「暑い、死ぬ。」

これほんとに春なの?
校長の話は長いし、体育館は蒸し暑いし。
ここ東京ぐらい人口密度高いんじゃない?


下校時間があと1時間と迫っている。

「ねえ見てあれ。また本読んでる。」

わざわざ聞こえるよう言ってくるのはわざとだと思っている。
坂本さんは1年の時から苦手意識がある。
あまり人との関わりを大事にしない私に、相手はいい気分では無いだろう。

早く帰りたい。

『ピコン』

携帯が鳴った。

『下田誠司』
『今スマホ使える?』

今日1番だと思うため息が出る。

『なに?』

『━━━』

『ピコン』

「ねえ佐々木さん」

坂本に話しかけられた。
携帯いじってる時に話しかけてくるのやめてほしい。
返信が見れなかった。

「はい」

「あんたってぼっちじゃん?」

「はい」

なんか面倒なことになりそう
逃げていいかな?

「やっぱり?じゃあ良い機会だし。」

下田とのメールのせいなのか何を言おうとしてるのか分かっていた気がする。

「嘘コクして嘘彼氏でもつくっちゃえば?」

取り巻きが皆くすくす笑っている
初日から取り巻きがいるって人脈すごいな。
人脈で思ったけど、なんの脈絡もなくて笑える。

「嫌です。」

小学生でももっとマシな会話が出来ると思う。
でも私は必要最低限の言葉しか話さないスタンスは崩したくない。

「あっそ、もう一生彼氏できないんじゃない?、可哀想。」

坂本達が席に戻っていく。

そんな簡単に身を引くなら最初から来なきゃいいのに。
あ、そういえばメール来てたんだ。

『好きです。付き合ってください。』

予想通りすぎて吐きそう。
私自身思ってる節あるのかな。

『高校生活安泰?』

意味伝わるだろうか。

『ある程度はします。』

伝わったのか伝わってないのかギリギリのラインだなこれは。

『ほんとに付き合う気あったんだ。』

『もちろん』

ふーん。
中学生よりかは成長?したのかな。
あんたも私も。

いや、同じ教室にいるのにメールしてる時点で成長とは呼べないか。
まぁいいや。

『よろしくお願いします。』

告白の返事ってこれでいいんだよね?