そう言ってしまいたかった。だけど私はこれ以上怒られたくなかったから黙っていた。そんな自分にも嫌気が差した。どうせ嫌われているのだから言えばいいのに。

お風呂から出て部屋に戻るとすぐ寝た。だから朝起きて後悔した。髪は乾かしてないからボサボサだし、学校に行く準備も出来ていない。溜息をつきながら順番にやっていった。

一階に降りると母親が靴を履き替えている所だった。気づかれないようリビングに入ろうとしたが運悪くこちらを向いてしまった。

「あら、おはよう。」

「おはよう...」

「今日からバイトでしょ?夕飯は作り置きを作ってあるから。なくなったら教えて。」

「はい。」

「その代わり、約束は守りなさいよ。」

「わかってます。」

「そう。ならいいわ。」

母親は素っ気なく頷くと家を出た。彗や姉さんと会話する時は笑顔なのに。私には笑いかけてもくれない。

私って、なんの為に生きているのだろう。皆、なんの為に生きているのだろう。

そんな考えても仕方のない事を考えながら学校に向かった。

学校に着き廊下を歩いているとヒソヒソ言われているのがわかった。それもそうか。昨日、純が私の事助けたんだから。格好良い人が私みたいな平凡な人を助けるなんて、ヒソヒソ言われても仕方ない。

教室に入るとクラスメイトの視線が私に集まった。ヒソヒソ言う人もいれば、わざと大声で話す人もいた。なんで一緒に帰っただけでこんな言わなければいけないのだろう。しかも一緒に帰るってなったのは純が勝手について来たからなのに。不可抗力だ。

「おはよー」

俯いて本を読んでいると、純が教室に入って来た。そうしたらクラスの一人が純のそばに行き、

「純って田辺と付き合ってんの?」

ストレートに聞いた。クラスは純の反応を待って静かだ。

「いや?幼なじみなだけだよ。」

「ならなんで昨日一緒に帰ったの?帰る前肩を支えているようにも見えたけど。」

ズイっと、女子が割って入った。ああいうのは返答次第で私に対する態度が変わる。

「あれは桜が倒れそうだったから助けたんだよ。一緒に帰ったのは家が同じ方向にあるから。」

「じゃあ田辺さんのことはなんとも思ってないの?」

「それは秘密だよ。それに言う必要ある?俺の自由じゃん。」

最もな事を言われ、女子は何も言えなくなっていた。純はそんなの気にも留めず、私の所に来た。

「おはよ、桜。体調どう?」