小一時間ほど彼女の質問攻めに付き合っていたけれど、小夜の勢いは一向に衰えそうにない。話し慣れていない僕にとっては普段の散歩よりも三倍は疲れる。

「少しあの公園で休憩しよう」

「良いね。あれに座ろう。お腹がひゅんってなるやつ」

そう言って小夜はブランコの方に走り、軽快に飛び乗って漕ぎ始めた。

「ちゃんと漕げるんだ」

「意識すれば触れられるよ。ほら」

そう言って、小夜は僕の手を握った。

「でも意識し続けるのは苦手。だってすぐに疲れちゃうから。ほら」

「すり抜けた……」

「そう。こっちの方が自然体なんだから、困っちゃうよね」

さっきまでちゃんと感触があったのに、彼女の指先はまるでCGのように僕の手をすり抜けた。

握られている感触はなくなってしまったけれど、交わった部分は温かい空気に触れているような感覚が残っている。彼女がきちんと生きているんだってことがはっきりと伝わってきた。

「小夜はどこから来たの?」

小夜は人差し指を口に当てた。

「内緒。私と会ったことも誰にも話さないでね」

何となく誰かに小夜のことを話してしまったら消えてしまうような気がしたから、だから僕は迷わず頷いた。