「龍仁お疲れ!」
「お疲れさまです。お子さんかわいいですね、いくつなんですか?」
キョーコさんが膝の上のダイスケくんの手を持って、龍仁に手を振る。
「あと3か月で4歳。4月から幼稚園行くんだ。握手してあげて。」
龍仁はしゃがみ込んで、恐る恐るダイスケくんに指を近づける。
「おお! 握ってくれた! りゅうじんだよ、よろしくね。お名前は?」
「ダイちゃん。」
「ダイちゃんって言うんだね! よろしく。」
ダイスケくんと触れ合う龍仁は、父親なんじゃないかと思うくらい、優しく楽しそうだった。
「ダイちゃん、龍仁やさしいね! パパ交換しようか?」
「うん。」
「おい! キョーコ!!」
冗談を言うキョーコさんもそれに乗ってしまってるダイスケくんも、全力で止めにかかるキョースケさんも、家族みんなで可愛らしい。
「ダイちゃん。オレ、パパやったことないけど、いいの?」
「うん。」
「おい! 龍仁まで!! ダイスケはやらないぞ!!!」
みんなして冗談を本気で演じ始めてきた。「やらないぞ!!!」とか言いながら、キョースケさんがダイスケくんを抱いて、龍仁に抱かせようとしている。
「わぁ、重いっすね。」
「そりゃな。オレに似たのか食いしん坊だからな。」
重いと言いながらダイスケくんを抱える龍仁はパパそのものだった。
「龍仁さ、本当にパパじゃないの? めっちゃ抱くの上手いけど。」
「子ども居ないっすよ。それどころか結婚もしてないですって。」
「そうなの? じゃあいい感じな人がいるとか?」
「若いときは色々ありましたけど、職場も男ばかりで、今は全然。」
キョーコさんが、さらっと私が気になっていたことを聞いてしまう。指輪をしてないけど、本当に結婚していないんだ。そして今は彼女もいないのか。たぶんが確信に変わると、また心臓がドクドクと打つのがわかる。
「色々ってなに? めっちゃ気になるんだけど!」
「え、あー、いやー…。あ!」
キョーコさんが私の気になっているだろう部分を聞き出そうとしたとき、ちょうど先生がやってきた。
「やあ、龍仁久しぶりだな。舞音も卒業以来か?」
「お久しぶりです。」
先生への返事が示し合わせたわけでもなく、まったく同時になる。
「仕事はどうだ?」
「そうですね。いままで3つ職場を経験したんですけど、同じ会社なのに全然違って。」
「そうだよな。」
「何が起きても動じない対応力? はついた気がします。」
龍仁は淡々と10年の働きぶりを話す。学生時代からよく働く龍仁だったから、きっと職場でもなんでもやって、できるようになっていっているのだろう。そんな姿が目に浮かぶ。
「舞音はどうだ?」
「私は転勤なくて、ずっと札幌なんですが、だいたいの部署は経験して、4月から経理課長になりました。」
「課長か。さすがゼミ長出世したな。」
「いやー、誰もやりたがらないんで。」
「まだ30歳過ぎたばかりだろ? そりゃもう、エリートコースに載せられてるな。」
「えええー。出世とか興味ないのに…。」
褒められているのか遊ばれているのか、よくわかっていない私の目に、うんうんと頷いているキョーコさんとキョースケさんが映る。
「いや、マジだよ、舞音ちゃん。」
「うん。婚期逃すやつ。キョーコの姉さんそんな感じだったよな?」
「そうそう。35歳過ぎて店長までやってるけど、そこまでいくと嫁にもらってくれる人も居ないって嘆いてる。」
キョーコさんとキョースケさん的にも、先生と同意見らしい。
「どう働くかって、どう生きるか、だからな。そろそろ考えないと、人生で手に入れたいものを逃すことがないように。」
「どう生きるか、ですかぁ…。」
龍仁のほうが先生の言葉を深刻に受け止めて考え込んでしまっている。
「オレは故郷で暮らすことを諦めた。だからこうやって多くのゼミ生に囲まれて、生きることができている。妻とだって、秋田にいたら出会えなかったし、子どもたちもそう。」
