とある高校二年の女子高生の佐伯(さえき)(かえで)はがんになり余命宣告を受け病院に入院していた。
入院中、抗がん剤治療しているが副作用でつらいと思っており生きるのをやめようかと思ったりしていた。
(こんな思いをするなら死んだほうがマシかもしれないな……)
 そんなことを思っていた次の日、一人の男子高校生がノックして病室に入ってきた。
「佐伯さん元気にしている?」
「あなたはたしか……」
 その男子高生とは佐伯の同じクラスの松浦(まつうら)(わたる)だ。
「松浦くん?どうしてここに?」
「いや、先生から佐伯さんが病気で入院しているって聞いて心配だから来たよ」
「それでお見舞いでこれ持ってきたから」
 持ってきたものとはたくさんのりんごだった。
「佐伯さんはりんごが好きだから持ってきたよ」
「ありがとう松浦くん、わざわざ持ってきてくれて」
 そして松浦はりんご剥き出しそのりんごを二人で食べながら話し合った。
「学校のみんなは元気?」
「元気だよ、そういえば佐伯さんと仲がいい倉本さんも心配していたよ」
「そうなんだ、由衣に会いたいけど部活のテニスで忙しいだろうな」
 佐伯は寂しそうな表情でそう言った。
「まあテニス部はもうすぐ大会があるから練習で忙しいかもね」
 それから話は文化祭の話になった。
「そういえばもうすぐ文化祭でしょ、準備とかしているの?」
「しているよ、うちのクラスは演劇をやることになった」
 松浦はそう言うとスマホを取り出しクラスのみんな楽しそうに文化祭の準備している写真を佐伯に見せた。
「ふーん、みんな楽しそうだね、私には関係ない話だけど」
 暗い声でそう言うと続けてこう言った。
「私はもう青春できないんだろうな」
 そんなことを言われた松浦はすぐこう言い返した。
「そんなことはない、佐伯さんなら病気が治ってまた学校に行けるようになるよ」
「そうだといいね……」
 佐伯は希望が無さそうな表情でそう言った。
それから松浦が帰った後、佐伯は一人でこう思った。
(松浦くんはあんなことを言っていたけど病気が治るのは奇跡が起きないかぎり無理だよ)
そんなことを思い生きる希望をなくした佐伯だった。

次の日、また病室のドアをノックする音が聞こえた。
「はいどうぞ」
「佐伯さん、また来たよ」
 そう言って入ってきたのは制服姿の松浦で佐伯に高校でどこを勉強したのかノートを見せに来たと言ってきた。
「勉強に後れをとらないようにノートを持ってきたよ」
「ああ、そう……」
 松浦は勉強に後れをとらないようにノートを持ってきてくれたが佐伯は余命宣告されもうすぐ死ぬから意味が無いと思っており松浦の行動をありがた迷惑とも思っていた。
 けれどノートを見るのを断ったらわざわざ持ってきてきれた松浦に申し訳ないと思いノート見せてもらうことにした。
 今日の授業でやった数学などのノートを見せてもらうと数時間が過ぎノートを見終わった
「ありがとう、見せてもらって」
 それから趣味の話になった。
「佐伯さんって漫画が好きだよね?」
「そうだね」
「じゃあ〇〇っていう漫画知っている?」
「知っている、〇〇という雑誌で連載されているよね」
「今度、アニメ化されるらしいよ」
「へえ、私の漫画好きだからうれしい。いつ頃アニメ化するの?」
「僕もその漫画好きなんだよね、たしかアニメ化は来年の4月頃だよ」
「そうなんだ……」
 自分は生きていないだろうと思い気分が沈んだ。

 そして次の日も病室に来てさっそくこう言った。
「佐伯さんにプレゼントがあるんだ」
 そう言ってカバンから取り出したのはキャラクターのストラップだ。
「〇〇のキャラクター、佐伯さん好きだと思うから買ってきたからあげるよ」
「あ!〇〇のストラップだ、どうもありがとう」
 松浦から大好きなキャラのストラップをくれたことで佐伯はテンションが上がった。
(やっぱり〇〇は世界一可愛いな)
 そんなことを思いながら微笑んだ表情すると松浦もにこやかな表情した。
だが佐伯は不思議そうな表情もしてこう思っていた。
(松浦くんとは学校では一度も話してなかったから私の好きなものは知らないと思うんだけど何で知っているんだろう、漫画やりんごが好きなことも……)
 佐伯は松浦との接点がなく話したこがないためどこで知ったのか気になった。
「それでさ、気になったことがあるのだけど私の〇〇のキャラが好きなことをどこで知ったの?松浦くんには言っていないはずなんだけど?後、漫画やりんごが好きなことも」
 松浦は数秒の沈黙の後、おどおどしながらこう言った。
「クラスの人から聞いたんだよ」
「そうなんだ」
 佐伯はその解答に何か腑に落ちなかった。

