香辛料もまだいくつもある。
執事の知識量を見込んで香辛料について質問してみると執事はなんとルフォンの疑問に答えてくれる。
かなり深い趣味のようでここまで来ると本職の料理人も顔が真っ青になりそうだ。
美味しいご飯と知識量によってルフォンの機嫌も治ったしリュードの気分もなんとかフラットな状態まで持ってこれた。
不当侵入はとりあえず許してやることにした。
「それで用事はなんだ?」
本当の胸の内としてはサキュルラストのお願いを聞くつもりはなかった。
面倒ごとは避けたいので朝起きたらさっさと町を出ていくつもりだったのである。
こっそり逃げることも無理そうなので、もうこうなったら話だけでも聞かせてもらおうと開き直った。
くだらない用件でも満腹の今なら多少余裕を持って受け流すことができる。
むしろくだらない、すぐに終わりそうな話ならその方がいいと考えながらリュードはイスよりも楽な体勢になりたくてベッドの上に座る。
「私たちを助けてほしいんです」
「助けるってなんだ? ずいぶんと抽象的すぎる。誰から、何を、どう、助けるのかちゃんと話してくれ」
そもそもサキュルラストは大領主という非常に強い立場にある。
一介の冒険者たるリュードとは比べ物にならないぐらいに権力を持っている。
出来ることを比べてみてもただの冒険者に助けられることなんてほとんどないだろう。
「…………私は……先祖返りという特殊な体質なのです」
「ラスト……それは!」
「いいの、お姉ちゃん。お願いするならちゃんと話さなきゃいけない。それに話しても大丈夫だって、そんな気がする。もし困ってもそれは私の責任だから」
ひどく買い被られたものだとリュードは複雑な気分だった。
人の秘密をベラベラ喋るような人ではリュードはないけれど、会ってすぐに秘密を打ち明けられるような関係では決してない。
だが先祖返りというのはリュードたちも良く聞き覚えがある言葉だった。
なぜならリュードとルフォンも先祖返りだからである。
「それで?」
リュードは少しだけ真面目な顔つきでサキュルラストの目を見る。
先祖返りだから何があるのか気になってきたのだ。
それにどうやら先祖返りなことは秘密らしい。
それを打ち明けてくれたのだから多少真面目に聞かないとバチが当たるというものでリュードも少し体勢を正す。
「驚かない……んですね?」
「ああ、先祖返りがなんなのかは知ってるからな」
先祖返りは素晴らしいことではあるけれど必ずしも歓迎されることでもない。
より先祖に近い特徴や能力を持っている先祖返りはその持つ力も先祖に近く、強いことが一般的である。
つまり先祖返りであるということは周りの同胞よりも頭1つ抜きん出た存在であると断言してもよいぐらいである。
そうした能力を持っていることは種族全体で見た時にはプラスの出来事であるのだが同世代の中で見るとどうしても浮いてしまう。
リュードやルフォンなんかは能力だけでなく見た目にも特徴が強く出てしまった。
能力も努力したものを除いてみても他の子よりも高い。
戦闘大好き、鍛えるの大好き民族でみんな努力を怠らなかった竜人族や人狼族だからまだ良かった。
それでも若干浮いていたぐらいである。
リュードは先祖返りに加えて前世の記憶があることもあったけどルフォンなんかはリュードがいなかったら今でも内向的で引きこもりな少女になっていた可能性もある。
だから先祖返りを秘密とすることも分からない話ではない。
「これ、すっごく美味しいです! おじいさんが作ったの?」
「はい。私料理が趣味でございまして。宿にある食材ではありますが作ったのは私でございます」
てっきり宿が作ってくれたものを持ってきてくれただけと思っていたが、この目の前の料理はサキュルラストの執事が作ってくれたものだった。
ルフォンに褒められて執事が嬉しそうに目を細める。
食べながら話でも聞こうと思っていたのに食事が美味しすぎる。
お腹も空いていたしまずは食べることを優先する。
「これどうやって作るの?」
堪えきれずにルフォンが出された料理の作り方を聞く。
「そちらはですね……」
執事は嫌な顔もせずにルフォンの質問に答えて作り方を教えてくれる。
次々とルフォンから質問が飛ぶが執事は1つ1つ丁寧に答える。
最終的にはほとんどの料理について質問していた。