先生は日本酒の入ったお猪口を片手にさらに続ける。
「でも、いま。大学を去るという決断をしている。今まで好きに生きてきたぶん、親が生きているうちに孝行しないといけない、そんなタイミングが来てしまったのでね。」
先生の退職理由は詳しく説明されていないから、そのテーブルにいた全員が先生の告白を真剣に聞いていた。
「妻と子どもたちも一緒に秋田まで行ってくれることになった。本当に感謝している。それが一緒に生きる家族ってことなのかな、少なくとも飯森家はね。どう生きるか、誰と生きるか。それは自分で決められる世の中であってほしいし、卒業生にもそうあってほしいな! それを見届けられないのが唯一の心残りだな。」
「オレ、転勤多いから、どこで生きていきたいか、自分で考えないとなぁ。」
「それもそうだが、龍仁はそろそろ『誰と』をよく考えろ! じゃあな。」
先生はそう言って龍仁の肩をポンとたたくと、私たちにニコッと笑って、次のテーブルへ移動してしまった。
「『誰と』って先生言うけど、マジで出会いないんっすよ。」
「会社じゃそうなんだろ? じゃあここで見つけていかないとだな!」
「そんなぁ。」
グラスにビールを注ぎあいながら、龍仁を励ますキョースケさんは学生時代と変わらないイケてるボーイだった。照れる龍仁もあの頃みたいに可愛くみえる。
「じゃあ、そろそろ閉めないとだから、あとキョーコ頼んだぞ。」
「うん。」
「じゃあな、ダイちゃん。龍仁には渡さないぞ!」
ダイスケくんのほっぺをプルプル触り、龍仁と私に会釈をして、キョースケさんは司会席に帰ってしまった。
キョーコさんはダイスケくんを持ち上げて、膝の上に座り直させる。
「舞音ちゃんって、札幌だよね? 飛行機で来たの?」
「はい。今朝飛んできました。」
「そうなんだ。帰りは?」
「まだ考えてないです。」
ええ? っと、龍仁もキョーコさんも驚いている。
「せっかくだから羽伸ばそうかなぁって、休みだけとって、あとは決めないで来たんです。」
「そ、そんなことってあるのね。」
「経理課長の引き継ぎは終わってるし、今の部署で働いてても、居なくなる人が頑張ってもなぁと思うところもありますしね。」
キョーコさんの驚きは止まらない。さっきから皿の料理にまったく手がついていない。ダイスケくんがジュースを欲しがっているのに、それにも気づけていないみたいだ。
「龍仁は、いまどこだっけ?」
「盛岡です。ちょっと遠いけど、車で来ちゃいました。」
「そ、そうなの!」
1、2、3。キョーコさんは、たしかに3回、私の方を見て顔を見合わせた。龍仁が盛岡から車で来ている。運転が好きだった龍仁のことを考えれば、車がないと生活に困る東北地方住みというのも考慮すれば、何も不思議はない行動だった。だからなぜキョーコさんが私と顔を見合わせているのか、よく分からなかった。
「ねえ、龍仁。舞音ちゃん、盛岡まで送ってあげなよ。」
「えー! キョーコさん、そんなぁ!」
「遠慮するところじゃないよ、舞音ちゃん。盛岡まで行けば、飛行機でも新幹線でも、少し交通費浮くじゃん。ね、龍仁。」
キョーコさんの提案を全力で拒否する私の顔は、きっと耳まで真っ赤になっているはずだ。そんな私たちを龍仁はいたって冷静に見ているようだった。
「全然いいっすよ。1人だと道中つまらないし。ホテルどこ?」
「私? 駅前のセントラルホテル。」
「出発明日でいい?」
「え? あ、うん。」
「オレもしばらく休みとってるから、寄りたいところあれば考えといて。」
「うん。」
あっという間に、龍仁と2人で盛岡に行く計画が立った。緊張と嬉しさと、信じられなさとで、顔が真っ赤になっている私をキョーコさんがニコニコ見つめている。
(2人きりということは、これは、デート?)
