「瞬君にとって兄妹ができるって、どんな感じ?」

「複雑な気持ちもあった、かな」

僕は抱いていた正直な気持ちを告白する。

「複雑な気持ち?」

「別に父親が違うからって僕の妹であることは変わらない。なのにどうしてか、時々どう処理すれば良いのかわからない感情が湧いてきてたんだ」

家族構成が変わるということは、良くも悪くも今まで保っていた生活スタイルが大きく変わってしまう。

大きな拒絶はなかったけれど、一平さんが家族になったことの影響は少なくはなく、一緒に暮らし始めた頃は何度も体調を崩していた。

決して一平さんのことが嫌いなわけじゃない。けれど、心の奥底では他人と思ってしまっている部分が確かに残っている。

この気持ちが悪さをしないように、家にいる時は、いつもどこかで気を張っていた。

「瞬君は、妹がいない方が良かったの?」

小夜はなぜか声を震わせていた。

「そんなわけないじゃん」

本当はそう思ってしまうんだと思っていた。

でも、実際はそうじゃなかった。

「でも、不思議なものでさ、いよいよ産まれてくるってなると、早く会いたくてしょうがなくなるんだ」

「妹さんは、産まれて来ても良いのかな」

「当たり前じゃん」

「そっか。うん、そっか」

小夜は噛み締めるように何度も頷いた。

「どうして小夜が泣いているの?」

「心配いらないよ。私、決心が付いたの」

気が付くと小夜の身体は段々と透明になってきた。見間違いじゃない。さっき車のライトがこっちを向いた際に、光が小夜の身体を貫いて僕を照らしていた。

いよいよ小夜は消えてしまう。そう思った。

だったらせめて、彼女の口からさよならの言葉を聞いておきたい。

「もう会えないんだね」

「ううん。これからは毎日会えるよ。お兄ちゃん」

「……小夜、君は一体」

「実は私は、君の妹。今君のお母さんのお腹の中にいるんだ」

「……え?」