ここは冒険者ギルドの建物の中。

 冒険者ギルドといっても、さすがに小さな村にあるだけあってあちこちツギハギだらけだ。

 もちろん椅子やテーブルもいうまでもないだろう。

 だが意外にもチラホラと冒険者らしい者たちがいて、酒を飲んだり食事しながら話をしている。


 リューセイ達は建物に入り中を見渡した。

 「ほう。これが冒険者ギルドか!」

 クライスはそう言い視線をカウンターの方に向ける。

 「うわぁ〜。なんかレトロな雰囲気があって。すごくいいよねぇ」

 そう言い満面の笑みで見まわした。

 「ユリエス。それってほめているのか、けなしているのか分からないように思えます」

 「イシス。そうかなぁ? ほめてるつもりなんだけど。ふぅ〜ん。そう聞こえるのかぁ」

 リューセイ達は、そうこう話をしながらカウンターに行こうとする。

 と同時にギルド内が急にざわつき始め、リューセイ達の目の前に一人の体格のいい男が立ちはだかった。そして、クライスの前に立つと見おろす。

 「フッ、珍しい。こんな田舎の村に、若い冒険者とはなぁ」

 「そんなに、珍しいのか?」

 クライスはそう言いその男と目線を合わせる。

 「ああ。特に、おまえ達のような冒険者はな!」

 そう言い鼻で笑った。それを見たクライスはムッとしその男をにらみ付ける。

 「ほう。いっちょまえに、いい面構えをするじゃねぇか」

 そう言われクライスは、その男に飛びかかろうとした。

 ケンカになったらまずいと思いリューセイは、とっさにクライスの腕をつかんだ。

 「クライス! 挑発にのるな。こんなところでケンカなんかしたら大変なことになる」

 「ああ。そうだな」

 クライスは、うなずきリューセイの手を払いのける。

 するとその男は、リューセイが発した言葉に対し怒りをあらわにした。そして、リューセイの胸ぐらをつかんだ。

 「おい、待ちやがれ! すずしい顔しやがって。おまえが一番、気にいらねぇんだよ!」

 「ちょっと、離してくれませんか。なんで俺たちにからんでくるんだ?」

 リューセイは、その男の腕をつかむと力をこめ自分から引きはがそうとする。だが、その男の腕力が上でびくともしない。

 「ふんっ。なんでかだと。おまえらのようなガキが、こんな美人を連れて歩いてりゃなぁ。ムカつくんだよ!」

 そう言うとその男はリューセイを解放しイシスを指差した。

 イシスは自分のことだと思わず後ろをキョロキョロとみる。

 四人は一瞬その男が言っていることが分からず、誰のことなのかと指差すほうに視線を向けた。

 「「「「あー!?」」」」

 するとそれがイシスだと気づき、四人はふきだしそうになる。

 「えっ! それって、もしかして私のことなんですか?」

 リューセイ達に『うん』とうなずかれイシスは、自分が女だと思われ嫌な気持ちになる。だが言い返せず、頭を抱えため息をついた。

 「おい! おまえら。なんで笑いをこらえてやがる?」

 「なんでって。ぷっ。なあイシス」

 そう聞かれ答えるもアベルディオは、笑いをこらえるのが精一杯でイシスに話をふる。

 「アベルディオ。笑わないでください。不愉快です!」

 そう言いムッとした。

 「イシス、悪い。俺も笑いをこらえるので精一杯だ」

 「クライスまで……はぁ、」

 そう言うとイシスは息をもらす。

 そんな中リューセイは、口と腹をおさえ無言のまま心の中で笑っている。

 (ま、マジかよ! 笑える。女と間違われるとはな。確かに、話し方もあんな感じだし。んーだけど、イシスどうするつもりだ?)

 片やユリエスは、両手で口をふさぎ今にもふき出しそうになっていた。

 (ちょっと、これって……すごくウケるんだけど)

 急にイシスが不機嫌になり四人が笑いをこらえていたため、リューセイ達の目の前にいる男は不思議に思い首をかしげる。

 そしてイシスは、四人を見たあとその男に視線を向けにらみ付けた。