そんなことが頭に浮かぶと、もう「デート」で頭がいっぱいになる。照れ隠しに皿に残っている料理もテーブルで残っているサンドイッチも、食べられるものはなんでも食べて、話す余裕をなくしてしまう。
キョースケさんのアナウンスで、ごちゃ混ぜになっていた会場が、元いたところに戻る形で、落ち着きを取り戻していく。そしてみんなイソイソと最後の乾杯のための飲み物を補充する。
私も飲み物カウンターまで行って、ハイボールを注文する。もう甘いもので締めるお姉さんではなくなっていた。そうなのだが、ハイボールが手元に届いてから、酔いがだいぶ回っていることに気づいてしまった。
カウンターから席まで戻るのに少しよろけているところを美波が支えてくれる。椅子をペーさんが引いてくれる。そして「大丈夫か?」と龍仁に心配される。10年前まで当たり前にあった同期の気遣いが、無性に嬉しく感じる。
「では、次のOB会は秋田で会いましょう! 乾杯!」
乾杯。その後の記憶は正直残っていない。なんとかハイボールを飲み干した気はするが、その後どうやってホテルまで帰ってきたかだ。ラインを見返すと、キョーコさんから心配のラインが入っていたから、きっとキョーコさんが送ってくれたか、タクシーに乗せてくれたかなのだろう。
深夜に目が覚めて、キョーコさんからのラインに返信して、また寝た。
「じゃあ、報告待ってるから! がんば!」
朝、目覚めるとキョーコさんから応援メッセージが来ていた。半分キョーコさんが約束してくれたような龍仁とのドライブデート。キョーコさんにもキョースケさんにも「後悔、しないでね。」と背中を押されている。
(今日こそ、必ず、伝えよう。)
そう、心に決めた朝だった。
「お疲れさまです。お子さんかわいいですね、いくつなんですか?」
キョーコさんが膝の上のダイスケくんの手を持って、龍仁に手を振る。
「あと3か月で4歳。4月から幼稚園行くんだ。握手してあげて。」
龍仁はしゃがみ込んで、恐る恐るダイスケくんに指を近づける。
「おお! 握ってくれた! りゅうじんだよ、よろしくね。お名前は?」
「ダイちゃん。」
「ダイちゃんって言うんだね! よろしく。」
ダイスケくんと触れ合う龍仁は、父親なんじゃないかと思うくらい、優しく楽しそうだった。
「ダイちゃん、龍仁やさしいね! パパ交換しようか?」
「うん。」
「おい! キョーコ!!」
冗談を言うキョーコさんもそれに乗ってしまってるダイスケくんも、全力で止めにかかるキョースケさんも、家族みんなで可愛らしい。
「ダイちゃん。オレ、パパやったことないけど、いいの?」
「うん。」
「おい! 龍仁まで!! ダイスケはやらないぞ!!!」
みんなして冗談を本気で演じ始めてきた。「やらないぞ!!!」とか言いながら、キョースケさんがダイスケくんを抱いて、龍仁に抱かせようとしている。
「わぁ、重いっすね。」
「そりゃな。オレに似たのか食いしん坊だからな。」
重いと言いながらダイスケくんを抱える龍仁はパパそのものだった。
「龍仁さ、本当にパパじゃないの? めっちゃ抱くの上手いけど。」
「子ども居ないっすよ。それどころか結婚もしてないですって。」
「そうなの? じゃあいい感じな人がいるとか?」
「若いときは色々ありましたけど、職場も男ばかりで、今は全然。」
キョーコさんが、さらっと私が気になっていたことを聞いてしまう。指輪をしてないけど、本当に結婚していないんだ。そして今は彼女もいないのか。たぶんが確信に変わると、また心臓がドクドクと打つのがわかる。
「色々ってなに? めっちゃ気になるんだけど!」
「え、あー、いやー…。あ!」
