イシスは体格のいい男をにらみ詰め寄った。

 「すみませんが、私のどこが女性だと?」

 そう言いイシスはすごむが、話し方と表情が柔らか過ぎてその男に通用しない。

 そしてその男は首をかしげる。

 「女じゃねぇって、どういう事だ! まさか男なのか? だとしても、女にしか見えねぇ」

 「……。ハァ、もういいです」

 そう言われイシスは、怒るというよりも逆に落ち込んだ。

 それを見ていたリューセイ達は、さすがに耐えられなくなり腹を抱え笑いだす。

 「ぷはっ! なるほど。俺たちは、昔っから一緒だったから、なんとも思ってなかったが。確かに、言われなきゃ女だと思うかもな」

 そう言いながらクライスは、イシスから視線を逸らした。

 「そんなに笑わなくても。ふぅ、もういいです! 私は宿に戻りますので」

 イシスはここにいるのが嫌になり扉のほうへと歩きだす。

 それを見て即座にその体格のいい男は、イシスを追い近くまでくると左手をつかんだ。

 「おい! 待て」

 イシスはいきなり手を握られ驚き振り向いた。

 「な、何するんですか!?」

 そして、何をするんだと言わんばかりにその男を凝視する。

 その様子を見ていた四人はまずいと思う。だが、三人はその様子を見ているだけで、リューセイだけが行動に移しイシスのほうに向かおうとした。

 それと同時にクライスは、リューセイの行く手を阻んだ。

 「リュー、待て!」

 「離せ! このままじゃイシスが」

 クライスの体をつかみ「どけ!」と言い、思いっきり力を込め跳ね除けようとする。

 するとクライスは、リューセイの両腕をつかみ自分から引き離した。

 「まぁ待て。ああ見えて一応アイツも男だ。それにイシスはそれ程ヤワじゃない」

 「確かにそうかもしれない。だけど、」

 そうリューセイは言いかける。

 「クライスの言う通り。僕も大丈夫だと思うよ」

 ユリエスはリューセイを見て、ニコニコと笑いながらそう言った。

 「そうだな。アイツはあんな感じだけど。怒らせると、うるさいくらいに口が達者だしなぁ」

 このあとどうなるのかと思いながらアベルディオは、イシスと体格のいい男のほうを見ている。

 「まぁ確かに、そうかもな。だが、まずいと思ったら、」

 リューセイがそう言うと三人は、うなずきイシスのほうに視線を向けた。

 一方イシスは、その体格のいい男に手を握られ嫌な顔をする。

 首をかしげながら体格のいい男は、イシスの顔をマジマジとみた。

 「んー、なるほどなぁ。だが、男にしておくにはもったいない容姿にいい声をしていやがる」

 そう言うとイシスの品定めを始める。

 「ほほう。それにだ! 見た限りだと、温室育ちのようだが。おまえ、どこぞの御曹司か?」

 そう言われイシスは一瞬ビクッとした。

 「い、いえ。とんでもありません。そんな大層な身分では、」

 「いやいや。そうでなければ、これほど、高貴なオーラを持つ者などいない!」

 イシスはそう言われ困惑する。

 「ですが、」

 「あっ、なるほど! そういう事か」

 何を思ったのかその男は勝手に納得した。

 「あ、あのですねぇ。何を納得されたのかは分かりませんが」

 「いやいや、皆まで言わなくても。おそらくは、隠さなきゃならねぇ事情があるんだろう。そうでなきゃ、あんなお供を連れてはいないはず」

 イシスはそう言われ、どう答えたらいいかと悩んだ。と同時に、なぜかとてつもなく嫌な視線を感じリューセイ達のほうをみる。

 すると四人は、イシスのほうをにらみ顔を引きつらせていた。

 (これはかなり、四人とも怒ってますね。どうしましょう? あの様子ではアベルディオが一番、怒っているようです。
 どうにかしないと、大変な事が起きる予感がしてきました。さてどうしたら、)

 そう思い『よし』とうなずき、体格のいい男をみる。

 そしてイシスは、真顔になり話し始めた。