 それから松浦は毎日、病室に現れノートを見せてくれたり学校での話などをしてくれた。
 今日も来てくれて帰った後、一人病室でこんなことを思っていた。
(なんで松浦くんは毎日、私の所にわざわざ来てくれるのだろう)
学校では接点が無く友達でもなかったため、なぜ病室に来てそこまでしてくれるのだろうと疑問に思っていた。
(でも松浦くんは悪い人ではなさそう)

 ある日、佐伯は抗がん剤の副作用で苦しんでいた。そこに松浦が病室に入ってくると佐伯が調子悪そうなことに気付く。
「佐伯さん、調子悪そうだけど大丈夫?」
「あまり大丈夫じゃない……」
「なんかしてやれることある?」
「いや、何もしなくていいよ」
 抗がん剤の副作用はきつく慣れるものでは無く特に吐き気があり体も精神も疲れ切ってしまった。
 そんな中、佐伯はこんなことを言った。
「こんな思いをしてまで生きる必要なんかあるのかな」
 そう言われた松浦はなんで抗がん剤治療をしようと思ったのか聞いたのだ。
「親とか周りの人から抗がん剤治療した方がいいと言われたからだよ」
「私は抗がん剤治療なんかやめて早く楽になりたいけどね。早く死にたい」
 佐伯はなぜ周りのみんなは抗がん剤治療をした方がいいと言われるのかとボソッと呟くと松浦はこう言った。
「それは佐伯さんのことを大切な家族や友達と思っていて死んだら悲しくて生きてほしいからだよ」
 松浦は佐伯に面と向かって強い口調でそう言った。
「そうは言っても私の気持ちを尊重すべきじゃないの?抗がん剤の副作用で苦しい思いをしている私の気持ちを考えてほしいよ」
 今度は佐伯が松浦に面と向かって強い口調でそう言った。
 そしてしばらくの沈黙の後、松浦が口を開く。
「それじゃあ、抗がん剤の副作用が辛くなくて病気が治るとしたら生きたいと思うの?」
「そうだね」
 その返答に松浦が何か言いたそうな感じを出していたが黙っていた。
 それから時期が冬のため日の沈みが早くなり空が暗くなりはじめたので帰っていきその帰り途中に冬の夕方は寒く寂しいと思っていた。
 
 天気が良く太陽が輝いていた日、いつも通り病室にいると松浦がやって来ると花束を持っていて佐伯がそれはなんのために持ってきたのかと聞いた。
「これは亡くなった母親のために持ってきたんだ」
 詳しく聞くと今日は母親の命日で佐伯のお見舞いの後にお墓に添えるための花束と話した。
「そうなんだ、私も幼いころに母親を亡くしているから同じだね」
「それじゃあさあ、父子家庭ならわかると思うけど父親が授業参加の時に来ると周りの人は大体母親が来ているから自分の父親が浮いている感じになるのわかる?」
「あ、わかる!」
 佐伯は大きく頷きながらそう答えた。
「たしかに私も授業参加の時に来てもらって周りがお母さんだらけでうちのお父さんが気まずそうにしていたわ!」
 それから佐伯と松浦は楽しそうに父子家庭のあるあるなどを話し合いその二人には笑顔が溢れかえっていたのだ。
 会話が途切れることもなく話しているとあっという間に時間が過ぎ日が暮れそうな時間になり松浦は帰ろうとしていた。
「じゃあね、明日も来るから」
「わかった、また明日」
 佐伯は松浦が母親が死んで父親に育てられたことを知り親近感が湧きはじめもっと仲良くなりたいと思ったのだ。
 そして学校では松浦とまったく喋らず友達ではなかったが話しているうちに共通の趣味や共感する所もあり気が合いそうな人だと思った。