キョーコさんが私の気になっているだろう部分を聞き出そうとしたとき、ちょうど先生がやってきた。
「やあ、龍仁久しぶりだな。舞音も卒業以来か?」
「お久しぶりです。」
先生への返事が示し合わせたわけでもなく、まったく同時になる。
「仕事はどうだ?」
「そうですね。いままで3つ職場を経験したんですけど、同じ会社なのに全然違って。」
「そうだよな。」
「何が起きても動じない対応力? はついた気がします。」
龍仁は淡々と10年の働きぶりを話す。学生時代からよく働く龍仁だったから、きっと職場でもなんでもやって、できるようになっていっているのだろう。そんな姿が目に浮かぶ。
「舞音はどうだ?」
「私は転勤なくて、ずっと札幌なんですが、だいたいの部署は経験して、4月から経理課長になりました。」
「課長か。さすがゼミ長出世したな。」
「いやー、誰もやりたがらないんで。」
「まだ30歳過ぎたばかりだろ? そりゃもう、エリートコースに載せられてるな。」
「えええー。出世とか興味ないのに…。」
褒められているのか遊ばれているのか、よくわかっていない私の目に、うんうんと頷いているキョーコさんとキョースケさんが映る。
「いや、マジだよ、舞音ちゃん。」
「うん。婚期逃すやつ。キョーコの姉さんそんな感じだったよな?」
「そうそう。35歳過ぎて店長までやってるけど、そこまでいくと嫁にもらってくれる人も居ないって嘆いてる。」
キョーコさんとキョースケさん的にも、先生と同意見らしい。
「どう働くかって、どう生きるか、だからな。そろそろ考えないと、人生で手に入れたいものを逃すことがないように。」
「どう生きるか、ですかぁ…。」
龍仁のほうが先生の言葉を深刻に受け止めて考え込んでしまっている。
「オレは故郷で暮らすことを諦めた。だからこうやって多くのゼミ生に囲まれて、生きることができている。妻とだって、秋田にいたら出会えなかったし、子どもたちもそう。」
先生は日本酒の入ったお猪口を片手にさらに続ける。
「でも、いま。大学を去るという決断をしている。今まで好きに生きてきたぶん、親が生きているうちに孝行しないといけない、そんなタイミングが来てしまったのでね。」
先生の退職理由は詳しく説明されていないから、そのテーブルにいた全員が先生の告白を真剣に聞いていた。
「妻と子どもたちも一緒に秋田まで行ってくれることになった。本当に感謝している。それが一緒に生きる家族ってことなのかな、少なくとも飯森家はね。どう生きるか、誰と生きるか。それは自分で決められる世の中であってほしいし、卒業生にもそうあってほしいな! それを見届けられないのが唯一の心残りだな。」
「オレ、転勤多いから、どこで生きていきたいか、自分で考えないとなぁ。」
「それもそうだが、龍仁はそろそろ『誰と』をよく考えろ! じゃあな。」
先生はそう言って龍仁の肩をポンとたたくと、私たちにニコッと笑って、次のテーブルへ移動してしまった。
「『誰と』って先生言うけど、マジで出会いないんっすよ。」
「会社じゃそうなんだろ? じゃあここで見つけていかないとだな!」
「そんなぁ。」
グラスにビールを注ぎあいながら、龍仁を励ますキョースケさんは学生時代と変わらないイケてるボーイだった。照れる龍仁もあの頃みたいに可愛くみえる。
「じゃあ、そろそろ閉めないとだから、あとキョーコ頼んだぞ。」
「うん。」
「じゃあな、ダイちゃん。龍仁には渡さないぞ!」
ダイスケくんのほっぺをプルプル触り、龍仁と私に会釈をして、キョースケさんは司会席に帰ってしまった。
キョーコさんはダイスケくんを持ち上げて、膝の上に座り直させる。
「舞音ちゃんって、札幌だよね? 飛行機で来たの?」
「はい。今朝飛んできました。」
