【僕の村のお稲荷様】
「雨の日に外に出てはいけないよ。」
僕の住まう村では、幼い頃からそう教えられる言い伝えがある。なんでも、雨の日は『狐の嫁入り』という儀式が行われているらしく、そんな日に外に出てしまうと狐に出会い、嫁入りの儀式に参加させられてしまうとか。雨の日に、しゃん、しゃん、という鈴の音が鳴ればその合図なんだそう。
この村では狐を『お稲荷様』と呼び、敬う。神様のような存在だ。小さいながらも大きな存在感を出している村唯一の神社にも至るところが狐で飾られている。僕はそんな神社が好きだから、よく顔を出す。
「お稲荷様、お稲荷様。どうかこの村にご加護を…。」
来るたびにそう願っている。僕が生まれる数年前から農作物は不作で、家も野生動物に荒らされる被害が起きているのだ。そんな状況を見てみぬふりできない僕は、いつかお稲荷様が願いを聞いてくださるのを信じて目を閉じ、手を合わせる。
ぽつ、ぽつ、と冷たいなにかが体に当たる。それが雨だと気づいたとほぼ同時だった。しゃん、しゃん、と音が鳴ったのだ。驚きながらも振り返ると、見慣れた姿が。ふさふさの毛を濡らしながら参道の真ん中にどんと座る狐だった。僕の意識は狐に吸い込まれていった。
「雨の日に外に出てはいけないよ。」
僕の住まう村では、幼い頃からそう教えられる言い伝えがある。なんでも、雨の日は『狐の嫁入り』という儀式が行われているらしく、そんな日に外に出てしまうと狐に出会い、嫁入りの儀式に参加させられてしまうとか。雨の日に、しゃん、しゃん、という鈴の音が鳴ればその合図なんだそう。
この村では狐を『お稲荷様』と呼び、敬う。神様のような存在だ。小さいながらも大きな存在感を出している村唯一の神社にも至るところが狐で飾られている。僕はそんな神社が好きだから、よく顔を出す。
「お稲荷様、お稲荷様。どうかこの村にご加護を…。」
来るたびにそう願っている。僕が生まれる数年前から農作物は不作で、家も野生動物に荒らされる被害が起きているのだ。そんな状況を見てみぬふりできない僕は、いつかお稲荷様が願いを聞いてくださるのを信じて目を閉じ、手を合わせる。
ぽつ、ぽつ、と冷たいなにかが体に当たる。それが雨だと気づいたとほぼ同時だった。しゃん、しゃん、と音が鳴ったのだ。驚きながらも振り返ると、見慣れた姿が。ふさふさの毛を濡らしながら参道の真ん中にどんと座る狐だった。僕の意識は狐に吸い込まれていった。