 それからある日、今日も病室にやってきた。
「佐伯さんにプレゼントがあるよ」
「なに?」
 松浦がカバンから取り出したのは佐伯が好きな漫画の新刊だ。
「前に話した時にこの漫画、好きって言っていたから持ってきたよ」
「ありがとう、持ってきてくれて」
 さっそく二人はその漫画を一ページ一ページじっくりと読んだのだ。
 時間は過ぎ、漫画を読み終わると二人は感想を言い合った。
「私は五十四ページのあのセリフが心にきたよ」
「俺もそのシーンよかったけど八十一ページのセリフをよかったな」
「あ、たしかに!」
 佐伯は自分が好きな漫画のことを語り合える人がいてうれしいと思った。
「そういえばこの漫画、アニメ化するんだよね……」
 佐伯は深刻な表情しながらそう言った。
「そうだね、来年の4月にアニメ化するよ」
 そして佐伯はこんなことを言った。
「この漫画のアニメを観終わるまでは死にたくないかも……」
 その言葉に松浦は顔を輝かせこう言った。
「来年の4月、一緒に〇〇のアニメを観よう!」
 佐伯は生きる希望が少しずつであるが出てきたのだ。
 それからもう一つ松浦は佐伯にあるものプレゼントをした。
 それは小さい瓶の中に入った何かの液体の飲み物だった。
「これ、何の飲み物なの?」
「えっ、まあ栄養ドリンクみたいなものだよ。今飲んでみてよ」
 松浦はおどおどしながらそう答えた。
「そう……」
 そして飲み物を一気飲みしてこんな感想を言った。
「なんか、不思議な味だね。これどこで手に入れたの?」
「まあ人から貰ったんだよね……」
 また松浦はおどおどしだしながらそう答えた。
「誰から?」
 そう聞かれると松浦は用事を思い出したらと言いそこから逃げるように病室を出て行くと佐伯は先ほどの松浦の言動を見て不思議に思った軽く受け流した。

 それから日が経つにつれて佐伯の容態が悪くなっていった。
 そして今日も病室に松浦が来ており佐伯は具合悪そうにベッドで横たわっていた。
「佐伯さん大丈夫?」
「まあ何とか……」
 そう微かな声で松浦の返事をした。
 前に比べると顔は痩せ細り今にも死にそうな感じだった。
「私、もうすぐ死ぬかもね……」
 佐伯が消え入りそうな声そう言うとすかさず松浦がこう言い返した。
「まだそうと決まったわけじゃないよ」
「でも自分でわかるんだよ、死期が近いって……」
 ふと二人は窓の方を見るとかなり曇っていることに気付く。
「松浦くん、今日はもう帰った方がいいよ、雪が降るらしいからね」
「でも佐伯さん心配だから」
「私なら大丈夫だよ」
 松浦はそう言われたので渋々帰っていると雪がしんしんと降ってきて肌寒いと思いながら帰っていた。
「本当に心配だな……」

 次の日、松浦が朝起きるとまだ雪が降っていった。
 そして学校から連絡があり今日は大雪のため休校と連絡があった。
(やった、今日はゆっくり休めるじゃん)
 その後、外は雪のため家でゆっくりゴロゴロしていたが何か嫌な予感がした。
(佐伯さんになんかあったのか)
 そう思い病院に行こうとしたが大雪のため行ける感じではなかったので雪が弱まったら行こうとした。
 数時間、雪が弱まるか心配に思いながら窓から外を眺めていると少し弱まってきたため病院に行く支度を始めた。
 雪が降る中、松浦は病院に行くため家を出て行った。
 肌が凍りつきそうで手足の感覚が無くなる中、歩いて行きやっとの思いで病院にたどり着いた。
 病院の中に入ると暖房が効いておりホッとした気持ちになった。
 そんな気持ちで階段を上がり佐伯の病室の目に前まで来ると中から泣き声が聞こえてきた。
 病室の中に入ると医師と佐伯の父親がいた。父親は顔を下に向けながら大粒の涙を流していた。
「佐伯さんがどうかされたのですか……」
 松浦は今にも泣きそうな声でそういうと医師がこう答えた。
「佐伯楓さんは先ほどお亡くなりになりました」
 今日の朝から思っていた嫌な予感は的中したのだ。
 その後、父親が泣くのをやめ気持ちが落ち着くと松浦にこう言った。
「楓とはどういう関係で?」
「高校のクラスメイトです」
「名前は?」
「松浦航です」
「そう……」
 続けて佐伯の父親は真剣な表情をしながら話した。
「松浦くんは最愛の娘が死んだこの気持ちわかる?」
「わかりますよ」
「俺が楓を大切に育ててきたのにあっけなく死んでいくなんて考えたくもなかった」
 そして佐伯の父親はこんなことも話した。
「妻もがんになって楓と同じように死んでしまったな……」
「俺は妻と同じように楓には死んでももらいたくはないとは思い本人の反対を押し切って抗がん剤治療させた。楓は抗がん剤治療することにかなり拒んでいたが妻のように死んでほしくなかった」
「ここで楓まで死んでしまったら最愛である妻と娘に先立たれた俺は生きていけないと思ったんだ」
「あの時、もし妻と娘に先立たれてひとり残されたらという俺の気持ちも理解してほしい」
 佐伯の父親がそう話すと松浦がこう言った。
「やっぱり本人の気持ちを大切にするということもわかりますけど家族や友人などの大切な人が死んだら悲しいですもんね」
 そして佐伯の父親はこんなことを言った。
「娘を生き返らせる方法はあるのかな、いや無いか……」
 松浦は真面目な表情をしながら佐伯の父の言葉にこう返しながら病室を出て行った。
「お父さん、そのことなら自分がなんとかさせます」
 病院を出るとまだ雪が降っていて寒い中、松浦はこう言った。
「また失敗したか……」
「残念だったのう」
 そう松浦の言葉に返事するのはある人物だった。
「神様いたんだ」
「ずっと見ていたぞ」
 松浦と話しているのは神様でその出会いは数カ月前になる。
 
