「だから遠慮せずに話して?私も純に話すから。そしたらおあいこでしょ?」

「桜...ありがとう。」

純は私に飛びついて泣いた。子供のように大泣きをした。まだ高校生の人がこんなに背負うのは辛い。でも背負わせてしまったのは私で。

「純、ごめんね。」

聞こえない程の声量で謝った。純は気づかなかった。



気づけば私達は寝ていた。起きたら真っ暗で、怖くて隣で寝ていた純を起こした。

「純、夜だよ。真っ暗で怖い。起きて。」

「ん...うわ、暗っ」

すぐに明かりをつけてくれた。部屋が明るくなり、すごく安心した。

「ありがと。」

「うん。もう十八時か。二二時までに帰らないといけないんだよな?」

「うん。」

「なら夜ご飯にする?それともケーキだけ食べる?」

「ケーキだけ食べたい。でもケーキ買ってあるの?」

私と一緒にスーパーに行った時にケーキは買っていない。いや、買えなかったのだ。ケーキ売り場には人が沢山いて、ケースに近付く事すら出来なかった。普段スーパーにケーキが売っていても見すらしないのに、こういう時だけこぞって買うんだって少し引いた。

「あるよ。昨日の内にケーキ屋で買ってたから。」

純はキッチンに行き、ケーキの箱とお皿、フォークを持って戻ってきた。器用だ。

「桜確か、チョコケーキしか食べられないよな?」

「うん。」

「だからチョコケーキのホールにした。」

箱から出されたケーキはシンプルなチョコケーキだった。私はこういうシンプルなのが好きだから嬉しい。

「美味しそう!ケーキなんて何年ぶりだろう...」

「え、そうなの?」

「うん。あの家族が私にケーキなんて買う訳ないじゃん。」

「そっか。だったらもっと豪華なやつにすれば良かったか。」

「ううん、私、こういうシンプルなチョコケーキ好きだから嬉しいよ。早く食べよ。」

「ありがとう。今切るから。」

ホールケーキを四等分にして、四分の一から食べる事にした。

「ん、美味しい!チョコがあっさりしてて食べやすい。」

「な、めっちゃ美味い。ここのケーキたまに食べるんだけど、チョコは今日初めて食べた。」

「そうなの?他に何が美味しかった?」

「ショートケーキ。苺がいつ食べても甘くて美味しい。」

「苺か。苦手だ。全部純にあげる事になる。」

「それでもいいから今度食べてみようよ。」

「うん!」

あっという間に四分の一を完食し、残りの四分の一も食べた。それでも甘すぎると思わず、もっと食べたいと思う程だった。

「はぁ...美味しかった。」

「あっという間に食べ終わったな。もっと大きくても良かったかも。」