「俺の爺さんを返しやがれ、この悪魔め!」
船の下を通り過ぎた巨大な黒い塊がクラーケンの影である。
大きいと思っていた巨大戦闘船と同じぐらいの大きさの影が海の中を悠然と泳いでいる。
みんながクラーケンの大きさに息を呑む。
あのサイズの魔物が暴れればそれはすなわち災害と変わりがない。
「みなの者、気を確かにせぇ!」
持っていた杖を床に打ち鳴らしドランダラスが声を上げる。
声に込められた魔力がみんなの正気を取り戻させ、吸い込まれるように海を見つめていたみんなが再び動き出す。
隣の船にまで届いたドランダラスの声。
既に辺りに充満するクラーケンの魔力に当てられたみんなの正気を自分の声に乗せた魔力で打ち消したのである。
さすが経験のある魔法使いだと自分で言っていただけはある。
こういうのを年の功というのかもしれない。
「全員事前の打ち合わせ通りに準備せよ!」
「モリを装填!」
慌ただしく騎士たちが戦闘船に取り付けられた発射台にモリを設置していく。
人の足の太さほどの太さもある大きなモリが3つの戦闘船合わせて何十本とクラーケンに向けて準備をする。
「エサで引き寄せろ!」
船の上から袋に入った撒き餌を投げる。
長いこと研究を重ねて特定したクラーケンが好むとされる魚を詰め込んだクラーケン専用の撒き餌。
撒き餌を投げ込むと暗い影が上がってきて海面近くまでやってきた。
撒き餌にクラーケンが食いついた。
「放て!」
第3騎士団団長の合図でモリが発射される。
一斉に放たれたモリは次々とクラーケンに突き刺さっていく。
あれだけ大きな図体をしているのだから多少狙いが外れても余裕でクラーケンに刺さっていた。
太い槍には太いロープが繋がっていて、痛みに悶えるクラーケンの動きで船も引っ張られる。
「ルフォン、大丈夫か?」
「う、うん!」
「魔法部隊、やれ!」
撒き餌を撒いてモリを発射する間にも魔法使いたちは魔力を高めていた。
モリが散々突き刺さったのを確認して魔法使いたちが魔法を一斉に発動させる。
「これほどの規模になると壮観だな」
空中に大きな魔法陣が展開され、暖かかったはずの気温が下がっていく。
リュードの吐き出す息が白くなり肌に寒さを感じる。
視線を下ろすと戦闘船の前の方から海の表面が凍っていき、だんだんと広がっていくのが見えた。
3隻の戦闘船それぞれから広がっていく氷は一つに合わさりあって海は大きな氷のフィールドになる。
「引けーーーー!」
この戦闘船の最大の特徴。
風の力がなくても魔力の力でプロペラを回して前後左右好きな方向に推進力を得ることができるのである。
魔法の力で3隻の戦闘船が同時に後ろに下がる。
戦闘船が下がるとモリに繋いであるロープがピンと張られる。
返しのついた太いモリは簡単に抜けることがない。
「掴まれ!」
モリが引っ張られてクラーケンの体に激痛が走り暴れ出す。
船も大きく揺れてリュードたちは落ちないように近くの手すりに掴まった。
たまらずモリを引っ張られないようにクラーケンは体を海中から出すが船が下がる速度の方が速く力強い。
そのまま引っ張られたクラーケンは魔法部隊が作った氷のフィールドの上に引きずり出された。
「全軍突撃!」
これがドランダラスの立てた作戦。
クラーケンを水中から魔法で作った氷の足場の上に引きずり出して戦おうというのだ。
巨大な戦闘船と多くの魔法使いを使った力技でクラーケンを見事に水中から引きずり出すことに成功した。
騎士や冒険者が氷の上に飛び降りてクラーケンのところに向かう。
引きずり出すのはあくまでも前哨戦に過ぎず、ここからが本当の戦いである。
「ルフォン、行けるか?」
「うん、大丈夫!」
リュードとルフォンも氷の上に降り立ってクラーケンとの戦闘に参加する。
エミナは魔法使いなので魔法部隊所属で氷の上には来ない。
マーマンは陸上に出てしまえばただの雑魚であったのだがクラーケンはそうはいかない。
モリで拘束されているし水中の時のような機動力は失ったけれどもその多足を使った攻撃は素早く手数が多く、なによりも強力であった。
それぞれが意思でも持っているかのように襲いかかってくる足のために近づくことすら困難である。
無理に近づこうとすると足の餌食になってしまう。
「イカが舐めるなよ!」
予想外の衝撃にクラーケンの動きが止まる。
みんなよりも一歩下がった後ろで魔力を高めていたリュードが魔法を放ったのである。
リュードの胴ほどもある太い雷がクラーケンに伸びていき、避雷針よろしくモリの1本に落ちた。
強い魔物というのは魔法に対する抵抗力も高い。
これだけじゃ倒すことも難しいのは分かっているので殺傷力よりも体がより痺れるような意識をして魔法を使った。
クラーケンの体に電撃が広がりビリビリとして硬直するイメージ。
事前に聞いていた通りクラーケンは雷属性の魔法に弱かった。
痛みはそれほどでもないはすなのにクラーケンは雷属性の魔法を受けると体が硬直して動きが止まってしまった。
「い、今だ!」
その隙をついてみんながワッとクラーケンに接近する。
「まずは足を狙うんだ!」
騎士と冒険者が一丸となって足を切り付ける。
「はああああっ!」
第3騎士団の副団長でもあるアリアセンも前線に立ってクラーケンの足を切り付ける。
