「もちろん楽しいこともあったよ」

「どんなこと?」

「見ず知らずの友達と手紙をやり取していたんだ」

「何それ!詳しく教えて!」

咄嗟(とっさ)に出てきたこの話は嘘ではない。

胸の奥深くに留めておきたいことでもあったけれど、この手の話題の方が小夜を楽しませることができると思った。案の定、小夜の表情はすぐに明るくなった。

すっかり元気を取り戻した小夜は、時々スキップをしたり、その場でくるりと回ってスカートを靡かせたりしながら歩いていた。

けれど足音は僕のものだけしか聞こえてこない。真夜中の散歩は静かだ。