電車に座る彼。最初は気にも止めていなかった彼の姿を、気にする様になったのは夏休み明けの事だ。気にする様になったのは、些細なことだった。私の好きな作家さんの本を読んでいた事、その上に何処か苦しそうな、今にも泣き出しそうな表情をしていた事。しかも、その本は女性向けの恋愛小説だったからだ。2日に一度読む本が変わるが、どれも想い人に先立たれて立ち直る話ばかりだった。