「まずいっ……」

反射的に何が起こったのかを理解する。警備の人に見つかってしまったんだ。

僕は咄嗟(とっさ)にスマホのライトを自分の服に押し付け、その場にしゃがみこむ。

窓の向こうから硬めの靴底が砂利を蹴る音が迫って来る。

「小夜……!警備員さんに見つかった。撤収しよう……!」

「え?瞬君、聞こえない。何か言った?」

「見つかったんだって……」

昇降口の鍵が開けられた。

昇降口から一直線に続く廊下に出たら、僕の姿なんて簡単に見つかってしまう。

「小夜……!黒板の近くに大きい机があるはずだから、その陰に隠れてて!」

小夜には申し訳ないけれど、僕はこんなところで捕まるわけにはいかない。

僕以外の人間から見ることができなのだったら問題ないけれど、そうでなければ小夜の身も危険になる可能性がある。

だったら鍵がかかっているこの教室に隠れている方が安全だ。教師用の事務机は引き出しが付いているはず。その向こう側に身を隠していれば、なんとかやり過ごせるかもしれない。

小夜には悪いけれど、ここは一旦自分自身の保身を最優先にさせてもらおう。

僕は小夜を残して階段の方に走り、一段飛ばしで階段を駆け上がった。

ちょうどその時、背後から「誰だ!」という鋭い声が背中を突き刺した。僕は怖くなって無心で一気に三階まで駆け上がった。

あらためて自分達が行ったことの重大さに気が付いた。

上り終えるとすぐに無酸素で階段を駆け上がったつけが回ってきたのか、緊張と疲労で情けないほどに震えていた。

しばらくその場にしゃがみ込み、暴れている心臓を(なだ)める。小夜は大丈夫だろうか。