ルフォンは目を輝かせて執事の説明に耳を傾けている。
「こちらは……」
「ふんふん」
ルフォンの料理の腕前が執事に劣っているとは思わないけれどこの執事の料理はかなり美味しく、また趣味というだけあって知識もすごかった。
スラスラと答える執事の説明にルフォンは目から鱗な気分だった。
食べ終わった後はさっと片付けまでしてくれる。
こんなできた執事ならリュードも欲しいぐらいの人である。
寝起きの気分の悪さを帳消しにしてくれるような朝食タイムだった。
ルフォンはルフォンで片付け終わった後も執事を捕まえて質問をしていた。
スナハマバトルで貰った香辛料の中にはルフォンの知識の中にないものあった。
道中書店などによって調べたりするけれどマニアックな香辛料を扱う本はあまり多くなくて使い道がわからない香辛料もまだいくつもある。
執事の知識量を見込んで香辛料について質問してみると執事はなんとルフォンの疑問に答えてくれる。
かなり深い趣味のようでここまで来ると本職の料理人も顔が真っ青になりそうだ。
美味しいご飯と知識量によってルフォンの機嫌も治ったしリュードの気分もなんとかフラットな状態まで持ってこれた。
不当侵入はとりあえず許してやることにした。
「それで用事はなんだ?」
本当の胸の内としてはサキュルラストのお願いを聞くつもりはなかった。
面倒ごとは避けたいので朝起きたらさっさと町を出ていくつもりだったのである。
こっそり逃げることも無理そうなので、もうこうなったら話だけでも聞かせてもらおうと開き直った。
くだらない用件でも満腹の今なら多少余裕を持って受け流すことができる。
むしろくだらない、すぐに終わりそうな話ならその方がいいと考えながらリュードはイスよりも楽な体勢になりたくてベッドの上に座る。
「私たちを助けてほしいんです」
「助けるってなんだ? ずいぶんと抽象的すぎる。誰から、何を、どう、助けるのかちゃんと話してくれ」
そもそもサキュルラストは大領主という非常に強い立場にある。
一介の冒険者たるリュードとは比べ物にならないぐらいに権力を持っている。
出来ることを比べてみてもただの冒険者に助けられることなんてほとんどないだろう。
「…………私は……先祖返りという特殊な体質なのです」
「ラスト……それは!」
「いいの、お姉ちゃん。お願いするならちゃんと話さなきゃいけない。それに話しても大丈夫だって、そんな気がする。もし困ってもそれは私の責任だから」
ひどく買い被られたものだとリュードは複雑な気分だった。
人の秘密をベラベラ喋るような人ではリュードはないけれど、会ってすぐに秘密を打ち明けられるような関係では決してない。
だが先祖返りというのはリュードたちも良く聞き覚えがある言葉だった。
なぜならリュードとルフォンも先祖返りだからである。
「それで?」
リュードは少しだけ真面目な顔つきでサキュルラストの目を見る。
先祖返りだから何があるのか気になってきたのだ。
それにどうやら先祖返りなことは秘密らしい。
それを打ち明けてくれたのだから多少真面目に聞かないとバチが当たるというものでリュードも少し体勢を正す。
「驚かない……んですね?」
「ああ、先祖返りがなんなのかは知ってるからな」
先祖返りは素晴らしいことではあるけれど必ずしも歓迎されることでもない。
より先祖に近い特徴や能力を持っている先祖返りはその持つ力も先祖に近く、強いことが一般的である。
つまり先祖返りであるということは周りの同胞よりも頭1つ抜きん出た存在であると断言してもよいぐらいである。
そうした能力を持っていることは種族全体で見た時にはプラスの出来事であるのだが同世代の中で見るとどうしても浮いてしまう。
リュードやルフォンなんかは能力だけでなく見た目にも特徴が強く出てしまった。
能力も努力したものを除いてみても他の子よりも高い。
戦闘大好き、鍛えるの大好き民族でみんな努力を怠らなかった竜人族や人狼族だからまだ良かった。
それでも若干浮いていたぐらいである。
リュードは先祖返りに加えて前世の記憶があることもあったけどルフォンなんかはリュードがいなかったら今でも内向的で引きこもりな少女になっていた可能性もある。
だから先祖返りを秘密とすることも分からない話ではない。