「付き合って初めてのデートだから頑張ったんだよ。桜もいつもと違って大人っぽい。似合ってる。」

すらっと言われて、再び顔が赤くなる。今日の為に服も用意したし、髪のアレンジだって研究した。それが認められたようで嬉しかった。

「ありがとう。」

「さ、立ち話はここまでにして、行くか。」

「うん!」

純と手を繋ぎ、病院を出た。病室がある受付を通る時、看護師さん達が笑顔で手を振ってくれた。恥ずかしかったがちゃんと振り返した。

「看護師さん、優しそうだね。」

駅に向かって歩いていると、純がぽつりと呟いた。

「すごく優しいよ。私って家族には恵まれなかったけど、周りの人には恵まれてる。」

「そう思えてすごいよ。俺達学生は家族が全てだから。その家族に嫌われないように必死で、周りの優しさなんて気づけないものだから。」

「純も家族に嫌われないように必死なの?」

「いや、俺はそんな事ないよ。両親は基本優しいし。でもテストの後は怖いかも...」

「はは。それは純が悪い。」

「そうだけどー」

二人で笑って話せる。それだけで幸せと感じた。

駅に着くと電車がちょうど来て乗れた。待つ時間がなくてラッキーだ。

「ちょうど乗れてラッキーだな。」

「そうだね。純といる時間、一秒でも無駄にしたくないからね。」

「俺も桜といる時間、一秒も無駄にしたくない。」

顔を見合せて笑った。電車にはクリスマスなのに人はあまり乗っていなかった。時間が早いからだろう。

地元の最寄り駅に降りると人が凄くて顔を顰めた。純を見ると同じ顔をしていた。

「人多いね...」

「クリスマスだからな。これだとショッピングモールも人多そうだな。どうする?」

「純が行きたい所行こ。前は私の行きたい所に付き合ってもらったし。」

「わかった。んー、桜、歩くのは平気そう?」

「大丈夫だよ。」

「なら少し歩いて景色を楽しまないか?冬だから植物はほぼ咲いてないだろうけど。」

「それいいね。それなら人混みとかないもんね。」

「だろ?でも無理はするなよ。なんかあったらすぐ言って。」

「はーい」

私達は人混みから離れて別の道を歩いた。普段は歩かない所を歩くから新鮮だ。

「純はよくここ歩くの?」

周りを見る私と違って、純は堂々と歩いている。

「考え事がある時に歩いてる。」

「純にも考える事あるんだね。」

「そりゃあるよ。てか考え事がない人なんていないんじゃない?」

「確かに。純がまともな事言うと調子狂う。やめて?」

「そう?俺そんなに変な事しか言わない?」

「んー、桜の事好きーとかしか言わないイメージ。」

「思ったより変な事じゃなくて安心したよ。」