「トニー、ごめん! 私、トニーがずっと好きだったのに、トニーの好きが信じられなかったの! だから……だから帰り際にあんなこと言っちゃった……! それに、私がトニーを信じられないからトニーに嘘をつかせちゃった……! 本当にごめんなさい!」

小雪は勢い良く彼に頭を下げる。彼女から糾弾されるとばかり思っていた彼は灰青をぱちくりさせた。

「コユキ……怒ってないの?」

「違うよ! むしろトニーに申し訳ないわ。私がトニーの好きを信じられてたなら、トニーが遠回しに愛してるなんて言わなかったと思うもん! フランス語の先生に、またねじゃなくて愛してるって意味だって聞いてから後悔したわ! そりゃ最初は何で違う意味教えたのかって思ったけど! でも……嬉しかった。愛してるって教えてくれたことそのものが私には嬉しかったの!」

思いがけない彼女の告白を彼は呆然として聞いていたが、彼は小雪を抱き締めて思わず涙ぐんだ。

「コユキ、ボクもごめん……ちゃんと正直に教えたら良かったのに、変な意地を張って嘘を教えてしまったから……それでもフランス語を知って、ボクの教えた言葉を分かってくれて、ボクの思いも分かってくれて……嬉しい以外に言葉が見つからないよ。嘘でも愛してるって言葉をコユキから聞くのは嬉しかったけど、コユキの気持ちを考えてなかったなって後悔したんだ……コユキ、ボクが気持ち悪くないの?」

「そんなことないよ! 私はあの言葉の意味を知れてむしろ嬉しかったのに! 私は自分の気持ちに蓋をしなくてもいいって思えたのよ!」

「……ありがとう、コユキ。ボクも君が好きなんだ……! あんな形で伝えることになってごめん……! でもコユキ、ボクは君を誰よりも愛しているんだ(Tu me fais craquer)!」

小雪の視界が瞬時にぼやけたが、彼女は力強く首肯した。

「ありがとう、トニー……! 本当に嬉しい……! 夢みたい……! 私も愛してるの(Moi aussi)!」

「コユキ……ッ!」

トニーは彼女を引き寄せ、抱き留める腕に力を込めた。彼女が涙したのは驚いたが、それ以上に彼女が自分の想いを受け止めてくれたことに対しての喜びが勝り、心の底から歓喜で震え、彼女の温もりを離したくない一心で、すすり泣く彼女の背中を何度も何度も擦った。