「そうなんだ。帰りは?」
「まだ考えてないです。」
ええ? っと、龍仁もキョーコさんも驚いている。
「せっかくだから羽伸ばそうかなぁって、休みだけとって、あとは決めないで来たんです。」
「そ、そんなことってあるのね。」
「経理課長の引き継ぎは終わってるし、今の部署で働いてても、居なくなる人が頑張ってもなぁと思うところもありますしね。」
キョーコさんの驚きは止まらない。さっきから皿の料理にまったく手がついていない。ダイスケくんがジュースを欲しがっているのに、それにも気づけていないみたいだ。
「龍仁は、いまどこだっけ?」
「盛岡です。ちょっと遠いけど、車で来ちゃいました。」
「そ、そうなの!」
1、2、3。キョーコさんは、たしかに3回、私の方を見て顔を見合わせた。龍仁が盛岡から車で来ている。運転が好きだった龍仁のことを考えれば、車がないと生活に困る東北地方住みというのも考慮すれば、何も不思議はない行動だった。だからなぜキョーコさんが私と顔を見合わせているのか、よく分からなかった。
「ねえ、龍仁。舞音ちゃん、盛岡まで送ってあげなよ。」
「えー! キョーコさん、そんなぁ!」
「遠慮するところじゃないよ、舞音ちゃん。盛岡まで行けば、飛行機でも新幹線でも、少し交通費浮くじゃん。ね、龍仁。」
キョーコさんの提案を全力で拒否する私の顔は、きっと耳まで真っ赤になっているはずだ。そんな私たちを龍仁はいたって冷静に見ているようだった。
「全然いいっすよ。1人だと道中つまらないし。ホテルどこ?」
「私? 駅前のセントラルホテル。」
「出発明日でいい?」
「え? あ、うん。」
「オレもしばらく休みとってるから、寄りたいところあれば考えといて。」
「うん。」
あっという間に、龍仁と2人で盛岡に行く計画が立った。緊張と嬉しさと、信じられなさとで、顔が真っ赤になっている私をキョーコさんがニコニコ見つめている。
(2人きりということは、これは、デート?)
そんなことが頭に浮かぶと、もう「デート」で頭がいっぱいになる。照れ隠しに皿に残っている料理もテーブルで残っているサンドイッチも、食べられるものはなんでも食べて、話す余裕をなくしてしまう。
キョースケさんのアナウンスで、ごちゃ混ぜになっていた会場が、元いたところに戻る形で、落ち着きを取り戻していく。そしてみんなイソイソと最後の乾杯のための飲み物を補充する。
私も飲み物カウンターまで行って、ハイボールを注文する。もう甘いもので締めるお姉さんではなくなっていた。そうなのだが、ハイボールが手元に届いてから、酔いがだいぶ回っていることに気づいてしまった。
カウンターから席まで戻るのに少しよろけているところを美波が支えてくれる。椅子をペーさんが引いてくれる。そして「大丈夫か?」と龍仁に心配される。10年前まで当たり前にあった同期の気遣いが、無性に嬉しく感じる。
「では、次のOB会は秋田で会いましょう! 乾杯!」
乾杯。その後の記憶は正直残っていない。なんとかハイボールを飲み干した気はするが、その後どうやってホテルまで帰ってきたかだ。ラインを見返すと、キョーコさんから心配のラインが入っていたから、きっとキョーコさんが送ってくれたか、タクシーに乗せてくれたかなのだろう。
深夜に目が覚めて、キョーコさんからのラインに返信して、また寝た。
「じゃあ、報告待ってるから! がんば!」
朝、目覚めるとキョーコさんから応援メッセージが来ていた。半分キョーコさんが約束してくれたような龍仁とのドライブデート。キョーコさんにもキョースケさんにも「後悔、しないでね。」と背中を押されている。
(今日こそ、必ず、伝えよう。)
そう、心に決めた朝だった。