毎年クリスマスは家族が旅行に行ってしまい、一人で家にいた。お腹も空かないから食事をしない。だから海鮮丼を食べた時ぐらい感動した。

「クリスマスは何してたの?」

「ずっと家にいた。家族は私を置いて旅行行っちゃうし。もし強盗にあって私が殺されても私を恨んできそう。」

「それなら俺に連絡くれたら行ったのに。俺も予定ないんだし。」

「純に迷惑かけたくなかったし、そういう発想がなかった。」

「まじか。少しショック。」

「人を頼って、その人が離れていくのが怖かったし、相手にも自分みたいな思いさせてしまうんじゃないかって怖かったから。あ、でもそんな事言ってたらキリがないのはわかってるんだけどね。」

私は人と関わる能力が欠陥しているのだと思う。自分一人で出来ない事も、相手を嫌な気持ちにさせたくないから頼らない。傍から見たら人を信用していない人間に見られてもおかしくはない。それでもいいと思っていた私は親にされた事に相当傷ついていたのだろう。

「桜は本当に優しいな。」

隣に座っていた純が急に私の肩に頭をのせた。身体も隙間なくくっつけられ、動けなくなった。ワックスなのか、いつもの純とは違う匂いがした。

「私は優しくなんてないよ。自分を守りたいからそうしてただけ。」

「自分を守る人はそんなに考えないし、むしろ人を傷つけてるよ。そういう人達と桜を一緒にしてほしくない。」

肩に頭をのせたまま、両手が腰に回ってきた。その手がくすぐったくてビクッとした。

「なに?くすぐったかったの?」

「うん。」

「今の反応可愛い。俺以外の前でやらないでね?」

「やらないよ。純以外に腰に手を回す人なんていないし。」

「あの主治医の先生ならやりそう。絶対やらせちゃダメだからな。」

「はいはい」

片付けも後回しに私達は引っ付いていた。会話もたまにするが基本は黙ってくっついている。それが時間の無駄だとは一ミリも思わなかった。むしろ、有意義な時間の使い方だと思った。

「そろそろ片付けるか。」

お昼を食べ終えて三時間。純がしぶしぶといった形で立ち上がった。私は片付けの事なんて忘れて寝そうになっていた。

「ああ、そうだね...」

「桜、眠たいの?」

「今日が楽しみで全然寝れなくて...」

「だったら寝てなよ。片付けは俺するし。あ、でも薬飲んでからな。」

「さっきから純にやってもらってばかりだから手伝うよ。」

「ダメだよ。桜はゆっくりしてなさい。」

立ち上がろうとしたがまた純に止められ、座り直した。純はその隙にお皿を全てキッチンに運んでしまった。