入院病棟に入ると、桜の事を思い出す。そして偶然、今向かっている病院は昔桜が使っていた個室だった。
「失礼します。」
ドアをノックするが返事はない。だから入る事にした。ここで引き下がったら、心なんて開けない。
ドアを開けると少女がベットの上に座って外を見ていた。その姿が桜に想いを伝えに行った時と重なった。
「こんにちは。」
声を掛けると、少女はやっと俺の方を向いた。その顔も、桜に似ていた。桜の生まれ変わりではないかと思うほど。
「誰?」
「初めまして。今野純です。今日から君の担当をします。よろしく。」
「よろしくお願いします。ねぇ純先生。」
少女はすぐに俺の名を呼んでくれた。全てが桜に似ていて泣きそうになった。
「何?」
「私、生きてるのが辛い。だから病気なんて治さないで。」
あぁ、この子も桜と一緒だ。生きてるのが辛いから、このまま死んでしまいたい。だったら、俺がこの子の生きる意味になろう。
「先生の彼女もね、君と同じ病気だったんだ。」
「え?」
「初対面で申し訳ないんだけど、その彼女の話聞いてくれる?」
「いいですよ。」
俺は少女の隣に座り、桜と過ごした日々を話した。少女は真剣に聞いてくれた。自分と重なる所もあるのだろう。
「俺は彼女が亡くなった時、もうこんな思い誰にもさせないって決めたんだ。だから医者になった。」
「でも私には桜さんみたいに傍に居てくれる人、居ませんよ。」
「俺が傍に居る。君の生きる意味になる。だから一緒に病気、治そう。」
「純先生...」
少女は俺に飛びつくと大泣した。今まで沢山我慢してきたのだろう。それが桜に似ていて、力強く抱きしめ返した。
「先生、ありがとう。私、治療頑張る。先生の彼女の分まで生きるよ。だから傍に居てね。」
泣き終えた少女の顔は明るく、とても可愛かった。
「無理はしないでね。俺、君が治るまで離れないから。」
「うん、ありがとう。」
この少女は自分を肯定してくれる人が欲しかったのだろう。他の先生は気休めの言葉しかかけなかったから心を開いてくれなかったのかもしれない。俺は本気でこの子が治るまで傍に居ようと思う。
「桜が綺麗だな。」
少女と一緒に外を見る。この病室からは桜が見える。確か桜が亡くなる直前、桜が綺麗と言っていた。この桜が見えていたのだろうか。
「うん、綺麗だね。ね、先生。その言葉の意味知ってる?」
「え?どういう事?」
驚いている俺をよそに、少女は立ち上がって窓枠に手をかけた。
「ほら、月が綺麗ですねって言葉の意味はあなたの事が好きって意味があるじゃん?」
「あぁ、有名だね。」
「それと一緒で、桜が綺麗って言葉にも意味があって、それがまたここで会いましょうって意味なんだよ。」
その言葉を聞いて、今度こそ涙を我慢できなかった。
なにがまたここで会いましょうだよ。会ったら病気になっているではないか。でも桜がまた会おうと約束してくれたから、多分同じ場所でこの少女に出会えたのだ。何もかもがそっくりな、少女...遥に。
遥はもしかしたら桜の生まれ変わりなのかもしれない。
「先生、どうしたの?」
「なんでもないよ。花粉で目がやられた。」
「今年もすごいからねー」
桜、俺と付き合ってくれてありがとう。俺を好きになってくれてありがとう。俺はまだ当分そっちにはいかなそうだから、俺が行くまで待ってて欲しい。そして今度こそ結婚しよう。
─ありがとう。待ってるね。─
窓から入ってきた桜の花びらと共に、桜の声が聞こえた。俺は花びらにキスをして、遥の病室を出た。
今日も俺は人を救う。もう誰にも悲しい思いをさせない為に。
「失礼します。」
ドアをノックするが返事はない。だから入る事にした。ここで引き下がったら、心なんて開けない。
ドアを開けると少女がベットの上に座って外を見ていた。その姿が桜に想いを伝えに行った時と重なった。
「こんにちは。」
声を掛けると、少女はやっと俺の方を向いた。その顔も、桜に似ていた。桜の生まれ変わりではないかと思うほど。
「誰?」
「初めまして。今野純です。今日から君の担当をします。よろしく。」
「よろしくお願いします。ねぇ純先生。」
少女はすぐに俺の名を呼んでくれた。全てが桜に似ていて泣きそうになった。
「何?」
「私、生きてるのが辛い。だから病気なんて治さないで。」
あぁ、この子も桜と一緒だ。生きてるのが辛いから、このまま死んでしまいたい。だったら、俺がこの子の生きる意味になろう。
「先生の彼女もね、君と同じ病気だったんだ。」
「え?」
「初対面で申し訳ないんだけど、その彼女の話聞いてくれる?」
「いいですよ。」
俺は少女の隣に座り、桜と過ごした日々を話した。少女は真剣に聞いてくれた。自分と重なる所もあるのだろう。
「俺は彼女が亡くなった時、もうこんな思い誰にもさせないって決めたんだ。だから医者になった。」
「でも私には桜さんみたいに傍に居てくれる人、居ませんよ。」
「俺が傍に居る。君の生きる意味になる。だから一緒に病気、治そう。」
「純先生...」
少女は俺に飛びつくと大泣した。今まで沢山我慢してきたのだろう。それが桜に似ていて、力強く抱きしめ返した。
「先生、ありがとう。私、治療頑張る。先生の彼女の分まで生きるよ。だから傍に居てね。」
泣き終えた少女の顔は明るく、とても可愛かった。
「無理はしないでね。俺、君が治るまで離れないから。」
「うん、ありがとう。」
この少女は自分を肯定してくれる人が欲しかったのだろう。他の先生は気休めの言葉しかかけなかったから心を開いてくれなかったのかもしれない。俺は本気でこの子が治るまで傍に居ようと思う。
「桜が綺麗だな。」
少女と一緒に外を見る。この病室からは桜が見える。確か桜が亡くなる直前、桜が綺麗と言っていた。この桜が見えていたのだろうか。
「うん、綺麗だね。ね、先生。その言葉の意味知ってる?」
「え?どういう事?」
驚いている俺をよそに、少女は立ち上がって窓枠に手をかけた。
「ほら、月が綺麗ですねって言葉の意味はあなたの事が好きって意味があるじゃん?」
「あぁ、有名だね。」
「それと一緒で、桜が綺麗って言葉にも意味があって、それがまたここで会いましょうって意味なんだよ。」
その言葉を聞いて、今度こそ涙を我慢できなかった。
なにがまたここで会いましょうだよ。会ったら病気になっているではないか。でも桜がまた会おうと約束してくれたから、多分同じ場所でこの少女に出会えたのだ。何もかもがそっくりな、少女...遥に。
遥はもしかしたら桜の生まれ変わりなのかもしれない。
「先生、どうしたの?」
「なんでもないよ。花粉で目がやられた。」
「今年もすごいからねー」
桜、俺と付き合ってくれてありがとう。俺を好きになってくれてありがとう。俺はまだ当分そっちにはいかなそうだから、俺が行くまで待ってて欲しい。そして今度こそ結婚しよう。
─ありがとう。待ってるね。─
窓から入ってきた桜の花びらと共に、桜の声が聞こえた。俺は花びらにキスをして、遥の病室を出た。
今日も俺は人を救う。もう誰にも悲しい思いをさせない為に。