趣味がないって恐ろしいことだと思う。日々、人間は少なからず苦しい生活をしている。毎日ずっとハッピーなんて人はあんまり存在しないと思う。そんな中で、好きなことがあればそのために頑張れたり、目標にしたりすることができる。私は小説を書いて気を紛らわせていたし、音楽の歌詞に共感して少し元気をもらったりしていた。好きな小説家さんの本を読むと、私もこんな小説が書きたいと思えるし、どうしたら面白い話が書けるかなと考えている時は、苦しいことや辛いことを考えずに済むから楽しかった。
紫亜に、趣味がないってことは虐待を受けて、いじめを受けている事実から気を紛らわせるものがないってこと。Twitterはあるかもしれないけど、Twitterでの愚痴吐きなんて、所詮その程度だ。趣味になんてならない。ましてや死にたいなんて感情を吐き出して、承認欲求が満たされるわけでもない。本当にそんな感情の時には、励ましの言葉も全部、あんまり意味は無いからだ。
私はそんな言葉を貰うと、こんな私にも死なないで欲しい人がいるって嬉しかったけど、それが楽しいわけじゃない。
趣味って生きることに楽しいって思えるものだと思う。人間、楽しい感情がないと、辛いだけになってしまうと思う。大抵、学校だって、仕事だって本当は行きたくないでしょ。したくないでしょ?好きなことをしたいでしょ。好きなこと、
趣味、それがない紫亜は、辛いことから真っ向に向き合ってきたんだ。学校や、家族がどんなでも、楽しい気持ちで気を紛らわせたりしないで、辛い気持ちだけを受け止めてきたんだ。そんなのってきつすぎる。
それであんな風に笑うんだもんな。
よくわからない。

今まで生きてきて、好きに出会うことはなかったんだろうか。

あったら死のうなんてしてないかな。
気を紛らわせる手段に死ぬことしか思いつかなかったのかもしれない。

私は、私はどうなんだ。

好きなことはある。実現したいこともある。
小説でちょっと成功したい。
みんなに賞賛されて、書籍化しちゃったりして。
それでこの世界を小馬鹿にしたい。
なんだ、私なんかでも上手くいくんじゃんって。
認められるんじゃんって。

で、もう思い残すことないな〜って満足して死にたい。

じゃあ未練じゃないか。

未練があるのに死のうとしているのか。

紫亜は、好きなことや未練が全くない。
だから、死に真っ直ぐ向かえる。
私は?私は、ゆらゆらぐらぐら揺らいでいる。
それは、好きなことや未練があるから。

「…羨ましいな」

と言って遠い目をする彼女を綺麗だと思う。
私は文字を打ちながら横目で見ていた。
その好きなことは今、小説だけじゃない。