八月の雨の日、朝校門へ着くと、日向とばったり会った。彼女とばったり会うことが多すぎる。教室へ入った時、空気が異常に悪かった。学級委員の夕凪が仲良くしている人、クラスメイトに叩かれそうになっていた。なぜかは知らないけれど。俺の後ろにいた日向が、息を呑む音がする。日向は走って夕凪のもとへ向かっていった。俺も何故か日向の見たこともない必死な表情を見たら、手が動いていた。日向は、夕凪の前に庇うように立つと、大きく腕を広げていた。俺は、夕凪の仲の良い女の腕をひねり上げていた。日向の机には、沢山の悪口が水性のマーカーで書かれていた。流石に酷くないかと思わず顔をしかめる。その時、夕凪が泣き崩れた。日向に向かって、謝罪をしている。どうやら全然接点のなかった二人は幼馴染みだったようだ。日向の名前は向日葵という名らしい。名は体を表すってのは、嘘だったのかと自分の席に座ろうとした時だった。日向が啜り泣く声が聞こえた。思わず後ろを振り返る。すると、そこには氷のような少女はもうどこにも居なくて、大粒の涙を流しながら微笑む日向の姿があった。その涙と笑顔に心臓が大きく跳ねた。この世の人とは思えない美しさに息を呑む。日向向日葵ー。彼女によく似合う名前だ。それから、彼女の涙と笑顔は、初恋の女の子よりも綺麗だった。
そんな事件から、もう十日ほど経った。日向は、夕凪と一緒にいることが多く、穏やかな少女になった。まだ、そんなにすぐには表情が戻る訳では無いが。彼女の笑顔に心揺さぶられたことは確かだった。そんなことに気をかけていたせいだろうか。あの人の事を忘れていた。
そんな事件から、もう十日ほど経った。日向は、夕凪と一緒にいることが多く、穏やかな少女になった。まだ、そんなにすぐには表情が戻る訳では無いが。彼女の笑顔に心揺さぶられたことは確かだった。そんなことに気をかけていたせいだろうか。あの人の事を忘れていた。