「田辺さん、おはよう。朝だよ。」

「ん...」

次の日。私は先生に起こされて起きた。いつもはカーテンから漏れる光で起きれるのだが、夜、中々寝付けなかったせいで起きれなかった。

「おはよ、先生...」

「珍しいね、田辺さんが朝起きてないなんて。」

「夜、中々寝れなくて。ふわぁ、眠い。」

「あんまり無視しちゃダメだからね。体調はどう?」

「すっごく元気。」

「それは良かった。色々準備あるだろうから一旦外出るね。終わったら呼んで。」

「はーい」

私の病室は個室で、その中でもいい病室を普通病棟と変わらない値段で使わせてもらってる。難病の新薬作りに協力しているからそのお礼らしい。ここにはお風呂がついているから本当にありがたい。

「よし、バッチリ。」

この日の為に買った服と、伸びきった髪をまとめてみた。自分で言うのもなんだが、結構イケてると思う。

「先生終わったー」

「はーい、入るよー」

病室の中から呼んで聞こえるかなと思ったが聞こえたみたいだ。先生は私を見ると目を大きく開けた。

「え、なに?どこか変?」

「いや、すごく大人っぽいから。どうしよ先生のタイプなんだけど。」

「ごめんね、先生。私、彼氏いるからさ。」

「多分純が今の田辺さんを見たら、顔真っ赤になるんじゃないかな。」

「そうかな?」

大人の先生が言うとお世辞でも本当の事のように聞こえる。それで少し自信がついた。

「さ、少し診察させてね。」

「はーい」

それから軽い診察をして、純が来るまで先生の昔話を聞いて待った。

「先生はどうして医者になったの?」

「高校生の時に付き合っていた彼女が病気でこの世を去ったんだ。それでもうこんな思い誰にもしてほしくないって思って。」

「そうだったんだ。てか先生に彼女いたんだね。」

「そりゃいるよ。あ、でもその時の彼女が初めてで、それから出来てない...」

「それはモテないから?それともその人の事忘れられないから?」

「どっちも。」

「悲しいね。でもいつまでも引きずってると彼女さん怒るよ。」

「確かにね。でもあいつ以上の人に出会えないんだ。だからこのまま独身生活を楽しむよ。」

もし私が死んだら、純も独身でいるのかな。それとも数年したらいい人を見つけて結婚するのかな。純には幸せでいて欲しい。だけど私以外の人と付き合う事を考えると嫉妬してしまう。我ながら面倒臭い人間だ。

「純は私が死んだら、他の人と付き合うのかな...」

「バーカ。付き合う訳ないだろ。」