 松浦はいつも通り学校に登校すると先生から好きな人の佐伯が余命宣告され病院に入院することを知るとかなりのショックを受けた。
 学校が終わると神社に行き「佐伯さんが病気を治るためならどんなことでもする」と願うと神様が目の前に現れ心臓が飛び出るぐらい驚いたのだ。
「お前の願いを叶えよう」と言われるとその願いを叶えるための条件を言ってきた。
 それは強く生きたいと思わせること、瓶の中に入っている秘薬を飲ませければいけない。
 そしてこのことを佐伯、本人には言ってはならない。
「もし言ってしまったら病気を治せられないからな」
 神様はそう言うとあともう一つこんなことを言った。
「過去に戻りやり直しが三回まではできる」
「それじゃ、頑張るんじゃぞ~」
 そう言われ神様は目の前から消えた。
 それから松浦は毎日、佐伯の病室に通うがそこまで仲良くなれず強く生きたいと思わせることや秘薬を飲ませることもできず佐伯の病気を治すことはできずに一周目は終わった。
 二週目は一週目で知った佐伯の好きな漫画やキャラクターなどを知っていることを喋ると佐伯がそのことは松浦に話していないのになぜ知っているかと不審に思われたがクラスメイトに聞いたとうまく話した。
 それから同じ趣味などを通じて仲良くなり秘薬を飲ませることにも成功したが強く生きたいと思わせることに失敗し今にいたる。

「お主、わかっていると思うがやり直しができるのはあと一回だけじゃからな」
「わかっているって」
 松浦は雪の降る中、立ち止まって大きく深呼吸をしながらこう言った。
「じゃあ神様、三回目のやり直し行くよ」
「わかったぞ、やり直し開始じゃ」
松浦と神様は数カ月前に戻っていった。
 そして松浦は佐伯が入院している病院にいた。
(次こそは……)
 佐伯の病気を必ず治すぞという強い気持ちを思いながら病室入っていた。
「佐伯さん元気にしている?」
「あなたはたしか……」
「松浦くん?どうしてここに?」
「いや、先生から佐伯さんが病気で入院しているって聞いて心配だから来たよ」
「それでお見舞いでこれ持ってきたから」
 一週目と二週目と同じくりんごを持ってきた。
「ありがとう松浦くん、わざわざ持ってきてくれて」
 そして松浦はりんご剥き出しそのりんご二人で食べながら話し合った。
「学校のみんなは元気?」
「元気だよ、そういえば佐伯さんと仲がいい倉本さんも心配していたよ」
「そうなんだ、由衣に会いたいな、でも部活のテニスで忙しいだろうな」
 佐伯は寂しそうな表情でそう言った。
「まあテニス部はもうすぐ大会があるから練習で忙しいかもね」
 それから話は文化祭の話になった。
「そういえばもうすぐ文化祭でしょ、準備とかしているの?」
「しているよ、うちのクラスは演劇をやることになった」
松浦はそう言うとスマホを取り出しクラスのみんな楽しそうに文化祭の準備している写真を佐伯に見せようとしたがやめたのだ。
(みんなが楽しそうな写真見せちゃうと気分を下げさせるかもしれないからやめとこう)

