「壊れたパソコンの経緯、しっかり説明してもらおうか!学校の備品はタダではない!それもパソコンなんて高額の備品を実習生が壊すなど……前代未聞だ!」
「ま、待ってください。私は壊してません!きちんと教卓の上にパソコンを置いていました。戻って来たらパソコンが壊されていたんです!」
「言い訳は結構!パソコンが勝手に床に落ちて壊れたとでも言うのかね⁉もちろん弁償してもらうが、こんなことをして実習の単位をもらえるとは思わないでくれ!」
「そんな……」
「副校長、待ってください!僕は直前まで澤村先生とこの教室にいて、パソコンの状態も見ていますが、確かに彼女の言う通り、しっかり教卓の上に置いてありました」
「高岡先生!教え子だからと庇われては困ります!」
困り果てる私の横から高岡先生が援護するが、副校長は聞く耳を持たない。教頭は黙って考え込んでいる。口論している様子を遠巻きに見学していた実習生たちがひそひそ話ながら見ていた。佐々木は私が責められるほど、愉悦を感じた表情を浮かべていた。飯森は心配そうに私に視線を送っている。心細くて一ノ瀬の姿を探している自分がいた。長身で目立つはずなのに一ノ瀬の姿が見えない。ちら、と視線を動かすと一ノ瀬は教室後方の棚の近くで隠れるように何かしていた。
「聞いているのか!」
副校長の怒鳴り声に私はびくりと肩を震わせて、反射的に頭を下げる。
「すいません、でも、本当に私じゃないんです……」
見えないけれど、きっと佐々木はこの姿を見てせせら笑っているのだろう。悔しくて、唇を噛みしめる。
十分の休み時間が終わって、再びチャイムが鳴る。すると、高岡先生が私と副校長の間に割って入った。
「副校長、とりあえずその話はここまでにしましょう。検討会の時間です」
高岡先生に何度も促されて、副校長は渋々、身を引いた。教室の机をロの字に並べ替えて、教員とその後ろに実習生が座り、検討会が始まった。
パソコンのこともあって、殺伐とした空気で検討会は進んでいく。まずはそれぞれの教員から授業の感想や気になった点が述べられる。その後、質問や改善点の指摘がなされる。
「仕上げ作業の説明のスライドで気になるところがあったのですが、表示してもらえますか?」
「はい、今表示しました。」
「そうそう、このスライドの画像の部分なんですが……」
授業についてたくさんの質疑応答があり、その度に四苦八苦しながら応答した。想像通り、ダメ出しの嵐だった。けれど褒められた部分もあった。最後の作品紹介だった。
「最後の吉田君と清水さんの作品にスポットを当てたのは素晴らしかったですね。彼らの話を聞いて、自分の作品を改めて見返した生徒もいたんじゃないかと思います。彼らからあの素敵な感想を引き出せたのは、澤村先生が初回から丁寧に生徒の気持ちに寄り添って授業をしていたからだと私は感じましたよ」
家庭科の見るからに優しそうな中年の女性教員は私を励ますように優しい口調で言った。高岡先生もその言葉を聞きながら頷いていた。
「もうすぐ終了時間ですね。最後に質問や意見はある方は挙手を」
高岡先生が時計を見ながら言うと、すっと手が挙がった。手を挙げていたのは、佐々木美希だった。誰もが驚いた顔をする。何故なら、検討会では基本的に実習生はオーディエンスで発言をしないからだ。
「えーと……佐々木先生、だったかな?」
「はい、質問があるんですけど、いいですかぁ?」
佐々木は私を見て、嘘くさくて愛らしい笑みを浮かべる。
「澤村さんが授業前にパソコン壊しちゃったってきいたんですけどぉ、なんで壊しちゃったんですかー?」
私は怒りで机の下で握った拳は震えていた。言葉が出てこなかった。
「その件について、発言させてください」
「ま、待ってください。私は壊してません!きちんと教卓の上にパソコンを置いていました。戻って来たらパソコンが壊されていたんです!」
「言い訳は結構!パソコンが勝手に床に落ちて壊れたとでも言うのかね⁉もちろん弁償してもらうが、こんなことをして実習の単位をもらえるとは思わないでくれ!」
「そんな……」
「副校長、待ってください!僕は直前まで澤村先生とこの教室にいて、パソコンの状態も見ていますが、確かに彼女の言う通り、しっかり教卓の上に置いてありました」
「高岡先生!教え子だからと庇われては困ります!」
困り果てる私の横から高岡先生が援護するが、副校長は聞く耳を持たない。教頭は黙って考え込んでいる。口論している様子を遠巻きに見学していた実習生たちがひそひそ話ながら見ていた。佐々木は私が責められるほど、愉悦を感じた表情を浮かべていた。飯森は心配そうに私に視線を送っている。心細くて一ノ瀬の姿を探している自分がいた。長身で目立つはずなのに一ノ瀬の姿が見えない。ちら、と視線を動かすと一ノ瀬は教室後方の棚の近くで隠れるように何かしていた。
「聞いているのか!」
副校長の怒鳴り声に私はびくりと肩を震わせて、反射的に頭を下げる。
「すいません、でも、本当に私じゃないんです……」
見えないけれど、きっと佐々木はこの姿を見てせせら笑っているのだろう。悔しくて、唇を噛みしめる。
十分の休み時間が終わって、再びチャイムが鳴る。すると、高岡先生が私と副校長の間に割って入った。
「副校長、とりあえずその話はここまでにしましょう。検討会の時間です」
高岡先生に何度も促されて、副校長は渋々、身を引いた。教室の机をロの字に並べ替えて、教員とその後ろに実習生が座り、検討会が始まった。
パソコンのこともあって、殺伐とした空気で検討会は進んでいく。まずはそれぞれの教員から授業の感想や気になった点が述べられる。その後、質問や改善点の指摘がなされる。
「仕上げ作業の説明のスライドで気になるところがあったのですが、表示してもらえますか?」
「はい、今表示しました。」
「そうそう、このスライドの画像の部分なんですが……」
授業についてたくさんの質疑応答があり、その度に四苦八苦しながら応答した。想像通り、ダメ出しの嵐だった。けれど褒められた部分もあった。最後の作品紹介だった。
「最後の吉田君と清水さんの作品にスポットを当てたのは素晴らしかったですね。彼らの話を聞いて、自分の作品を改めて見返した生徒もいたんじゃないかと思います。彼らからあの素敵な感想を引き出せたのは、澤村先生が初回から丁寧に生徒の気持ちに寄り添って授業をしていたからだと私は感じましたよ」
家庭科の見るからに優しそうな中年の女性教員は私を励ますように優しい口調で言った。高岡先生もその言葉を聞きながら頷いていた。
「もうすぐ終了時間ですね。最後に質問や意見はある方は挙手を」
高岡先生が時計を見ながら言うと、すっと手が挙がった。手を挙げていたのは、佐々木美希だった。誰もが驚いた顔をする。何故なら、検討会では基本的に実習生はオーディエンスで発言をしないからだ。
「えーと……佐々木先生、だったかな?」
「はい、質問があるんですけど、いいですかぁ?」
佐々木は私を見て、嘘くさくて愛らしい笑みを浮かべる。
「澤村さんが授業前にパソコン壊しちゃったってきいたんですけどぉ、なんで壊しちゃったんですかー?」
私は怒りで机の下で握った拳は震えていた。言葉が出てこなかった。
「その件について、発言させてください」