「瞬君、大丈夫?」

「わっ!」

「私だよ」

「無事だったんだ」

「うん。瞬君が教えてくれたおかげで、警備員さんがこっちに来たことがわかったの。でもこのままだと瞬君が見つかっちゃうと思って、机を叩いてこっちの方に気を引いたの。警備員さんは鍵を開けて教室に入ってきたんだけど、教室を見回してたらすぐに外の方に行ったよ」

「もしかして、小夜は僕以外の人間からは見えないの?」

「私、明るいところだと相手から見えなくなるみたい。あの時警備員さんはすぐに電気を付けたから助かったんだ」

彼女は間一髪のところで難を逃れていた。身体を張って護られていたのは僕の方だった。

「ありがとう。でも、あまり無茶しなくて良いよ。もし小夜が見つかったら、どうなっていたのかわからないし」

「大丈夫、姿が見られても、私の身体には触れられないから捕まらないよ」

なぜか()(たま)れない気持ちになった。明るいところでは姿が見えず、意識しなければ触れることすら許されない。僕ならそんな身体に堪えられない。

「そろそろ帰ろう。これ以上誰かに迷惑をかけちゃいけない」

怖気付いていたと言われたら、多分そうだと思う。今は好奇心よりも、とにかく何事もなく家に帰らなければいけないという使命感の方が強くなっている。

「じゃあさ、最後に図書室に連れていって。瞬君の思い出の場所を見てみたい。せっかくここまで来たんだし」

図書室は二階の反対側にある。小夜が言った通り警備員さんは外に行ったのであれば、多少の寄り道をする時間はあるだろう。それに、確かめたいことがあった。

僕らは警備員さんが戻ってこないか警戒しながらではあったが、無事に図書室の入り口まで辿り着くことができた。

早速扉の向こう側に抜けた小夜は、歓声を上げるように僕に報告した。