「ちょ……危ないって」
そこでようやく少し離れた先にある踏切が鳴っていることに気が付いた。
この状況はかなりまずい。
ガードレールから身を乗り出して彼女を追い返そうと試みるも、さすがに飛び越えて身を投げ出すまでの勇気なんて持ち合わせていない。
だからせめてありったけの声で「来るな!」と、言葉で彼女を押し戻そうとした。
でも、遅かった。
僕の声は、あっという間に轟音によってかき消された。
目の前を大きな鉄の塊が通過する。間近で受ける風圧が生きた心地を奪う。
……。
再び静寂が訪れる。
無意識に閉じた目を開けると、数秒前の景色と何も変わっていなかった。
彼女は線路の真ん中で、きょとんとした表情で僕を見つめている。
まず思ったのが、無事で良かった。
その次に思ったのが、やっぱり幽霊じゃないかこのやろう、だ。
「びっくりしたあ……」
「それはこっちの台詞だ。やっぱり君は幽霊じゃないか」
さすがに「このやろう」は言い過ぎだから端折っておく。
「だから違うってば。私はちゃんと生きてるよ」
「目の前で列車に轢かれた、いや、列車をすり抜けた君を見て、普通の人間だと思えと言う方が無理がある」
「とにかく……!私は幽霊なんかじゃないから」
頑なに認めようとしないくせに、正体を隠すのが面倒になったのか、彼女は僕の目の前にあるガードレールをそのまますり抜けてこちら側にやってきた。
そこでようやく少し離れた先にある踏切が鳴っていることに気が付いた。
この状況はかなりまずい。
ガードレールから身を乗り出して彼女を追い返そうと試みるも、さすがに飛び越えて身を投げ出すまでの勇気なんて持ち合わせていない。
だからせめてありったけの声で「来るな!」と、言葉で彼女を押し戻そうとした。
でも、遅かった。
僕の声は、あっという間に轟音によってかき消された。
目の前を大きな鉄の塊が通過する。間近で受ける風圧が生きた心地を奪う。
……。
再び静寂が訪れる。
無意識に閉じた目を開けると、数秒前の景色と何も変わっていなかった。
彼女は線路の真ん中で、きょとんとした表情で僕を見つめている。
まず思ったのが、無事で良かった。
その次に思ったのが、やっぱり幽霊じゃないかこのやろう、だ。
「びっくりしたあ……」
「それはこっちの台詞だ。やっぱり君は幽霊じゃないか」
さすがに「このやろう」は言い過ぎだから端折っておく。
「だから違うってば。私はちゃんと生きてるよ」
「目の前で列車に轢かれた、いや、列車をすり抜けた君を見て、普通の人間だと思えと言う方が無理がある」
「とにかく……!私は幽霊なんかじゃないから」
頑なに認めようとしないくせに、正体を隠すのが面倒になったのか、彼女は僕の目の前にあるガードレールをそのまますり抜けてこちら側にやってきた。