次の日、また佐伯の病室へやってきた。
「佐伯さん、また来たよ」
「今日も来たの」
 佐伯は驚いた表情をした。
「佐伯さんって〇〇漫画が好きってクラスの人に聞いたんだけど本当?」
「そうだね」
「じゃあ〇〇っていう漫画知っている?」
「知っている!私好きだよその漫画!〇〇という雑誌で連載されているよね!」
「俺も好き!とくに〇〇のキャラが好きで……」
 その後、松浦と佐伯は会話が弾むように話しあっという間に時間が過ぎっていった。
「じゃあそろそろ帰るわ」
「じゃあね」
 松浦は病院が帰る途中、こんなこと思った。
(前回は勉強に後れをとらないようにノートを持っていったけど佐伯さん本人は早く死にたいと思っているからノートを持って来られて教えられても無駄と思っていそうでいい思いはしていなさそうだから持っていかなくてよかったよな)

 それから松浦は毎日、病室に通い佐伯の大好きなキャラのストラップや漫画の新刊をプレゼントしたりとしたり母親が死に父子家庭で育てられたことなど共通の話題を話し合ったりしていると佐伯は親近感が湧いていった。

 そんなある日。突然、佐伯は松浦にこんなことを言ってきた。
「なんで松浦くんは毎日、私の所にわざわざ来てくれるの?」
「佐伯さんが好きだから」
(あっ言っちゃった)
 松浦は佐伯に好きと言うはずなかったがつい佐伯への好きという思いが強いすぎて言ってしまった。
「ふーん、そうなんだ。私のどこが好きなの?」
「笑顔が素敵な所です」
 松浦はそう言ったことで恥ずかしくなり用事を思い出したといい病室を急いで出て行った。
 佐伯は松浦にそう言われてこう思った。
(松浦くんは私のこと好きなのか、私は松浦くんのこと友達として見ているけど)

その後、毎日病室に行きそんなある日、松浦が病室に入ると佐伯が調子悪そうなことに気付く。
「佐伯さん、調子悪そうだけど大丈夫?」
「大丈夫……」
 抗がん剤治療の副作用で苦しんでいる佐伯は松浦の来てくれたことにホッとした表情を見せてこう言った。
「本当に松浦くんが来てくれてよかった」
「辛い時に親しい人が来てくれると元気出るよ」
 そして松浦はこんな質問をした。
「他にお見舞いに来てくれる人はいるの?」
「いない、父親は仕事で忙しいし友達もテニスの大会などで忙しいからね」
「そうなんだ」
 そう返答がきた松浦はこう思った。
(これは新しい情報だな。俺以外誰も来てくれないのは心細いよな、そりゃ早く死にたくなるわ)

それから一週間後、松浦はいつも通り病室にきた。
「松浦くん、こんにちは」
「こんにちは佐伯さん、でも今日は俺だけじゃないよ」
そう言うとある人たちが病室に入ってきた。
「楓、元気か?」
 それは楓の父親。
「楓ちゃん大丈夫?」
「元気?」
 それと楓の友達たちだ。
「わあ、来てくれたの!」
 佐伯は久しぶりに父親と友達に会えて心弾んでとびっきりの笑顔をしていて松浦は今まで見たことがない表情だと思った。
病室はにぎやかになり話が途切れることはなった。
 会話しているうちに夕方になり父親や友達は帰っていった。
「松浦くん、わざわざ連れてきてくれてありがとう」
 松浦はその言葉に満足した。
「そうだ、佐伯さんにプレゼントがあるんだ」
 カバンから出したのはあの神様にもらった瓶に入った秘薬だ。
「それ何?」
「栄養ドリンクだよ、飲んでみて」
「ふーん、そうなんだ」
 佐伯はその秘薬を一気飲みした。
「なんか、不思議な味だね」
 それから話題はこんな話になった。
「松浦くん、生まれ変わったら何になりたい?」
「俺は猫かな。自由で良さそうじゃん、人間みたいに働かなくていいし」
「私は人間だね、いろんなことができるからね」
 そうして松浦は夕方で日が暮れそうなので帰っていき帰り道、松浦はこう思っていた。
(佐伯さんは死にたいと思っているのかな、見た感じだとそうは思ってはなさそうだけど)

