「桜、起きろ。」

「ん...純。」

次に目が覚めたのは純の声でだった。でも場所がおかしい。病院ではなく、どこかの家なのだ。そして今目の前にいる純も大人っぽくなっている。

「ここどこ...?」

「何寝ぼけた事言ってんだよ。ここは俺達の家だろ?」

そんな桜も可愛いと言い着替える純をただ眺める事しか出来ない。どうして私達は一緒に暮らしてるの?私、病院で倒れたのに。

「純、私って病気治ったの?」

「は?何言ってんの?桜は病気だった事一度もないだろ。」

「え...」

そんな事ない。私は難病で、純はそれをわかった上で付き合ってくれた。でも純を見る限り、嘘をついている様子はない。

ここはどこなの?私はどこに来たの?わからない事が多すぎて内心パニックになっていると。

「桜、俺達は学生時代から付き合ってて、ついこの間結婚式を挙げたんだよ。ほら、この写真立て見てみれば思い出すんじゃない?」

着替え終わった純が写真立てを持って私の隣に座った。その写真立ての中には確かに私と純、純の両親と私の家族が映っていた。

「ほんとだ。でも私、家族に捨てらたんだよ。」

「え?桜の家族、みんな仲良いって自慢してたじゃん。」

「嘘...」

そんな訳ない。私はあの夏の日、母親にいらないと言われたのだ。間違えるはずない。だけどこの写真には紛れもなく家族が映っている。

「嘘じゃないよ。俺がそんな事で嘘つく訳ないじゃん。」

「でも本当に私は家族に捨てられて、難病だったんだってば。」

「ほんとにどうしたの?桜は家族と仲が良くて、病院にもかかった事ないって自慢してたじゃん。」

「なんでわかってくれないの...」

頭がおかしくなりそうだった。確かに私は難病で、入院していた。治療法を必死に探していた。クリスマスに純と出かけて、病院に戻った直後に倒れたんだから。絶対間違える訳ない。

「帰らなきゃ...」

「おい、桜!?」

私はベットから飛び降りて部屋を出た。ここは二階だったらしく、階段を下るとすぐ玄関に着いた。私が履いていたであろう靴を履いて、外に出た。だがここがどこかわからない。今まで住んでいた所ではないのだけはわかる。でも私の居場所はここじゃない。

帰らないと。私は闇雲に走った。

「はぁ...はぁ。ここどこ。」

走る事数十分。闇雲に走りすぎてどこから来たのかわからなくなってしまった。

走りながら考えたのだが、ここは私が住んでいる世界とは別の世界なのではないか。

意識を手放す前、純の事だけ考えた。だからこの世界に来たのかもしれない。そんな非現実な事有り得ないかもしれないが、もし今私が死にかけているのなら尚更納得出来る。私の本体は今、危険な状態で、魂だけがここの世界に来たのだ。だから私の魂が帰らないと現実には戻れない。推測だが、大方間違ってないだろう。

「桜、見つけた。」

「きゃっ」