「結婚指輪。今渡したのはペアリングだから。本物を渡すまで、それつけてて。」

純は私と結婚しようと考えてくれてる。嬉しい気持ちとそれまでに生きているのかなとまた嫌な事を考えてしまった。

「もし私以外の人を好きになったらどうするの?」

その嫌な気持ちを振り払うように。純に意地の悪い質問をした。

純は少し怒った。

「好きにならないから。桜よりいい人、居ない。」

「これからいるかもよ?」

「居ない。桜だけ。」

「わかんないよー?」

「はぁ...そんなに心配ならわからせてやるよ。」

純はそう言うと私にキスをした。長いし舌も入ってくる。初めての事でどうしたらいいのかわからずされるがままになっていると、服のボタンを外してきた。そこまでされたら私でもわかる。

「純、それはだめ...」

「なんで?恋人同士だからいいじゃん。」

「私達にはまだ早いよ。それに心の準備も出来てないし、何より怖い...」

そう本音をもらした私の声は震えていた。純はボタンを外す手をとめ、何回もキスをしてきた。息を付く暇もなくて、もう何も考えられない。純に意地の悪い事を言ったらいけないという事を身をもって思い知った。

「どう?これでもまだ不安?」

耳元で囁かれて、首を横に振った。

「不安じゃないです...」

「わかればいいんだよ。俺は、桜とそういう事もしたいと思ってるから。他の女性には一切思わない。」

真剣な眼差しでそう言われて、私達がそういう行為をしている想像をしてみる。授業でしか見た事ない行為を私達がする。恥ずかしくて考えるのをやめた。

「もう意地悪な事言わないから許して下さい...」

「今回はこれで許すけど、今度言ったらやだって言ってもするから。覚えといて。」

「はい...」

純は私を起き上がらせると、服のボタンをとめてくれた。もしあのままとめなかったらそういう事をしていたのかと思うと顔が赤くなる。

「あれ、顔赤いよ。なんか想像した?」

純は顔が赤い理由がわかっているはずなのににやにやしながら聞いてきた。全く、ずるい男だ。

「してないもん。」

「本当に?」

「もう、しつこい人は嫌われるよ?いいんだね?私に嫌われても。」

「他の人だったらいいけど、桜はだめ。でももし嫌われそうになったらわからせるからいいよ。」

純は満面の笑みでそう言った。そんな純もかっこいいと不覚にも思ってしまった。これが惚れた弱みだろう。

「さて、そろそろ病院に戻る準備しますかね。」

「え、もう?」

まだ夜の十九時だ。二二時までに帰ればいいから、あと一時間ぐらいは家にいても余裕で間に合う。

「時間ギリギリだと先生も心配するだろ。それに外もどんどん寒くなるしさ。」

「そっか...」

純の言う事はもっともだ。寂しいが、純の言う通りにしよう。