 ある日、松浦は今日もお見舞いしようとの病室の前に来ており中に入ると佐伯が本を読んでいた。
「こんにちは、佐伯さん。本読んでいるの?」
「うん、昔から本が好きでよく小説を読んでいたんだ」
「それで誰にも言っていなかったけど自分でも小説を書いていた時期があって将来の夢は小説家だったんだ、だけど他人に書いたものを見せるのが恥ずかしくてなるのをあきらめちゃった」
佐伯にそう言われ松浦はこう思った。
(へえ、佐伯さんが小説家を目指していたのか、初めて知った)
 そして松浦はひらめいた。
(佐伯さんに夢であった小説家になることを目標にすれば強く生きたいと思うかも……)
「佐伯さんの書いた小説見てみたいな、書いてみてよ」
「いや恥ずかしいからちょっとな……」
 佐伯は困った表情をしたが松浦が「どうしても見たい」と強くお願いするとこう言った。
「まあそこまでお願いするならいいよ、それに暇だしね」

次の日、病室に来ると佐伯はスマホで書いた短編小説を書き終わっていた。
 さっそく松浦はその小説を読んでいると佐伯は恥ずかしくて下を向いていた。
 数十分後、読み終わり佐伯にこう言った。
「心理描写がうまく書けていておもしろいよ」
「そう、ありがとう」
 松浦は本当に佐伯が書いた小説がおもしろいと思ったのだ。
(これはマジで小説家の才能があると思うな)
 そして佐伯にある提案する。
「この小説さ、ネットに投稿してみようよ」
 佐伯は数分を迷った末、松浦がおもしろいと言ってくれたのもあって思い切って投稿した。

 そして次の日、病室で松浦と佐伯は小説を投稿したサイトを観てみるとたくさんの閲覧数とコメントが付いており好評だったのだ。
 それで佐伯にまたある提案する。
「佐伯さん、小説家を目指してみたら、絶対才能あると思うよ」
 だが佐伯はあまり乗る気ではなかった。
「私はまだおもしろい小説を書く自信が無い」
「でもネットに上げた小説が高評価だったじゃん、佐伯さんならおもしろい小説書けるよ」
「それに小説家になることが夢だったんでしょ、絶対目指した方がいいって!」
 松浦はそう佐伯に強く訴えると考えとくと言いその日に決断はしなかった。
 それから松浦は病院からの帰り道、こう思っていた。
(小説家を目指すように促したけど佐伯さんは目指す気になるかな)
 冬の厳しい寒さの中、そのことが気になりながらとぼとぼ帰っていった。

一週間後、病室にいた松浦は佐伯が突然こう言ってきた。
「私、小説の賞に受かったら小説家を目指そうかな」
 松浦はいきなり言ってきたので驚くと同時にガッツポーズをしてこう思った。
(これで賞でも取って自信がつけば夢である小説家になるという目標ができて強く生きたいと思える理由になるかもな)
それから佐伯は賞に送る小説を執筆し出し松浦が来る日も来る日も夢中になってやっていてそんな姿を見ていた松浦はこう言った。
「よくスマホで小説書けるよね。パソコンの方がやりやすくない?」
「いや私、ローマ字打てないから」
 松浦はその返答に驚いた。
(ローマ字打てない人いるんだ……)
その後、佐伯が夢中になりながら執筆を続けていたが日付を過ぎていくにつれ容態が悪くなっていき小説が書けない日も増えてきた。
(タイムリミットが近づいてきているな)
日に日に佐伯が痩せ細っていき死期が近づいていることがわかった。

