4月。
 菜々美、琢磨、友希は真新しいランドセルを背負い入学式と書かれた看板の前に立っていた。
「ゆきはななちゃんととをつなぐ。ゆきがまんなか。」
「いいよ。じゃあ、たっくんがそっちね。」
「うん。」
 いつものように仲良く手を繋いで写真を撮る。
「あ、おねえちゃん。」
友希と琢磨の3つ上の姉たちも正門へやって来て、さらに賑やかになる。
一人っ子の菜々美にとって、幼なじみの2人は喧嘩もするが兄妹のようで、親友のような存在だった。そして、ずっと一緒に同じ学校へ行って、大人になるまで同じ団地で過ごすと思っていた。
 毎朝3人は一緒に登校した。学校へ行けば菜々美と琢磨は同じクラスで、友希は隣のクラスだった。帰る時も3人は一緒で、同じ方向に帰る幼稚園が一緒だった子達と5〜6人で帰ってた。
 帰宅すればベランダから
「ななぁ。ななぁ。こうえんいくぞ。」
「たっくん。まってて。」
「したにいる。」
なんて約束して遊んでた。
「たっくん。まってよ。」
「ななはおそいから、てつないでやるよ。」
琢磨と菜々美は特に仲良かった。隣同士だからすぐに行き来できたし、親同士も仲良かった。
のんびり屋で運動が苦手な菜々美にとって、運動できて優しい琢磨は自慢の幼なじみ。だから、一緒に入れなくなるなんて考えたこともなかった。

夏休みが終わる頃
「菜々美。大事な話がある。」
「なに?お父さん。」
「引っ越しすることになった。だから10月から違う学校に行く事になる。」
「ちがうがっこう?」
「そうよ。たっくんや友希ちゃんと違う学校に行くの。ここから引っ越しをするから。」
「・・・やだ!!たっくんやゆきちゃんといっしょがいい。」

あの時は世界の終わりじゃないかってぐらい泣いた。
泣いて、泣き叫んで引っ越すことを拒んだ。
小学生の子供にとって、同じ市内だったとしても、車で片道30分も離れた距離は簡単に行ける距離じゃなかった。まして、学校も変わりもう一緒に遊べないなんて…。
今生の別れと同じだった。