船の下を通り過ぎた巨大な黒い塊がクラーケンの影である。
大きいと思っていた巨大戦闘船と同じぐらいの大きさの影が海の中を悠然と泳いでいる。
みんながクラーケンの大きさに息を呑む。
あのサイズの魔物が暴れればそれはすなわち災害と変わりがない。
「みなの者、気を確かにせぇ!」
持っていた杖を床に打ち鳴らしドランダラスが声を上げる。
声に込められた魔力がみんなの正気を取り戻させ、吸い込まれるように海を見つめていたみんなが再び動き出す。
隣の船にまで届いたドランダラスの声。
既に辺りに充満するクラーケンの魔力に当てられたみんなの正気を自分の声に乗せた魔力で打ち消したのである。
さすが経験のある魔法使いだと自分で言っていただけはある。
こういうのを年の功というのかもしれない。
「全員事前の打ち合わせ通りに準備せよ!」
「モリを装填!」
慌ただしく騎士たちが戦闘船に取り付けられた発射台にモリを設置していく。
人の足の太さほどの太さもある大きなモリが3つの戦闘船合わせて何十本とクラーケンに向けて準備をする。
「エサで引き寄せろ!」
船の上から袋に入った撒き餌を投げる。
長いこと研究を重ねて特定したクラーケンが好むとされる魚を詰め込んだクラーケン専用の撒き餌。
撒き餌を投げ込むと暗い影が上がってきて海面近くまでやってきた。
撒き餌にクラーケンが食いついた。
「放て!」
第3騎士団団長の合図でモリが発射される。
一斉に放たれたモリは次々とクラーケンに突き刺さっていく。
あれだけ大きな図体をしているのだから多少狙いが外れても余裕でクラーケンに刺さっていた。
太い槍には太いロープが繋がっていて、痛みに悶えるクラーケンの動きで船も引っ張られる。
「ルフォン、大丈夫か?」
「う、うん!」
「魔法部隊、やれ!」
撒き餌を撒いてモリを発射する間にも魔法使いたちは魔力を高めていた。
モリが散々突き刺さったのを確認して魔法使いたちが魔法を一斉に発動させる。
「これほどの規模になると壮観だな」
空中に大きな魔法陣が展開され、暖かかったはずの気温が下がっていく。
リュードの吐き出す息が白くなり肌に寒さを感じる。
視線を下ろすと戦闘船の前の方から海の表面が凍っていき、だんだんと広がっていくのが見えた。
3隻の戦闘船それぞれから広がっていく氷は一つに合わさりあって海は大きな氷のフィールドになる。
「引けーーーー!」
この戦闘船の最大の特徴。
風の力がなくても魔力の力でプロペラを回して前後左右好きな方向に推進力を得ることができるのである。
魔法の力で3隻の戦闘船が同時に後ろに下がる。
戦闘船が下がるとモリに繋いであるロープがピンと張られる。
返しのついた太いモリは簡単に抜けることがない。
「掴まれ!」
モリが引っ張られてクラーケンの体に激痛が走り暴れ出す。
船も大きく揺れてリュードたちは落ちないように近くの手すりに掴まった。
たまらずモリを引っ張られないようにクラーケンは体を海中から出すが船が下がる速度の方が速く力強い。
そのまま引っ張られたクラーケンは魔法部隊が作った氷のフィールドの上に引きずり出された。
「全軍突撃!」
これがドランダラスの立てた作戦。
クラーケンを水中から魔法で作った氷の足場の上に引きずり出して戦おうというのだ。
巨大な戦闘船と多くの魔法使いを使った力技でクラーケンを見事に水中から引きずり出すことに成功した。
騎士や冒険者が氷の上に飛び降りてクラーケンのところに向かう。
引きずり出すのはあくまでも前哨戦に過ぎず、ここからが本当の戦いである。
「ルフォン、行けるか?」
「うん、大丈夫!」
リュードとルフォンも氷の上に降り立ってクラーケンとの戦闘に参加する。
エミナは魔法使いなので魔法部隊所属で氷の上には来ない。
マーマンは陸上に出てしまえばただの雑魚であったのだがクラーケンはそうはいかない。
モリで拘束されているし水中の時のような機動力は失ったけれどもその多足を使った攻撃は素早く手数が多く、なによりも強力であった。
それぞれが意思でも持っているかのように襲いかかってくる足のために近づくことすら困難である。
無理に近づこうとすると足の餌食になってしまう。
「イカが舐めるなよ!」
予想外の衝撃にクラーケンの動きが止まる。
みんなよりも一歩下がった後ろで魔力を高めていたリュードが魔法を放ったのである。
リュードの胴ほどもある太い雷がクラーケンに伸びていき、避雷針よろしくモリの1本に落ちた。
強い魔物というのは魔法に対する抵抗力も高い。
これだけじゃ倒すことも難しいのは分かっているので殺傷力よりも体がより痺れるような意識をして魔法を使った。
クラーケンの体に電撃が広がりビリビリとして硬直するイメージ。
事前に聞いていた通りクラーケンは雷属性の魔法に弱かった。
痛みはそれほどでもないはすなのにクラーケンは雷属性の魔法を受けると体が硬直して動きが止まってしまった。
「い、今だ!」
その隙をついてみんながワッとクラーケンに接近する。
「まずは足を狙うんだ!」
騎士と冒険者が一丸となって足を切り付ける。
「はああああっ!」
第3騎士団の副団長でもあるアリアセンも前線に立ってクラーケンの足を切り付ける。