 ある日、松浦と佐伯は病室で会話をしていた突然、佐伯の容態が急激に悪くなり松浦はすぐに医師を呼んで容態を見てもらうとこう言われた。
「佐伯楓さんは危篤状態ですね」
「そんな……」
 松浦はショックのあまり足が崩れた。
 佐伯に秘薬を飲ませ強く生きたい思わせることができそうな状況だったが危篤状態になりもう小説を完成させることは困難だと思った。
 それから次の日の朝方に佐伯は楓の父親や友達、そして松浦に見守れながら帰らぬ人となった。
 病院の帰り道一人で帰っているとあの人物に声をかけられる。
「佐伯楓を助けられなかったな」
「三回目はいい所までいったんじゃがな」
 神様がそう松浦に話しかけるがショックのあまり言葉を返すことができなかったが次のある神様の言葉に飛びつく。
「過去に戻りやり直しができるのは三回までじゃが特別にもう一回チャンスをやろう」
「それは本当か?神様」
 顔近づけながらそう言うと難しい顔をしながら神様はこう言った。
「じゃが条件があってな、大きな代償を払わなければいけないじゃが……」
「俺はどんな条件でも大丈夫、佐伯さんを救えれば」
 神様はその条件を松浦に話すと迷うことなくその条件をのみ、もう一回だけチャンスをくれることになった。
「泣いても笑ってもこれが最後じゃ」
「それじゃあ行くぞ、やり直し開始じゃ」
 そして二人は過去にまた戻っていった。
 ある日、病室にて佐伯がベッドで横たわっていると病室にノックしてきた。
「はい、どうぞ」
「佐伯さん元気にしている?」
「あなたはたしか……」
「松浦くん?どうしてここに?」
「いや、先生から佐伯さんが病気で入院しているって聞いて心配だから来たよ」
「それでお見舞いでこれ持ってきたから」
「ありがとう松浦くん、わざわざ持ってきてくれて」
 それで佐伯はそのりんごをみて思う所があった。
(あれ……)
「松浦くんって前にもりんご持ってきてくれたっけ?」
「いや、初めてだけど」
「そう」
 そして松浦はりんご剥き出しそのりんご二人で食べながら話し合いった後、帰っていったが家でこう思っていた。
(佐伯さん、俺が前にもりんご持ってくれたかと聞いてきたけどもしかして……)」

 次の日、松浦が病室にくると佐伯は驚いていた。
「また来たの!」
 それから松浦と佐伯は同じ趣味の漫画の話で盛り上がると話題は小説の話になった。
「そういえばクラスの人に聞いたのだけど小説も好きらしいね」
「そうだよ、昔から本が好きで読んでいたからね」
「そうだ、あと佐伯さんって小説家を目指していたんだっけ?」
 その質問に佐伯は驚いた。
「え!?何で誰にも言っていないことを知っているの!?」
(あっ、そういえば前回の時にこのことは誰にも言っていないって言っていたわ)
 だがやがて佐伯は全てを思い出した。
「あっ、思い出した……」
「りんごをもらったのを今回が初めてじゃなくて私は何回も死んでいる。それで前回の世界で松浦くんに小説家になろうとしていたことを言っていた」
「だから知っているんだね」
 松浦は今回の世界で佐伯にりんごを渡した時に前にもりんご持ってくれたかと聞いてきた時、もしかして今までの世界の記憶が残っているんじゃないかと思っていった。
(やっぱり覚えていたか)
「松浦くんはなんで世界がタイムリープしているのか知っているの?」
 松浦はこくりと頷くと佐伯はこう質問した。
「なんでなの?」
「俺がタイムリープを実行している本人だから知っているけどある人物と約束で言っちゃいけないことになっている」
 佐伯はタイムリープできることが現実世界に存在することに興奮していた。タイムリープは小説などのフィクションの中でしか存在しないと思っていたからだ。
「そういえば、前の世界で小説の賞を取ったら小説家を目指そうと思っていたんだ」
 そう言うとすぐスマホを取り出し小説を夢中で書きだした。
 夕方になると松浦は満足そうな表情をしながら家に帰るため病室を出て行った。
(今回で絶対に佐伯さんを救って見せる)
そう固い決意でそう思っていた。

そしてある日、松浦と佐伯が二人で病室にいると佐伯は小説を執筆しながらこう言ってきた。
「松浦くんさ、前の世界で私のことを好きって言ってくれたでしょ」
「え、あっ、そうだね」
松浦は恥ずかしそうに返事をした。
「私はそう言われた時は松浦くんのこと何とも思っていなかったけどこの人は私に好意を持ってくれているんだと思いながら接しているとだんだん気になっちゃって最終的に松浦くんのこと好きになっちゃったんだよね」
 そして執筆を一旦やめ松浦の顔を見ながらこう言った。
「それでよかったら私と付き合わない?」
「えっ、あっ、もちろん!」
松浦は驚きと嬉しさが同時に交じり合った感情になった。
 それからカバンから秘薬を取り出すと佐伯に栄養ドリンクと嘘をつき飲ませた。
「この味、前も飲んだな」
 そして帰り道、松浦は好きな人と付き合えて嬉しい気持ちだったがこんなことを思っていた。
(俺はもうすぐこの世界とは……)
 神様とのとある約束ごとについて考えると虚しい気持ちになりながら帰っていった。

