ここはランズベール村の市場にある武器と防具の店。

 翌日になりリューセイ達は、食事を終えると自分に合う装備品を買いに来ていた。

 そして狭い店の中をウロウロしながら、各々が品定めをしている。

 リューセイは剣を探していた。

 (持っているヤツより多少良さそうだ。だが、すこしばかり重い)

 そう思い置かれている全ての剣を見比べる。

 「やっぱり、持っているのにするか。そうなると、ヨロイなどで強化したほうがいいかもな」

 リューセイは防具が置いてある場所に向かった。その途中、ある装備が視界に入り立ちどまる。

 そう武器と防具類が置いてある中間にこの店に似つかわしくないような、黒、青、紫、白、緑の五体のフル装備が飾られていたのだ。

 (これって。すごく理想的でいい装備だ。でもよく見るとそれぞれの武器が違う。それに防具も、ちゃんと合わせてある)

 リューセイは魅入っていた。それに気づいた四人は近寄ってくる。

 「ほう。これは結構よさそうじゃないか」

 そう言いクライスは黒い重装備一式をみる。すると背面に大剣が飾られていた。それを持ち構える。

 「意外に重みがある。それに軽くスイングしただけで。ズシリとくる、この重圧感。たまらなくいいぞ」

 そう言うとクライスは、大剣を戻し防具のチェックをした。

 ユリエスは緑色のほうを見ている。

 「弓矢かぁ。ん? って。ねぇ、アベルディオ。これ、弓じゃないみたいだけど。なんて言う武器?」

 「ユリエス。これは、恐らくクロスボウという武器だと思う。だが、本で見ただけだから断言はできない」

 いやその通り、その武器は紛れもなくクロスボウである。

 「ふ〜ん。クロスボウかぁ。どうやって使うのかな? だけど弓より使いやすそうだし、遠距離から攻撃ができる。僕にはちょうどいいかも」

 「確かに、ユリエスにあってる。それに軽装備でちょうどいいんじゃないのか」

 「うん、そうだね」

 そう言われユリエスは、満面の笑顔でうなずいた。

 「そうだ。アベルディオはどうなの?」

 「そうだなぁ。白い聖職衣に水晶かぁ。これだと付与魔術士か回復士ってとこか。だけど力のない俺には、このほうが合ってるかもな」

 アベルディオは水晶を手にする。

 隣で聞いていたイシスは、ふと思いアベルディオに話し掛けた。

 「そういえばアベルディオは、学園で魔法学を専攻していたんでしたよね」

 「イシス。そうだけど、攻撃系が苦手だった。でも、付与魔術士か回復士あたりなら。もしかしたら、やれるかもしれない」

 アベルディオは水晶をみつめる。

 「魔力が優れているアベルディオなら大丈夫かと思います。さて、私はどうしましょう? 残っているのは、この紫色の一組だけです」

 どうしようかとイシスは悩んだ。

 (魔術士用ですね。学園で習いましたので、多少の心得はありますが実戦の経験がありません。
 それに面倒でしたので、魔力量もきちんと測定せず適当に記載していましたし)

 自分の魔力量がどのくらいあるのか気になり右の手のひらをみつめる。

 「イシス。急に手のひらなんか見てどうしたんだ?」

 「実は自分の魔力量が、どのくらいあるのかと思い考えていたのです」

 「もしかして。今まで、ちゃんと測定してなかったのか?」

 それを聞きアベルディオは驚きのけぞると重心を崩しよろけた。

 「そこまで驚かないでも。ですが、どうしましょう?」

 「イシス。それなら、魔力量を測ればいいんじゃないかな?」

 ユリエスは二人に視線を向けそう答えるとまた装備をみる。

 「確かにそうですね。そういえば魔力測定用の巻物が、荷物の中にあったはず。使うかもしれないと思い持ってきて正解でした」

 「イシス。そんな物まで持ってきてたのか。まぁ、ないよりはいいが。そうなると、宿屋に戻ってからになるな」

 アベルディオはあきれた表情になる。

 「そうですね」

 そう言うとイシスは、ローブやつえなどのチェックを始めた。

 そんな四人の会話を聞きながらリューセイは、青い軽装備を見ながら考える。

 (この剣だけど、軽くてすごく手になじむ。それに盾もセットになっている。この装備なら、って。これって、そういえばいくらなんだ?)

 そう思いどこかに金額が表示されたプレートがないかと探した。

 「リューセイ。何をしている?」

 「あっ! クライス。金額が知りたくてプレートを探している。だけど、どこにも見当たらない」

 それを聞きクライスも探し始めた。

 「そういえば、見当たらないな」

 隣で聞いていたアベルディオは周囲を見渡してみる。

 イシスとユリエスもそれを聞き装備のアッチコッチを見てみた。

 「んーどこにも、表示されていない」

 リューセイは、なんでかと疑問に思い悩んだ。

 探していると奥の部屋から店の主が出てきた。と同時にリューセイ達に気づきそばに歩みよる。

 「客とは珍しいですな。それも、その装備に興味がおありのようで」

 「ああ。それで金額が知りたい」

 そうリューセイが尋ねた。

 「左様でございますか」

 そう言いながら店主は、リューセイ達を順に見るとニヤリと笑みを浮かべる。

 「それは特別製でしてねぇ。安くはありませんが。それでもよろしいですかな?」

 「それで構わない。だが、持っている金貨で買えるならな」

 そう答えるとクライスは、バッグの中から金貨が入っている袋を取り出し中をみる。

 「金貨ですか……」

 店の主は金貨と聞き急に黙り込んだ。

 (ほう。これはかなり、持っているようだ。それに物の価値も分からないとみえる。
 本当は銀貨でも良かったが、金貨で払って頂けるなら)

 「どうかしたのですか? 何か不都合でも」

 急に店の主の態度が変わった事にイシスは気づきそう問いかけた。

 「あーいえ、すみません。えっとですねぇ。その装備一式ですと、金貨百枚ですが」

 「フル装備で金貨百かぁ」

 ユリエスはバッグの中にあるお金が入った袋の中をみる。

 金貨がいくらあるかイシスも袋の中を調べた。

 「宿屋代を考えるとムリですね。どうしましょう?」

 「そうだな。この装備を諦めて他のにしよう」

 そう言いアベルディオはその場を離れようとした。

 それを聞き店の主は、なぜか慌てて引きとめる。

 「あっ、お待ちください。それでしたら。今回限りという事で。そうですねぇ、金貨五十枚ではいかがでしょうか」

 よほどこの装備を売りたいらしい。

 「五十枚かぁ。それなら、」

 「ユリエス。ちょっと待て。それでも高い。本当に、それほど高価な品なのか?」

 アベルディオはなんか変だと思い店の主をにらみみる。

 すると店の主は、顔にダラダラと冷や汗をかき始めた。

 「も、申し訳ない。確かに、そんな高価な物ではありません」

 そして土下座をしながらひたすらあやまる。


 __そんなに気弱なら、最初からふっかけなきゃいいのにねぇ。


 その後、店の主は正式な金額である銀貨八百枚ずつ受け取った。


 __だがそれでも、かなりのもうけはあるらしい。


 そして、リューセイ達はお金を払い店で着替えると宿屋へいったん戻ったのだった。