「やった。成功!」
念の為に扉の鍵は再び閉めておく。証拠はできるだけ残さない方が良い。僕らは真夜中に不法侵入をしていることを忘れてはいけない。
「靴を脱ぐの?」
「この学校の生徒だったら上履きに履き替えるんだけど、僕らは部外者だからね」
「たくさんあるから、一つ借りたら?」
「そこまではできないよ」
「わかった!」
「小夜は大丈夫だよ」
「私も脱ぐよ。お行儀悪いもんね」
靴を脱いだ小夜は真っ白な素足を見せた。
脱いだ靴はすうっと透明になり、やがて消えてしまった。
「どうしたの?」
「い、いや、靴が透明になったから不思議だなと思って。ほら、行こう」
咄嗟に吐いた嘘を誤魔化すように僕は先に進む。小夜は慌てて僕の後を追ってきた。
窓越しに光が漏れないように気を付けながら、スマホのライトを頼りに薄暗い廊下を進んでいく。もしここで警備員さんにも鉢合わせしたら、相手からは僕の姿だけが見えていることになるのだろうか。
当たり前のように教室の扉は全て施錠されているけれど、僕らはもう突破方法を知っているから問題ない。
「入りたいところがあったら私に言ってね。開けてあげる」
自分の能力に味を占めたのか、小夜は自身たっぷりにそう言った。
でも、よく考えると小夜の能力を悪用すれば、大抵のところに侵入できてしまうんじゃないか。もちろん僕は犯罪者になんてなりたくないし、そんなことに小夜を使いたくもない。
ただ、今の小夜の好奇心を無碍にもしたくはない。僕は目の前の教室を指差しておいた。
「それじゃあ、ここにしようか」
「おっけー」
どうせすぐに飽きるだろう。
小夜はさっき昇降口に侵入したのと同じ要領で、扉の向こう側にすり抜ける。
「あれ、鍵が見当たらないよ」
「あ、そうか。内鍵が付いていないんだ」
「どうして?」
「生徒が中から鍵をかけて閉じ込こまらないようにしているんだ」
「先生が入って来れないようにするんだね」
「まあ、合鍵があるからずっと閉じこもることはできないだろうけど。ほら、僕はここで待ってるから、中を見てきな」
「わかった。絶対だよ」
小夜は机の数を数えたり、黒板に書いてある言葉を読み上げたりして、何の変哲もない教室を存分に楽しんでいた。
姿を見ることができないのは残念だけれど、扉越しに聞こえてくる彼女の声を聞いているだけで容易に姿が浮かんできた。
小夜が満足するまでもう少し時間がかかりそうだ。
入口の隣にある掲示板を見てみると、中間テストの順位表が貼ってあった。おもむろにスマホのライトで照らしてそれを眺めてみると、掲示されているのは上位三十人だけで、全教科満点で学年一位を取った生徒が三人もいた。
途端に、背後からライトの光が掲示板を横切った。
完全に油断していた。
念の為に扉の鍵は再び閉めておく。証拠はできるだけ残さない方が良い。僕らは真夜中に不法侵入をしていることを忘れてはいけない。
「靴を脱ぐの?」
「この学校の生徒だったら上履きに履き替えるんだけど、僕らは部外者だからね」
「たくさんあるから、一つ借りたら?」
「そこまではできないよ」
「わかった!」
「小夜は大丈夫だよ」
「私も脱ぐよ。お行儀悪いもんね」
靴を脱いだ小夜は真っ白な素足を見せた。
脱いだ靴はすうっと透明になり、やがて消えてしまった。
「どうしたの?」
「い、いや、靴が透明になったから不思議だなと思って。ほら、行こう」
咄嗟に吐いた嘘を誤魔化すように僕は先に進む。小夜は慌てて僕の後を追ってきた。
窓越しに光が漏れないように気を付けながら、スマホのライトを頼りに薄暗い廊下を進んでいく。もしここで警備員さんにも鉢合わせしたら、相手からは僕の姿だけが見えていることになるのだろうか。
当たり前のように教室の扉は全て施錠されているけれど、僕らはもう突破方法を知っているから問題ない。
「入りたいところがあったら私に言ってね。開けてあげる」
自分の能力に味を占めたのか、小夜は自身たっぷりにそう言った。
でも、よく考えると小夜の能力を悪用すれば、大抵のところに侵入できてしまうんじゃないか。もちろん僕は犯罪者になんてなりたくないし、そんなことに小夜を使いたくもない。
ただ、今の小夜の好奇心を無碍にもしたくはない。僕は目の前の教室を指差しておいた。
「それじゃあ、ここにしようか」
「おっけー」
どうせすぐに飽きるだろう。
小夜はさっき昇降口に侵入したのと同じ要領で、扉の向こう側にすり抜ける。
「あれ、鍵が見当たらないよ」
「あ、そうか。内鍵が付いていないんだ」
「どうして?」
「生徒が中から鍵をかけて閉じ込こまらないようにしているんだ」
「先生が入って来れないようにするんだね」
「まあ、合鍵があるからずっと閉じこもることはできないだろうけど。ほら、僕はここで待ってるから、中を見てきな」
「わかった。絶対だよ」
小夜は机の数を数えたり、黒板に書いてある言葉を読み上げたりして、何の変哲もない教室を存分に楽しんでいた。
姿を見ることができないのは残念だけれど、扉越しに聞こえてくる彼女の声を聞いているだけで容易に姿が浮かんできた。
小夜が満足するまでもう少し時間がかかりそうだ。
入口の隣にある掲示板を見てみると、中間テストの順位表が貼ってあった。おもむろにスマホのライトで照らしてそれを眺めてみると、掲示されているのは上位三十人だけで、全教科満点で学年一位を取った生徒が三人もいた。
途端に、背後からライトの光が掲示板を横切った。
完全に油断していた。