 そしてある日、佐伯の小説が完成し賞に応募すると佐伯は不安そうな表情していると松浦はこう声をかけた。
「大丈夫、佐伯さんなら受かるって!」
 そう言われると佐伯は少し気が楽になった表情をしたかのように見えた。
 それで松浦は不安に思うことがあった。
(賞の発表は精々数ヶ月後、そこまで佐伯さん生きられるかどうか……)

 それから二人は付き合って何ヶ月記念などと毎月祝ったりして楽しく過ごしていたがやはり松浦が思っていた通り日に日に佐伯の容態が悪くなっていった。
(このままだとやばいかも)
 だが佐伯は何とか生きながらえて数ヶ月が過ぎて今日、賞の発表の日になった。
松浦は今回が四回タイムリープしてきた中で佐伯が一番生き延びていることに気付いた。
(やっぱり精神的なケアが長生きする秘訣なのかな)
 そしてついに発表の時が来て二人は鼓動が早くなった。
「じゃあ確認するよ、佐伯さん」
 そう言い手が震えながらサイトで確認をすると結果は……
「嘘だろ……」
 そこに佐伯の名前は無く松浦はショックのあまり足から崩れ落ちる。
(そんな、ついにここまで……)
 けれど佐伯は一通のメールが来ていることに気付き開いてみるとすぐさま松浦に見せた。
「これ見て!松浦くん!」
それは出版社からのメールでこう書かれていた。
《〇✕出版の斎藤と申します。賞へのご応募ありがとうございました。惜しくも受賞とはならなかったのですが、面白い作品だったと思いました、そしてその作品の書籍化のお願いをしたく連絡させてもいました》
二人はがっしりと抱き合い涙をながしながら喜んだ。
「松浦くん、私、自信がついたから小説家になる!」
「ずっと書いていたいし死にたくない!生きたい!」
そう言うと斎藤は微笑んだ表情しながらこう言った。
「よかった……」
 そして次の瞬間、松浦は倒れ帰らぬ人になりそれ見ていた神様はこう思った。
(よかったな、松浦くん。成功じゃ)
あの時、神様が松浦にもう一回チャンスをくれる条件は自分の命を犠牲にすることだった。なので佐伯が助かっても松浦は死ぬことになるのだ。
 それから佐伯は病気が治りまた学校に通い青春することができた。
 
 十年後、そこには大人気作家になった佐伯の姿があり過去を振り返っていると松浦のおかげで今の自分があると思ったのだ。
 そしてこう思っていた。
「今は思うと松浦くんがタイムリープしていたのは私のためだったのかな」
 佐伯はタイムリープがあの後、発生していないことや自分の病気が突然治ったりしたことでそう思っていた。

 ある日佐伯が天気のいい中、外へ散歩していると一匹の猫に遭遇した。
 それでその猫はこっちへきてという感じを出してきてその猫について行くと、とあるお寺に着いた。
「ここって……」
 そしてその中に入っていき猫が止まった先は松浦のお墓で佐伯はあることを思い出した。
「そういえば今日、松浦くんの命日だわ」
 佐伯は手を合わせ帰ろうとすると猫もついてきた。
(なんで私についてくるんだろう)
 佐伯と猫が一緒に歩いていると猫が突然走りだした。その走り出した先はりんごの木で猫はその木に登り、りんごを一個咥えて佐伯の前に置き差し出すとこの猫は自分がりんごを好きなことを知っているように見えた。
 それであることを思い猫にこう言った。
「もしかして松浦くん?」
 すると猫は「にゃあ」と鳴き返事をしたかのように見えた。
 その後も猫は佐伯の後をついてきて家の前まできて一行に離れようとしなかったため決意を固めその猫を飼うことにしたのだ。
「まあ私猫嫌いじゃないし」
 そして佐伯とその猫は一緒に住むことになった。

 佐伯が猫と暮らし始めたそんなある日、次回の小説の話を考えていた。
「なんかいい話ないかな……」
 そんなことを考えながら佐伯は猫の方を見ていると、とある話を思いついた。
「そうだ、私と松浦くんとの今までの思い出を元に話を書こう、タイトルは、これで」
 その佐伯の考えたタイトルはこれだ。
「君に出会えて……」

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