【Side:八雲】

「お前は玻璃(はり)と仲良しだなぁ」

「それが何?」
気が付けば玻璃(はり)と遊んでやってる壹夜は、壱花(いちか)や那砂にも懐いているが……何よりも玻璃(はり)に夢中なようだ。

今も遊んでやって、遊び疲れて寝てしまった玻璃(はり)の側にいる。

あん時は、あの白鬼の血を引くと言って拒絶しているようだったが、恐らくそれは本心じゃない。

「守ってやってたのか」
壱花(いちか)が四面楚歌で、玻璃(はり)もまた壱花(いちか)の色と、先祖返りゆえに角の色が黒く染まったこの子を。

同じ色だから。

そして同じように白鬼に虐げられる被害者だったから。

「……それは」
「まぁ、いいよ。壱花(いちか)も姉弟みたいってかわいがってるし」
いや、つか、こいつは何枠なんだろうな?那砂と壱花(いちか)と一緒の時は妹枠で玻璃(はり)と一緒の時は玻璃(はり)の姉枠である。

――――でも……壱花(いちか)がそれで幸せそうだから別にいいか。家族であることには代わりないからな。

なでなでと壹夜の頭を撫でていれば、そろそろいいだろうも手をどけられる。

「照れてんの?」
「違うから」

とは言いつつも、顔が赤い。心の声を読めば何でも分かるが……しかし、分かりやすい。

分かりやすくても嫁の声は常に聞いていたい。この前は那砂と一緒に母さんとお茶したらしいが、その時のことを思い出してめちゃくちゃ楽しそうだった。我が母ながら……ちょっと嫉妬した。

壱花(いちか)も壹夜も最近は笑顔も増えたな。ふたりとも、あの白鬼や人間の花嫁には酷い目に遭ったって言うのに。

でもまぁ、白玻(しろは)とその花嫁が壱花(いちか)と壹夜……夜霧の前にも姿を現すことはないだろう。夜霧はあいつらへの裁定が下る場にはついて来たがな。そんときの夜霧の本当の色を見た時の白鬼たちの恐怖の面よ。

その場でも夜霧には散々あることないこと言いまくってきたが、伊月に睨まれて押し黙ってこらえていた。

無論その後の裁定では、白鬼は長らく続いた頭領の座を降りることになり、伊月が手をかけていた赤鬼と青鬼、それから紫鬼が人間の領域をそれぞれ任されることになった。元々は白鬼が独占していた市場だが、複数の目が入ることで、閉鎖的だった領域にも新たな風が入る。

鬼の突然の勢力交替で……かつての壱花(いちか)の実家もでばって来たが、伊月の中臣である彼らが、主の義娘を虐げた実家などよく思うはずもない。見事に仲良く鬼の勢力域から追い出したそうだ。自慢の跡取りもいたようだが、鬼に見放されれば今までの栄華など露と消え失せる。そろって没落の一途を辿っているらしい。

それから白鬼一族は……落花生鬼神の花嫁を道具として扱ったとして、鬼社会から白い目で見られ、ほかの頭領たちに足でこき使われるようになった。もちろん壱花(いちか)に酷いことをした白鬼や、その側近たち、末端でさえ、俺の神の力が見抜いているから、そやつらは別に罪を科したので今頃泣きながら刑を受けている。鬼の寿命は長い。せいぜいその長い寿命で贖うがいい。あと、白鬼たちには夜霧たちの一族にした罪への罰も加わっているからな。当分逃げられやしない。

あと、白玻(しろは)とその花嫁には特別な罰がくだされた。生きているうちは決して出られぬ穴蔵で一生刑に服すこと。あいつらが外に出たら、壱花(いちか)玻璃(はり)も怯えるだろう?夜霧と壹夜だって。
俺は自分の家族に手を出されるのが一番嫌いなんでね。

けれど、白玻(しろは)、そしてその花嫁も白玻(しろは)と寿命を同じくし、人間ではないものになった。

――――だから、我が子孫の鬼の子らとして……特別に罪を贖うために生かしてやっている。

鬼神も落花生鬼神も……

我らが鬼の子らには……


――――特別に、慈悲深い。

【番外編・完】